子育てが一段落した。仕事の先が見えてきた。自分の時間が少しずつ増えてきた。50代は、こうした変化が重なりやすい時期です。
「何か新しいことを始めたい」と思っても、いざとなると迷う方は多いのではないでしょうか。「今から始めて身につくのか」「どこで習えばいいのか」「お金はどのくらいかかるのか」。気になることはいろいろあります。
この記事では、まず国の統計で「50代が実際に何を習っているか」を見たうえで、選び方、ジャンル別のおすすめ、習える場所の探し方、費用の考え方、続けるコツをまとめます。最後に、今週からできる「最初の一歩」を3つに絞りました。
この記事で分かること
- 50代の5人に2人は、この1年に何かを学んだり習ったりしている
- 50代で多いのはパソコン、料理・裁縫、芸術・文化。男女で顔ぶれが違う
- 安く試すなら公民館・生涯学習センター。仕事に関わる学びなら国の給付が使えることがある
- 最初の一歩は「見学か1回の体験」で十分
50代は、実際に何を習っている?
総務省の「令和3年社会生活基本調査」によると、この1年に何かを学んだり習ったりした人(学習・自己啓発・訓練)は、50〜54歳で38.8%、55〜59歳で39.0%。50代の5人に2人です。
何を学んでいるかを、年代と男女で並べました。
| 学びの種類 | 50〜54歳 | 55〜59歳 | 男性(55〜59歳) | 女性(55〜59歳) |
|---|---|---|---|---|
| パソコンなどの情報処理 | 16.0% | 17.4% | 20.0% | 14.9% |
| 家政・家事(料理・裁縫など) | 12.2% | 13.1% | 8.7% | 17.4% |
| 商業実務・ビジネス関係 | 11.3% | 10.6% | 15.2% | 6.0% |
| 英語 | 10.1% | 10.0% | 10.9% | 9.1% |
| 芸術・文化 | 9.5% | 11.5% | 9.9% | 13.1% |
| 人文・社会・自然科学(歴史・経済など) | 8.5% | 10.0% | 12.0% | 8.0% |
| 介護関係 | 5.1% | 5.8% | 4.1% | 7.6% |
出典:総務省「令和3年社会生活基本調査」第1-2表をもとに編集部で作成。数字は過去1年間にその学習をした人の割合

いちばん多いのはパソコンなどの情報処理。男性はビジネス関係や歴史・経済などの教養、女性は料理・裁縫と芸術・文化が多い、という違いがあります。50代後半になると、芸術・文化と人文・社会・自然科学が少し増えます。仕事に直結する学びから、楽しみのための学びへ、重心が移り始める時期と言えそうです。
趣味・スポーツの側も見ておきます。55〜59歳で多い趣味は、映画鑑賞(映画館以外)56.9%、音楽鑑賞56.2%、読書34.3%、園芸32.3%、写真23.0%。女性では園芸(40.4%)、料理・菓子作り(26.4%)、編み物・手芸(19.1%)が上位に入り、男性では園芸(24.0%)、写真(22.2%)、日曜大工(22.0%)が目立ちます。スポーツは、ウォーキング・軽い体操が50代の2人に1人(50〜54歳45.7%、55〜59歳46.3%)で、器具を使ったトレーニング、登山・ハイキング、ゴルフが続きます。女性ではヨガも1割を超えます(50〜54歳12.9%)。
習い事の候補に迷ったら、この「同じ世代が実際にしていること」から選ぶのも一つの方法です。
50代の習い事の選び方
まずは「何をしてみたいか」を思い浮かべる
習い事を選ぶ前に、自分が何を求めているのかを整理しておくと迷いにくくなります。
- 健康のため、体力を落としたくない
- 友人や仲間がほしい
- 昔からやってみたかったことに挑戦したい
- 暮らしに役立つことを身につけたい
- 仕事や再就職に生かしたい
目的がひとつに決まらなくてもかまいません。「健康」と「仲間づくり」を両方かなえたいなら、グループで行う運動系の教室が合うかもしれません。
体の状態・通いやすさ・頻度で絞る
- 運動系は、体への負担の大きさに差があります。ひざや腰に不安がある方、しばらく運動をしていなかった方は、ゆっくりしたペースのクラスや初心者向けのコースから。持病がある方は、始める前にかかりつけの医師に相談を
- 家や職場から近いか、曜日や時間帯が生活に合っているか。週1回なのか、月2回なのかで、続けやすさは大きく変わります
- 通うのが難しければ、自宅で受けられるオンライン講座という選び方もあります
体験レッスンや見学で確かめる
多くの教室では、体験レッスンや見学ができます。先生の教え方、教室の雰囲気、ほかの受講生の年齢層は、行ってみないと分かりません。いくつかの教室を比べてから決めるのもよい方法です。
ジャンル別|50代におすすめの習い事
体を動かす習い事
- ヨガ・ピラティス:呼吸に合わせて体を伸ばし、姿勢を整えます。初心者向けやゆったりしたペースのクラスが多く、運動に慣れていない方でも始めやすいジャンルです
- 水泳・水中ウォーキング:浮力が働くため、ひざや腰への負担が比較的少ないといわれます。泳げない方向けのクラスもあります
- ゴルフ・卓球・登山:ゴルフは練習場のスクールで基本から。卓球は室内で天候に左右されず、地域のクラブも多いスポーツです。登山は、初めてなら山歩きの講座やガイドつきのツアーから
- 社交ダンス・フラダンス:音楽に合わせて体を動かし、振り付けを覚えることが頭の刺激にもなります
文化・芸術の習い事
- 書道・ペン字:静かに集中できる時間を持てます。ペン字は、のし袋や手紙など日常ですぐ役立ちます
- 絵画・写真:絵は道具が少なく始められるものもあります。写真はスマートフォンでも始められ、旅行や散歩が楽しくなります
- 楽器:「子どものころに習いたかった」という方に人気。ウクレレのように小さく扱いやすい楽器もあります
- 茶道・華道:日本の文化や作法を学び、季節を感じる時間を持てます
暮らしに役立つ習い事
- 料理・パン・お菓子作り:毎日の食事にそのまま生かせます
- 園芸・家庭菜園:50代後半の女性の4割、男性の4人に1人がしている、世代でいちばん「続いている」趣味のひとつです。地域の講座で土作りや育て方の基本を学べることもあります
- DIY・木工:家具の修理や棚作りなど、家の中で役立つ技術が身につきます
教養・語学・デジタルの習い事
- 英会話などの語学:旅行先で話したい、海外のドラマを字幕なしで見たいなど、目的を持ちやすいジャンルです
- 歴史・文学などの教養講座:公民館や大学の公開講座でよく開かれています
- スマートフォン・パソコンの使い方:50代でいちばん多い学びです。基本の操作から、写真の整理、ビデオ通話まで。自治体が無料や低い料金で講座を開いていることもあります
- 動画編集・プログラミング:旅行や家族の記録を作品にする、自分の可能性を広げる、といった楽しみ方があります
仕事につながる習い事
簿記、医療事務、介護の資格、パソコンの表計算ソフトなど、これからの働き方を考えて学ぶ方もいます。仕事に関わる学び直しは、条件を満たせば国の給付や無料の職業訓練を利用できることがあります(後の章で紹介します)。
習い事ができる場所の種類と探し方
| 場所の種類 | 主な特徴 |
|---|---|
| 公民館・生涯学習センター | 自治体が運営。地域の人向けの講座が中心で、費用を抑えやすい |
| カルチャーセンター | ジャンルが幅広く、1回体験や短期の講座も多い |
| 民間の教室・スクール | ひとつの分野を基本からじっくり学べる |
| 大学の公開講座・放送大学 | 専門的な内容を大学の先生から学べる |
| オンライン講座・通信講座 | 自宅で、自分の都合のよい時間に学べる |
| サークル・同好会 | 仲間と一緒に楽しむことが中心 |
公民館・生涯学習センター
公民館は、社会教育法にもとづいて市町村などが置く施設で、趣味や教養の講座、成人向けの学級などが開かれています。地域の人が参加しやすいように開かれているため、費用を抑えやすいのが特徴です。
探し方は、市区町村の広報誌、市のホームページ、公民館の掲示。「(市の名前) 公民館 講座」で検索すると、今期の講座の一覧が出てくることが多いです。人気の講座は抽選になることもあるので、申し込みの締め切りを確かめておきましょう。講座をきっかけに、そのまま地域のサークルに入って続ける人もいます。
カルチャーセンター・民間の教室
カルチャーセンターは駅の近くや商業施設の中にあることが多く、仕事帰りや買い物のついでに通いやすいのが特徴です。1回だけの体験講座や、数回で終わる短期の講座があるので、「まずは試してみたい」という方に向いています。
ピアノ教室、料理教室、ゴルフスクール、英会話スクールなど、ひとつの分野に特化した教室は、基本から段階的に学べるコースが多く、しっかり身につけたい方に向いています。先生との相性も大切なので、体験レッスンで確かめてから申し込むと安心です。
大学の公開講座・放送大学
多くの大学では、地域の人や社会人に向けた公開講座を開いています。放送大学は、テレビやインターネットで授業を受けられる大学で、興味のある科目だけを学べる「選科履修生」(在学期間1年)や「科目履修生」(在学期間半年)という学び方もあります。放送大学のホームページによると、選科履修生の入学料は9,000円、科目履修生は7,000円で、授業料は放送授業1科目(2単位)で12,000円とされています(2026年10月時点の掲載内容。授業料はテキスト代を含みます。金額は変わることがあるので、最新は公式のページで確かめてください)。
大学などの社会人向けの講座を探したいときは、文部科学省の「マナパス」というサイトも役立ちます。
オンライン講座・サークル
近くに教室がない方や、決まった時間に通うのが難しい方は、オンライン講座や通信講座から。自分で学ぶ時間を決める必要があるため、決まった曜日と時間に学ぶ習慣をつけると続けやすくなります。地域のサークル(卓球、合唱、俳句、写真など)は、先生に教わるというより、仲間と一緒に楽しむことが中心です。
仕事に関わる学び直しなら、公的な制度もチェック
「これからの働き方に向けて、資格やスキルを身につけたい」という方は、国の制度を利用できる場合があります。どちらも窓口は、住んでいる地域を担当するハローワークです。
教育訓練給付制度
一定の条件を満たす方が、厚生労働大臣が指定した講座を受けて修了した場合に、受講にかかった費用の一部が支給される制度です。講座は「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」「一般教育訓練」の3種類に分かれ、たとえば一般教育訓練では受講費用の20%(上限10万円)が支給されます。
主な条件は、雇用保険に加入していた期間が原則3年以上あること(初めて受け取る場合は、一般・特定一般で1年以上、専門実践で2年以上)、会社を辞めた方は雇用保険の資格を失った日の翌日から受講開始日まで1年以内であること、過去3年以内に教育訓練給付金を受け取っていないこと、などです。専門実践と特定一般は、受講開始日の2週間前までにハローワークでの手続きが必要です。対象の講座は、厚生労働省の「教育訓練講座検索システム」で探せます。
ハロートレーニング(公的職業訓練)
仕事を探している方などが、就職に必要な知識や技術を身につけるための公的な職業訓練です。受講料は原則無料で、テキスト代などは自分で負担します。雇用保険を受け取れない方などが受ける「求職者支援訓練」では、収入や資産などの条件を満たすと、訓練を受けている間、月10万円の職業訓練受講手当などを受け取れる場合があります。
なお、どちらの制度も、趣味としての習い事は対象になりません。
習い事の費用の考え方
料金は、ジャンルや場所、地域、教室によって大きく違います。ここでは金額ではなく、確かめておきたいポイントをまとめます。
- 月謝のほかにかかるもの:入会金・登録料、教材費・道具代、施設の利用料、発表会・検定の費用、交通費
- 道具は、最初から高いものをそろえなくて大丈夫。教室で貸してもらえるか、レンタルできるかを確かめ、続けられそうだと分かってから少しずつそろえる
- 費用を抑えたいなら、自治体の講座やサークル、無料の体験レッスンを上手に使う
語学教室やパソコン教室で、2か月を超える期間で総額5万円を超える契約を結ぶ場合は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」にあたり、契約の書面を受け取った日から8日以内であればクーリング・オフで契約を取り消せます。8日を過ぎても途中で解約でき、事業者が請求できる金額には上限があります。困ったときは、消費者ホットライン「188」に電話すると、近くの相談窓口を案内してもらえます。
習い事を長く続けるコツ
- 目標は持たなくてもいい。まずは「楽しい」を大切にする
- 週1回や月2回など、生活に負担のない回数から始める
- 発表会、作品展、検定など、成果を見せる場を持つ。家族や友人に見てもらうだけでも励みになる
- 同じ教室の人と話す。休んだときに声をかけ合える仲間がいると、続ける力になる
- 体調がすぐれない日は休む。痛みがあるときは無理をしない
- 合わなければ、別の習い事に変えてよい。合わなかった経験から、本当にやりたいことが見えてくることもある
今週からできる「最初の一歩」3つ
- 候補を1つ決める:上の統計の「同じ世代がしていること」か、ジャンル別の一覧から、気になるものを1つだけ選ぶ。迷ったら「昔やってみたかったこと」を優先する
- 近くで習える場所を1つ探す:「(市の名前) 公民館 講座」で検索するか、最寄りのカルチャーセンターのホームページを見る。費用と曜日をメモしておく
- 見学か1回の体験を申し込む:決めるのは、行ってみてから。雰囲気だけ見て帰っても構いません
まとめ
- 50代の5人に2人が、この1年に何かを学んだり習ったりしている。多いのはパソコン、料理・裁縫、芸術・文化
- 選ぶときは、目的・体の状態・通いやすさ・頻度で絞り、体験や見学で確かめる
- 安く試すなら公民館・生涯学習センター。仕事に関わる学びなら、教育訓練給付やハロートレーニングも調べてみる
- 費用は月謝だけでなく、入会金や道具代も含めて確かめる
- 最初の一歩は、候補を1つ決めて、近くの場所を1つ探して、見学か体験を申し込むこと
最初の一歩は小さくてかまいません。気になる講座の情報を見てみる、体験レッスンに申し込んでみる。そこから、これからの毎日を楽しくする習い事が見つかるかもしれません。
参考
- 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活行動に関する結果」 https://www.stat.go.jp/data/shakai/2021/kekka.html
- e-Stat「令和3年社会生活基本調査 第1-2表 学習・自己啓発・訓練の種類別行動者率」 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000032222676
- e-Stat「同 第30-2表 趣味・娯楽の種類別行動者率」 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000032222964
- e-Stat「同 第15-2表 スポーツの種類別行動者率」 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000032222868
- 厚生労働省「教育訓練給付制度」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
- ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付制度」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_education.html
- 厚生労働省「求職者支援制度のご案内」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyushokusha_shien/index.html
- 山梨県「公民館とは」 https://www.pref.yamanashi.jp/shougai-gks/kouminkan/kouminnkann1.html
- 文部科学省「マナパス(社会人の学びを応援するポータルサイト)」 https://manapass.mext.go.jp/
- 放送大学「学費」 https://www.ouj.ac.jp/admission/gakubu/tuition/
- 消費者庁「特定商取引法ガイド:特定継続的役務提供」 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/
- 消費者庁「消費者ホットライン」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/


