フレームワーク(ビジネスフレームワーク)とは、思考のテンプレートです。このフレームワークを使うと論理的に考えやすくなり、主に次の6つのことが進めやすくなります。
問題解決
問題を解決するには、問題の具体化・深掘り・整理・目標設定が大切です。
フレームワークは、それら全てができるうえ、情報を客観視しやすいので、考える時間を短縮してくれます。
業務改善
フレームワークはビジネスのノウハウや理論を形にしたものです。
入力するだけで効率的に、品質向上・時間短縮・コスト削減・策定・効果測定できるので、業務改善に欠かせません。
原因分析
原因を深掘りしたり、多角的に分析する時にも、フレームワークが便利です。
フレームワークは考え方が決まっているので、道から逸れることなく、原因を突き詰めることができます。
アイデア出し
アイデア出し・アイデアの深掘りにもフレームワークは使えます。
フレームワークを使えば、普段しない考え方もできるので、思いつかないようなアイデアがひらめくこともあります。
現状分析
何かを決定したり改善したりするには、現状の把握が大切です。
フレームワークを使えば、抜け・漏れなく現状分析ができ、選択肢の選定・自己分析・情報整理ができます。
情報共有
情報を相手に伝えるときにも、フレームワークは役立ちます。
フレームワークは図式なので、視覚的に情報を伝えられて、複数人で共通の認識を持つときにも便利です。
この記事では、知っておきたいビジネスシーンで役立つフレームワークを選りすぐって、使用例とともに紹介します。
フレームワークとはどういったものか、使う時のポイントや注意点などについては、この記事の後半で紹介しています。
ビジネスに役立つフレームワーク26選
SWOT分析
現状分析
〈SWOT分析〉は、テーマの強みと弱みを分析するフレームワークです。テーマを取り巻く環境と合わせて「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Oppotunities)」「脅威(Threats)」の4つを考えていきます。
強み・得意なこと
弱み・苦手なこと
社会・市場のプラス要因
社会・市場のマイナス要因
- 何のために分析するのか、目的を明確にする
- 「弱み」と「強み」を書き出す
- 「機会」と「脅威」を書き出す
複数人で行う場合には、ホワイトボードに枠を書き、付箋を貼っていくと良いです。全員で意見を共有しあいながら、分析をすすめることができます。
強み・弱みといった企業の内部だけでなく、機会・脅威といった外部の環境と合わせて現状を分析することができます。脅威を回避しつつ機会を狙うにはどうすればいいかなど、客観的に考えることができます。
一般的には、企業(もしくは事業)とそれを取り巻く環境から、今後の経営戦略・事業戦略を考える時に使います。また、就職・転職活動の自己分析に使う人もいます。その場合には、次の項目を入力していきます。
自分の長所
自分の短所
希望企業・業界にとっての自分の長所
希望企業・業界にとっての自分の短所
なお、SWOT分析を使った自己分析の例や、自己分析のポイントなどは「自分自身の掘り起こし」で詳しく紹介しています。
- 問題点や改善点がわかりやすくなる
- 長所や短所を社内外含めて一目で確認でき、広い視野で戦略を考えることができる
- 強みと弱みは表裏一体にもかかわらず、強引に分類する必要がある
- 時系列での分析や因果関係の分析には向かない
- 大まかな方向性を決めるのに向いており、何をするべきかという細かな分析には向かない
- 社内の立場からだけでなく、顧客の視点から考えてみる
- 同業他社と比べてどうなのかを思い浮かべてみる
- 事実だけで構成されているか、仮説が混じっていないかを確認する
3C分析
現状分析
〈3C分析〉とは、経営環境を分析するフレームワークです。「顧客(Customer)」「顧客(Competitor)」「自社(Company)」という3つの「C」から「3C」と呼ばれています。この3つの観点から、ビジネス成功のポイントを探ります。
- 「顧客」(市場規模、顧客のニーズ・購買行動)について分析する
- 「競合」(競合の現状・強み・リソース)について分析する
- 「自社」(自社の現状・強み・リソース)について分析する
「顧客」「競合」「自社」という外部環境・内部環境を把握して、自社にとっての成功ポイントを考えることができる。
- 「顧客」「競合」「自社」の視点からまんべんなく考えられる
- 定性的にも定量的にも分析できる
- 情報収集するのに時間がかかる場合が多い
- 競合が多いと、情報収集がしにくい
- 市場は日々変化しているので、分析には時間をかけ過ぎないように意識する
- 収集する情報に誤りがないように、情報元に注意する
SMART
業務改善 問題解決 目標設定
〈SMART〉は、目標の質を高めるためのフレームワークです。5項目から考えることで目標を具体的にしていきます。
- 目標を設定する
- 目標を具体的にする
- 目標を測定できるか考える
- 目標を達成できるか考える
- 目標が、さらに上位の目標と結びついているか考える
- 目標の期限を考える
目標はなるべく定量的に書く。例えば上図の「期限はあるか」では、「3か月後」に「作業時間を100%→60%」としている。この定量的な目標値は、データなどに基づいて設定することが望ましい。
設定する目標を深く考えることができ、精度を上げることができる
- 目標が具体的になり、共有しやすくなるので、チーム全体が方向を間違えずに進めるようになる
- 「達成可能か」という観点からも検討するので、目標の難易度を最適化することができる
- 段階的な目標設定ができないので、あまりにも大きな目標の設定には不向き
- 最終的な期限はあるがスケジュール設定はない
- あまりにも大きな目標を設定するときには、〈ロードマップ〉で段階的な目標を設定する。
- 目標に対する結果の確認と振り返りを行う機会を設ける。
- 目標に沿って難易度を設定する。例えば「作業を簡略化した結果、作業時間が75%となった」というデータであるとします。その場合、速度を上げることを重要視するなら「作業時間を60%とする」、速度よりも品質を維持することを重要視するなら「作業時間を75%とする」と設定も異なってきます。
As is / To be
問題解決
〈As is / To be〉は、取り組むべき課題を考えるフレームワークです。現状と理想の姿を書き出して、その間にあるギャップは何か、そして何を行えばそのギャップが解消するのかを考えます。
- 「理想の姿(To be)」を書き出す
- ①に対する「現状(As is)」を書き出す
- 「理想の姿」と「現状」の間にあるギャップを明らかにする
「理想の姿(To be)」を書くときは、「現状(As is)」を意識せずに、とにかく書き出してみましょう。そうすれば、現状にとらわれない理想を描くことができます。その上で、「理想の姿(To be)」と対比する形で「現状(As is)」がどうなっているのかを整理しながら書き出すのです。
「理想の姿」と「現状」の間にあるギャップから導かれるものが「課題」です。ギャップを明らかにしたら、実現できる行動に落とし込んでみましょう。
現状を整理して、問題解決をするための行動に落とし込むことができます。
〈As is / To be〉は、理想の姿になるためには何をすればいいのか?を考えやすくするフレームワークです。どこを改善すればいいのかに気付かせてくれます。
例えば、「副業を始めるには、どのスクールに通えばいいか?」を考えるときには、現在の自分を「現状(As is)」に、副業で稼ぐ自分を「理想の姿(To be)」に書きます。このときのギャップが、身につけるべきスキルです。このスキルが身につけられるスクールこそが、通うべきスクールになります。
- 現状を踏まえて考えるので、現実的な課題を出しやすい
- 客観的に問題や課題を考えられるので、ズレがあれば発見ししすい
- 「理想の姿」と「現状」に違いがあり過ぎると、問題や課題が描きにくい
- 解消すべき課題の優先度は、別途決める必要がある
- 「理想の姿」と「現状」は、同じ粒度で考えるように意識する
- 売上などの定量的な情報だけでなく、気持ちなどの定性的な情報も書くようにする
なぜなぜ分析
問題解決 原因分析
〈なぜなぜ分析〉は、問題を深堀りするフレームワークです。「問題が起きたら5回は疑え」というトヨタの生産方式の考えから生まれました。問題に対して「それはなぜ?」を繰り返して、マス目を埋めていきます。
- 「問題」を書き込む
- 「問題」に「それはなぜ?」と問いかけ、出てきた原因を書く
- ②で出てきた原因に「それはなぜ?」と問いかけ、出てきた原因を書く
- 具体的な欠陥部分にたどり着くまで、③を続ける
「問題」に深掘りしたい事象を書いて考えることができます。1つの事柄について追及したいときにはピッタリのフレームワークです。
問題の原因を深掘りできます。ただ考えるだけでは見えてこなかった原因に気付くことができます。
- 問題を突き詰めて考えることができる
- 問題点が段階ごとに見えてくるので、段階ごとに行うべきことがわかる
- 原因を1つに絞って考えてしまいやすく、原因が複数あっても気づきにくい
- 原因が「〇〇さんが疲れていたから」のように属人的な理由になっても、深掘りできたと思ってしまいやすい
- 原因が他にもないか意識しながら考える
- 属人的な理由になった場合は、運用システムや労働環境に原因がないかを改めて考える
- 「なぜ」の答えを、推測ではなく現実に即して書くように意識する
KPIツリー
業務改善 効果測定 目標設定
〈KPIツリー〉とは、指標を数値で測れるようにするフレームワークです。
「重要目標達成指標」と呼ばれる。最終目標のこと。
「重要業績評価指標」と訳される。中間目標のこと。業績の達成度合いを評価するための指標。
- 最終目標(KGI)を決めて、左端に書く
- 最終目標(KGI)を達成するための指標(KPI)を右に書く
- 最終目標を達成するための指標(KPI)を分解して、細かい指標(KPI)に落とし込んでいく
KPIは、四則演算(+-×÷)していくと、KGIもしくは上位のKPIになるように設定していきます。
「コストの削減」を目的とした場合は、上図のように、KGIに「売上」、KPIは「顧客数」「顧客単価」などに分解していきます。「時間の短縮」を目的にする場合は、KGIに「生産量」、KPIに「稼働時間」「1時間あたりの生産数」などが入るでしょう。「品質の向上」を目的とする場合には、KGIに「生産量」、「良品率」「不良品率」などで分解できます。
施策の結果を振り返る「効果測定」でも使えます。作った〈KPIツリー〉に、施策結果を入れてみましょう。上図では、KGIの「売上目標」が未達成、「顧客目標数」も10,000人のところ、9,000人であり目標に届いていません。「顧客単価目標」は達成されているので、原因は「顧客目標数」より右の赤枠にボトルネックがあることがわかります。
施策に対して定量的な判断ができる。具体的施策の設定や役割分担がしやすくなり、問題も早期発見しやすくなる。
- 最終目標(KGI)を達成するための全体像が、一目で分かる
- ボトルネックがわかりやすく、次の施策の課題も見えやすい
- 一目で情報がわかるので、チーム全体が正しく成果を把握できる
- 項目ごとの指標が明確なので、各項目の担当者が目的意識を持って対策を考えられる
- 定量的な指標でしか書けず、定性的な指標がある時は使えない
- 作っていると複雑化しやすいところがある
- 定性的な内容で指標を設定する時は〈ロジックツリー〉を使う
- 複雑化しやすいフレームワークなので、定期的に測定する必要のない数字は入れなくても構わない。定期的に数値を測るべき箇所と努力するべき箇所を明らかにすることを優先して作る
- 定性的な結果を測るには、行った施策に対するアンケートなどを実施する。反応や評価を得て、分析ができるように整えることが大切です。
ロジックツリー
問題解決 原因分析 アイデア出し
〈ロジックツリー〉は、問題を整理して全体像をつかむフレームワークです。1つの問題に対して複数の原因があっても、ひとつずつ把握することができます。
- 「問題」を書き込む
- 「問題」に「Why?」を問いかけ、出てきた「原因」を書き出す
- ②で出てきた「原因」に「Why?」を問いかけ、出てきた「原因」を書く
- 情報を出し切るまで③を行う
- それぞれの要素に偏りや矛盾がないかを確認する
問題の原因を追究したいときは、上の例のように「Why?」と問いかけて分解していきます。ボトルネックとなっている箇所を見つけたいときは「What?」「Where?」と問いかけると発見できます。また、「How?」と問いかければ、問題解決のアイデア出しにも使えます。
問題を深掘りして、複数の原因を見つけることができます。
- 複数の要因が絡み合っている問題でも、複数の原因を特定することができる
- 定量的な要素がなくても整理することができる
- 出された要因の対応優先順位は測ることができない
- 出された要因が改善可能かを測ることができない
- 出された原因に偏りがないように、MECEを意識する
- 情報が左に行くほど大きく、右に行くほど細かくなるよう意識する
6W2H
現状分析 原因分析 アイデア出し
〈6W2H〉は、テーマについて多角的に考えるフレームワークです。テーマとなる言葉や課題を中央のマス目に入力し、8つの疑問符ごとにテーマについて考え、外側のマス目を埋めていきます。
主語となる人・人物・組織など
対象となる人・ターゲット・関係者など
考える対象・事柄・問題など
手段・手順・方法など
目的・狙い・意図など
タイミング・実施日・締切など
場所・エリアなど
価格・資源・人材など
- 分析するテーマを決め、真ん中の枠に書く
- テーマについて疑問符に沿って考えながら、周囲の枠を埋める
テーマには、深掘りしたいものであればなんでも入れることができます。そのテーマに沿って周囲の枠に記入していると、時には入力しづらいと感じる疑問詞もあるかもしれません。その場合には、上の表を参考にしながら、切り口を少し変えてみてください。「Hou much」はお金に関すること以外にも、資源・人材・時間などの面から考えられます。
テーマについて多角的に深掘りできます。ただ考えるだけでは出て来なかったアイデアや、気づかなかった視点を知ることができます。
テーマに「社員が定着しない」という課題を入れれば問題の分析ができます。一方、「新しい旅行サービスを考える」と入れれば、アイデア出しにも使えます。
- テーマについて様々な方向から考えられる
- 考えに偏りがあれば一目でわかる
- 考えが行き詰った時に使うと、新しい視点に気付ける
- 思いついたまま書きやすく、目的からズレた内容も書いてしまえる
- 記入する情報があいまいでも書けてしまう
- 常に目的を意識して書きこむ
- 書き込む情報にあいまいなものがないように意識する
- 無意識に目を背けているものがないか意識する
PDCA
業務改善 効果測定
〈PDCA〉は、「Plan(計画)」「Do(結果)」「Check(評価)」「Action(改善)」のステップを循環して、改善を目指すフレームワークです。この4ステップは業務改善を考える上で外せない観点です。
目標を設定し、改善計画を立てるステップ。
「Plan(計画)」の内容を実行した結果を記入する。
効果測定のステップ。施策で効果があったことや悪かったことを洗い出して記入する。
今後の行動について考えるステップ。
- 定性的・定量的な目標を「Plan(計画)」に書く
- 計画を実行した結果を「Do(結果)」に書く
- 結果を振り返り、効果の有無などを「Check(評価)」に書く
- 改善策を考えて、「Action(改善)」に書く
- 「Action(改善)」を踏まえて、「Plan(計画)」でさらなる計画を立てる
〈PDCA〉のサイクルを循環しながら改善を進めていきます。〈PDCA〉は全ての項目がしっかりと練られていないと「Action(改善)」にうまく繋がりません。これまで確認してきたフレームワークを使いながら、各ステップを踏んでいきましょう。
目標をもとに計画を実行し、その結果を踏まえて、さらに改善できる
〈PDCA〉はいろんな場面で使える便利なフレームワークです。例えば、転職活動をするとき、「応募書類で重点的に書くこと」や「面接で気をつけるポイント」を「Plan(計画)」に書いてみましょう。その後、実際に面接を受けた結果を「Do(結果)」、選考の結果やフィードバックを「Check(評価)」に書き、それらを踏まえた改善策を「Action(改善)」に記入します。
- 改善の流れを一目で振り返ることができ、今後の改善についても考えやすくなる
- 現状の課題や問題点が分かりやすくなり、仮説と結果とのズレが見つかりやすくなる
- 施策を行って終わりにさせず、さらに良くするための施策を検討しやすくなる
- 一度使い始めると、計画を柔軟に変更しにくい
- 〈PDCA〉を回している時に、外的要因の変化が起きると、対応がしにくい
- 分析対象が過去に決定したものに固定されるので、新しいアイデアが生まれにくくなる
- 〈KPIツリー〉を使って、数値で計測・効果確認できる目標を設定する
- 観測を定期的に行うようにする
- 各項目が「目的」「目標」から外れないようにする
- ただサイクルを回すのでなく、外部の意見や他の事例を意識して、常に新しい改善を意識する
- 改善の視点を複数持つようにする
KPT(ケプト)
業務改善 効果測定
〈KPT〉は、「Keep(継続すべきこと)」「Problem(抱えている問題)」「Try(挑戦すること)」の3つの観点から、施策を振り返るフレームワークです。定量的な内容だけでなく、プロセスや仕事の仕方など定性的な内容も含めて確認できます。
施策を行って、“よかったこと”を記入する欄。成功したことや継続して行うべき点をここで確認する。
施策を行って、“悪かったこと”を記入する欄。施策を経て抱える問題点を可視化し、改善すべきことを考える。
「Keep」の継続と「Problem」の解決のために“挑戦すること”を書く。
- 「Keep」を書く
- 「Problem]を書く
- 「Try」を書く
- 「Try」の中で優先順位を付けて、取り組むことを決める
〈KPT〉を継続して使う場合は、前回「Try」に記入した内容を用意しましょう。「Try」の中で、できたものとできなかったものを確認し、その違いは何かを考えれば、新たな課題を発見することができます。
施策の現況を客観的に確認し、次の行動を考えることができる
例えば、副業を安全に進めるために施策を実行したとします。その中で、やってよかったことを「Keep」、改善が必要なポイントを「Problem」、それを踏まえて新たに実行することを「Try」に書きます。〈KPT〉を使えば、より安全に副業ができるようになるでしょう。
- 良かった点も踏まえて、今後のアクションを設定するので、モチベーションアップにつながる
- 問題を可視化し、客観視することができる
- チームで使えば、全員が「Problem」を共有でき、同じ方向を目指した話し合いができる
- 「Keep」「Problem」「Try」という大きな枠しかないので、記入する内容が大まかなものになりやすい
- 期日、頻度などを意識し、具体的に挙げるようにする
- 目的や目標を意識して、それらを達成するための「Try」を書き込むようにする
- 「Plobrem」を書く時は、批判にならないようにする。より良くするための振り返りであり、責任の追及はしない。
- 「Try」を書くときは、必ず「Keep」にも目を向ける。よかったことを継続し、可能ならばさらに高めようとすることも大切です。
TAPS
情報共有
〈TAPS〉は、提案を上手く伝えるためのフレームワークです。現状と理想の姿のギャップ、問題点、解決法を順に押さえることで、相手にとって納得感のある提案ができるようになります。
相手が納得できる、理想の状態
現在の状況
理想と現状のギャップが発生している理由
問題の解決策
- 想定しているゴールを「理想の姿(To Be)」に書き込む
- 現在の状況を「現状(As Is)」に書き込む
- 理想の姿になれない理由を「Problem(問題)」に入れる
- 現状を理想の姿にするための方法を「Solution(解決策)」に書く
提案の準備段階で、上の順に枠を埋めていきましょう。提案の資料を作る時だけでなく、実際に内容を伝える時にも、この「T→A→P→S」の順番を意識するようにしましょう。そうすれば、相手に響く提案ができるようになります。
上から順に埋めるだけで、相手に「どういうこと?」と思わせない提案ができるようになる。仕事や副業で提案することになったときに〈TAPS〉は力を発揮します。
- 枠を埋めるだけで、相手に伝わる提案の構成が考えられる
- TAPSの各要素が矛盾なく繋がっているかどうかを確かめることはできない
- 各段階で相手に理解してもらっているかどうかを確認しながら、提案を進める
- 「Problem(問題)」は主観的な要素でなく、客観的なデータを提示するように意識する
マンダラート
問題分析 アイデア出し アイデアの深掘り 目標設定
〈マンダラート〉は、テーマから連想することでアイデアを生み出すフレームワークです。拡散思考が促され、アイデアの幅を広がり、自由な発想ができるようになります。
- 「テーマ」を〈マンダラート〉の中心に置く
- 「テーマ」の周囲の8マスに、テーマから連想されるキーワードやアイデアを記入する
さらに考えを深掘りしたい場合は、②で書き出したアイデア(オレンジの部分)をテーマとして設定し、拡散して考えます。
強制的に多くのアイデアが絞り出せる
目標の設定や問題の分析に使う場合は、具体的な事柄を思い浮かべてマスを埋めていきましょう。例えば、テーマを「WEBマーケティングへ転職するために身につけるスキル・知識」にしたとします。周囲には、「競合分析スキル」「デジタルツール知識」など、転職を成功させるために身につけたいスキル・知識を具体的に書いていきます。
さらに考えを深掘りしたい場合は、書き出したスキル・知識をテーマにして、「異動を願い出る」「スクールに通う」など、どうすれば身につけられるのかを考えてみましょう。
- テーマに沿ったキーワードが網羅的に可視化される
- 重要項目や優先順位に視覚的に気づきやすくなる
- 情報収集など、ただ考えているだけなら起こさないような行動が促される
- アイデアやキーワードが出ない場合の対処法が用意されていない
- すべてのマスを埋めてこそ効力を発揮するので、マスを埋めきらずに途中で切り上げることができない
- マスを埋めるために絞り出した言葉がアイデアとして結実することもあるので、マスは全部埋める
- 1人でも複数人でも使える
- 似た表現が複数あれば、重要なキーワードということになる
- 記入に行き詰ったときは、〈オズボーンのチェックリスト〉を使ってテーマを多角的に考えてみる
オズボーンのチェックリスト
アイデア出し
〈オズボーンのチェックリスト〉は、テーマを9つの視点から考えるフレームワークです。普通は考えない視点からも強制的に考えることになるので、常識では思いつかないようなアイデアをひらめくことができます。
「改良で新しい用途が生まれないか?」「あたらしい使い道はないか?」と、転用できないかを考える
「過去に使ったものが使えないか?」「似た物はないか?」と、応用できないかを考える
「場所、頻度、色などを変えたらどうなるか?」変えられないかを考える
「回数、時間などを増やしたらどうなるか?」「何かを加えたらどうなるか?」拡大・増加を考える
「要素を取り除いたらどうなる?」「圧縮したらどうなる?」縮小・減少を考える
「他の物で代用したらどうなる?」「他の方法にしたらどうなる?」代用したらどうなるかを考える
「パターンや順序を変えたら?」「原因と結果を置き換えたら?」再配置したらどうなるかを考える
「表裏、前後を逆にしたら?」「役割や順番を逆にしたら?」逆にしたらどうなるかを考える
「二つのアイデアをあわせたら?」「同時にしたらどうなる?」組み合わせたらどうなるかを考える
- テーマを決めて書き出す
- テーマについて「転用」「応用」「変更」「拡大」「縮小」「代用」「置換」「逆転」「結合」で考える
テーマについて視点を変えて考えやすくなり、新しいアイデアが生まれる
- 一般的には考えない視点から強制的に考えることになり、新しいアイデアが出やすい
- 考える視点があらかじめ決まっているので、荒唐無稽なアイデアが出にくい
- 9つの決められた視点からでしか考えられない
- 考えている視点が偏っていないか注意して、枠をまんべんなく埋める
- テーマを発展させることを意識して書きこむ
ベーシック法
業務改善 目標設定
〈ベーシック法〉は、目標設定の基礎的なフレームワークです。「目標項目」「達成基準」「期限設定」「達成計画」の4つのステップで、目標と達成するための道筋を具体的に設定します。
何を達成するのかという目標 次の4項目がある
- 強みをさらに強くする「向上・強化」
- 弱みや課題を克服する「改善・解消」
- 現状維持を目指す「維持・継続」
- 新たな取り組みをはじめる「創出・開発」
目標を達成したと見なす指標 次の3項目がある
- 定量的な基準を定める「数値」
- 定性的基準を定める「状態」
- 日程を定める「スケジュール」
目標達成の期限
設定した目標に向かってどのように進めていくかという行動計画
- 「目標項目」を書く
- 「達成基準」を各
- 「期限設定」を書く
- 「達成計画」を書く
・「目標項目」には4つの項目があるが、全ての項目を設定しても、どれか1つに絞っても構わない。
・「達成基準」には、なるべく数値化した指標を入力するようにする。もし数値化できない目標は、分かりやすい基準を定めるようにする。
・「期限設定」は、「達成基準」の「スケジュール」と同じ内容になるなら省いて構わない。
・「達成計画」は、複数書いて構わない。
成果目標だけでなく、成果を実現するための具体化された行動目標が設定できる
目標を持って勉強するときには、ベーシック法を使ってみましょう。例えば、転職に向けてスクールに通う人は、「目標項目」の「向上・強化」に「どんなスキルを身につけるのか?」、「達成基準」には「身につけるスキルの詳細」、「期限設定」には「転職までの目標スケジュール」、「達成計画」に全体のまとめを書きます。
- 目標に沿って計画を考えられるので、「達成基準」や「達成計画」が目標から逸れたものにならない
- 目標達成のための計画が把握しやすく、計画全体の流れや設計意図が相手に伝わりやすい
- その期日が妥当か?現実的な達成基準となっているか?といった計画の妥当性は判断できない
- 段階的な目標設定ができないので、中長期的な目標設定には不向き
- 計画に妥当性があるか考えながら記入する
- 「達成可能か」を考える〈SMART〉を使って、目標の再確認を行っても良い
- 目標達成の数値が高い場合は、〈ロードマップ〉を使って、目標達成の道筋を段階的に設定する
ロードマップ
業務改善 現状分析 目標設定
〈ロードマップ〉は中長期的な計画を立てるときに使われるフレームワークです。問題が大きく、目標を達成するまで段階を踏まなくてはならない場合に、達成までの道筋を視覚化してくれます。
- 達成したい最終目標を右端に書く
- 現在の状況を左端に書く
- ①と②の間に、段階的な目標を書く
- 目標達成に向けて行うことを書く
段階的な目標を設定する時は、最終目標から逆算して具体的な達成項目とすべきことを記入していく。
目標達成までに踏む手順の全体像が見え、段階ごとの目標が設定されるので、まず何を行うべきかが分かりやすくなる
何かを始めるときには、ロードマップを使って目標を立ててみましょう。例えば、副業のロードマップを作る場合、いつまでにどのようなスキルを獲得して、どれくらいの案件を受注するか、といった具体的な目標が立てていきます。ロードマップに沿って動いていけば、スキルアップやステップアップが目指せるようになるでしょう。
- 長期的なイメージを一目で把握できるので、今後起こることも予測でき、先の段階に備えることができる
- 目指すべき目標と現状の間にズレが生じても、〈ロードマップ〉と照らし合わせれば気付ける
- 短期的の目標やシンプルな改善項目を立てるときには向かない
- 想定している道筋から外れたときに気付いて軌道修正できるように、チームが確認しやすい場所に置いておく
- 目指すゴールは明確にする
- 実現不可能な目標が設定されないよう注意する
- 不足しているリソースの確保を考えて、目標を設定する
- 単なる数値目標にならないようにする
シナリオグラフ
アイデア出し
〈シナリオグラフ〉は、「誰が」「いつ」「どこで」「何する」の4つの要素をランダムに組み替えてシナリオを作ることで、新しい切り口を考えるフレームワークです。
ターゲットの具体的な行動をイメージするので、アイデアが浮かびやすくなります。発想がマンネリ化していたり、うまく新しいアイデアが出なかったりする時に使えば、ただ考えるだけでは出て来ないような切り口から発想を促してくれます。
- テーマ(何についてのアイデアを出すのか)を設定する
- 「誰が」「いつ」「どこで」「何する」の4つの要素を、5つ以上書き出す
- ②で選んだ要素を、上からランダムに繋いでシナリオを作る
上の図は「若者向けのカメラアプリ」をテーマに考える例です。「高校生」「クラブ活動」「学校」「確かめる」を繋ぐと、次のようなシナリオができるでしょう。このように物語を作って、アイデアを出していきます。
「高校生が校内で運動系のクラブ活動をしている時に、専用のカメラアプリを使っている。フォームをすぐに確かめることができ、過去のフォームと比べることが簡単にできる」
ランダムに選んだ要素から考えるので、思考が及ばなかったアイデアにたどり着ける
- ターゲットの行動を具体的にイメージしながら考えられる
- 要素が設定されているのでアイデアを出しやすい
- 複数人で要素やシナリオを出し合いながら使える
- 選択肢によっては、マンネリな案が出ることもある
- 常識にとらわれていない、インパクトのあるシナリオを描くように意識する
- 慣れてきたら、縦軸を「6W2H」にしたり、4つの要素に形容詞を加えたりしてみる
- シナリオを1つに絞らずに複数個考える
ブレインライティング
アイデア出し アイデアの深堀り
他の人のアイデアを基にしてアイデアを出すフレームワークです。回覧板のように専用のシートを回して、アイデアを複数人で書き込んでいきます。アイデアを書き込むだけなので、気軽に意見を出すことができ、参加者全員がアイデアを出すことになるので、数多くのアイデアを短時間で出すことができます。
- シートを1人1枚用意し、テーマを記入する
- 自分のアイデアを一番上の行に書き込む
- 設定した時間(1~5分)が来たら、シートを隣の人に渡す
- 受け取ったシートの次の行に、前の人が書いた内容に関連づけたアイデアを書き込む
- シートが埋まるまで③④を繰り返す
テーマに沿ったアイデアを、時間内に数多く出すことができる
- 参加者全員がアイデアを書くことになるので、たくさんのアイデアが出せる
- 複数人の視点でアイデアを出せるので、1人で考えるよりも幅広い発想が行える
- アイデアの記入時間が決まっているので、決められた時間でアイデアを出すことができる
- 参加者が5人以上いないと、あまり効果を発揮できない
- 前の人が書いたアイデアが的外れでも、関連したアイデアを出すように意識する
- 設定したテーマについて話し合うなど、目指す方向性を合わせてから行うと、的確なアイデアが出やすくなる
- 具体的なアイデアを出したいときはテーマを絞り込む
- それまでに書かれた内容とは被らない内容を書き込む
ECRS(イクルス)
業務改善 アイデア出し
〈ECRS〉は業務の改善策を考えることに特化したフレームワークです。次の4項目から業務を検討することによって、業務改善策のアイデアを出すことができます。
業務自体をやめることを検討する視点であり、作業自体や目的に意味があるかを考える。
別々で行っている業務や分担している作業を1つにまとめられないかを考える。
作業の順番の入れ替えや、業務の担当部署移管などを考える。
簡単な方法でできないか、パターン化できないかを考える。
「Eliminate(取り除く)」に分類される案が、業務効率化の効果が一番高いものです。
- 改善したい業務を書き出す
- Eliminate(取り除く)→Combine(まとめる)→Rearrange(取り替える)→Simplify(簡素化する)の順で、アイデアを考えていく
- 実際に取り組む改善策を決めて、実行する
業務内容について考えるだけでなく、「朝でなく夕方に行う」「A→Bの手順でなく、B→Aの手順にする」など、時間や場所、手順や担当者といった点からもアイデアを考えることもできます。
業務改善のためのアイデアを、複数考えることができる
- 現在の業務の見直しとアイデア出しを同時に行える
- 抜本的なアイデア出しが促され、ムダの排除につながりやすい
- 長年続けてきた業務でも、フラットな目線で考え直すことができる
- アイデアを導入することが目的となってしまいやすい
- 費用対効果や実現性を考えずに、まずはアイデアを出していく
- 業務の目的や目標を踏まえた上で、アイデアを出していく
- 重要なのは施策の導入ではなく、目的や目標を達成するための「手段」を考えることだと意識する
ペイオフマトリクス
現状分析 選択肢の選定
〈ペイオフマトリクス〉は、アイデアをマッピングして、効率的な選択肢を把握するフレームワークです。どのアイデアがいいのか、選択肢を選ぶときに役立ちます。
- 選択肢を用意する
- 選択肢をフレームワーク上に配置する
- 全体を見ながら、選択肢を選ぶ
上図の例では、縦軸を「効果性」、横軸を「実現性」に設定しています。横軸を「時間」や「費用」「手間」にしても使えます。
選択肢を選ぶとき、「効果性」も「実現性」も高いものが最優先です。その次に優先される選択肢は「実現性」が高く「効果性」が低いものです。「実現性」が高いものを先に実行することで、「効果性」は高いが「実現性」の低いアイデアに必要なリソースを整えるという手順が一般的です。
ただし、要望があるものから優先する、時間がかかっても効果のあるものを優先するといった判断もあるでしょう。優先する選択肢は状況や方針を考慮して決定しましょう。
複数の選択肢をマトリクス上に配置するだけで、選択肢の全体像が明らかになる。同時に各選択肢の特徴も明確になる。
現状を分析して改善したい時や、選択肢から選びたい時に使えます。例えば、副業で効率的に稼ぎたいと思ったときには、縦軸を「効果性」・横軸を「時間」にして考えてみるといいでしょう。
- 複数人で認識を共有できるので、効果やリソースに関するメンバー間の認識のズレを発見できる
- 選択肢を2つの側面から考察できる
- アイデアの数が少ない場合の使用にはあまり向かない
- 「実現性」も「効果性」も低い選択肢は、優先順位も低い。無視するのではなく、「実現性」や「効果性」を高めるための工夫を模索し、一方もしくは双方が高まった場合に検討を行う
- 選択肢内で相対評価をつけてしまわないよう、目標を意識してマッピングし、絶対評価を行うようにする
- 似通った選択肢ばかりにならないように、評価の高い選択肢を出そうとしない
プロコンリスト(プロコン表)
選択肢の選定
〈プロコンリスト〉は、ある選択肢のメリットとデメリットを考えて、意思決定の手助けをしてくれるフレームワークです。選択肢を選ぶときに便利です。ちなみに、プロコンとはラテン語の「pros(賛成の)」と「cons(反対の)」を合わせたもので、長所と短所のことです。
また、上図のように、似た2つのアイデアを並べて考えてもよい。ただし選択肢が多くなると判断が難しくなるため、事前にある程度の数まで選択肢を絞る必要がある。
- テーマを設定する
- テーマのメリットとデメリットを書き出す
- 「重要度」を数値で入力する
- テーマの賛成反対を決める
このフレームワークの最大の特徴は「重要度」の設定です。「重要度」を数値化することで、話し合うべき長所と短所を絞ることができます。「重要度」は全員で話し合って、主観で数値化して良いですし、「重要度」が高いと認識した人数を点にしても構いません。
選択肢のメリットとデメリットを客観的に把握することができる。
プロコンリストは、選択肢を選ぶ時に使うと便利です。例えば、副業に役立つスキルを身につけようとスクールに通いたいと思ったとします。副業スクールには、いろいろな種類のものがありますが、プロコンリストを使えば、より自分にあったものが見つけられます。
- 賛成と反対の双方の立場のメンバーを巻き込んで、アイデアを検討できる
- 個人の見解とは異なる考え方を、重要度とともに認識できるので、反対意見を踏まえて検討できる
- チーム全員で議論を行う土台となる
- あくまでも議論の土台となるだけで、テーマやアイデアの採用/不採用の結論が出るわけではない
- 賛成派と反対派それぞれの意見をしっかり聞き、中立的な立場で書き出す
- 参加人数が多いほど、検証の精度が高くなる。できるかぎり複数人の意見を聞く
- チームで意思決定する場合は、全員の意見を反映する。そうすれば最終的に下される決定も支持がされやすい
- 「重要度」に入れる数値の基準を規定しながら使う
- 決して多数決で採用可否の選択をしない。あくまで話し合いの材料にする
RACI(レイシー)
現状分析
〈RACI〉は、業務の役割と責任を明確にするフレームワークです。下の図の「案内状作成」を見ると、「相談先」(C)が不在です。このように、誰も対応していない業務や偏りも発見しやすくなります。
- 業務と担当者を書き出す
- 各業務に、誰が何の担当なのかを書き込む
業務を円滑に進められるように整えます。責任範囲を明確にして共有することで、誰に聞いていいかわからないとった事態が防げます。また、誰も対応していない業務も見つけやすくなります。
- 個人単位でなくチーム単位、業務単位でなくプロジェクトごとにも作成することができる
- 責任範囲がわからないためにとっていた確認を減らすことができる
- 責任の所在を他のチームへ容易に共有できる
- 業務の責任範囲を設定するので、業務の担当範囲を担当者の意思で進めやすくなる
- 責任担当者が明確になっているため、業務を担当者に押し付けてしまう危険性が出てくる
- 責任範囲があいまいな箇所がないか確認する
- 特定の人物に、業務が偏っていないかを確認する
緊急度/重要度マトリクス(アイゼンハワーマトリクス)
現状分析 選択肢の選定
〈緊急度/重要度マトリクス〉は、緊急度と重要度の二つの観点から考えるフレームワークです。これを使えば、問題や課題を整理して、優先順位が付けられます。
- 問題を「重要度」と「緊急度」の高低で振り分ける
- 優先順位を考える
振り分けられた問題は、重要度の高いもの(A・B)から優先的に対応しましょう。しかし、相手がいる問題は重要度が低くても緊急度の高いもの(C)となるため、早めの対応が求められます。
重要度が高く緊急度が低いもの(B)は、後回しにしがちですが、将来的に役立つものが含まれていることが多いものです。また、時間が経つと重要度も緊急度も高くなる可能性もあるので、緊急度が低いうちに取り組みましょう。
緊急度も重要度も低いもの(D)は、業務自体が不要かもしれません。取り除けるかどうか、取り除くにはどのような方法があるかを考えても良いでしょう。
ものごとの優先順位がつけられ、何から取り組むべきかが考えやすくなる
- 今ある問題に対して客観的な判断ができるようになる
- いずれ対応が必要な問題も分かるので、今後の見通しが立てやすくなる
- 改善のスケジュールや費用対効果はわからない
- 1つ解決すれば連動して解決する、といった問題同士のつながりは把握できない
- 「重要度」「緊急度」以外の観点と合わせて考える時は、〈意思決定マトリクス〉を一緒に使う
- 問題同士につながりがありそうな場合は、〈ロジックツリー〉で確認してみる
- 「重要度」「緊急度」の度合いには、定量的な定義付けをする。問題を直感で振り分けないように気を付ける。
- (C)に振り分けられた問題は、継続して対応しても自分や会社の力にならない可能性があります。自動化や簡略化を考えるのも1つの方法です。
意思決定マトリクス
現状分析 問題整理 選択肢の選定
〈意思決定マトリクス〉は、選択肢を各項目ごとに評価するです。〈緊急度/重要度マトリクス〉と同じく、どの問題から対応するべきかを考えるときに役立ちます。
- 選択肢を書き込む
- 評価項目と比重を設定する
- 評価を書き込んで、合計点を集計する
- 合計点をもとに意思決定する
選択肢とは、左端の列(上図では改善したい問題点が書いてある)のことを指します。評価項目とは、緑色の行(上図では「緊急性」「重要性」「実現性」「効果性」)を指します。評価項目は、目的によって変更可能です。
「緊急性」「重要性」「実現性」「効果性」「展開性」「優位性」「持続性」「安全性」「将来性」「インパクト」
評価項目の比重は、付けても付けなくても構いません。もし比重を付ける場合は、会社や組織が重要視しているもの、目的に最も沿っているものにつけましょう。
合計点をもとに意思決定しますが、必ずしも高得点が出たものに決めるというわけではありません。合計点が少なくても、将来的に無視できなくなる選択肢もあるでしょう。洗濯するものを1つに絞らず、同時進行が可能かどうかなども検討してみましょう。
目的に沿って、選択肢を定量的に評価できる
- 重要視したいポイントを踏まえて意思決定できる
- 統一した評価基準で選択肢を点数化することができ、複数人でも評価の比重がブレずに使える
- 複数人でのアンケート形式で使用することができる
- 評価項目の比重が全員の納得できるものでなければ、結果に不信感が生まれてしまう
- 似たり寄ったりの合計点が出ることもあり、判断に困ることもある
- 選択肢の粒度を揃えて評価する
- 目的に合わせて、評価項目と比重を設定する
- 評価項目数に上限はないが、散漫にならないように注意する
- 評価項目の比重は、大きく偏らせず、全ての数値に意味があるようにする
- 似たり寄ったりの合計点が出たときは、評価項目や比重を変える、加点法や減点法をとるなど、別の角度から考える
バリューチェーン分析
現状分析 業務改善
〈バリューチェーン分析〉とは事業の運営プロセスを切り分けて、活動ごとに分析するフレームワークです。バリューチェーンとは、企業が顧客へ商品やサービスを提供するまでの工程を、“モノの連鎖”(サプライチェーン)でなく“価値の連鎖”(バリューチェーン)で捉えるというものです。これを分析するためのフレームワークが〈バリューチェーン分析〉です。
- 自社のバリューチェーンを書き出す
- 各ステップの情報を収集し、書き込む
- 問題点や、強みと弱みを分析する
上図は、企業が顧客へ商品やサービスを提供するまでの工程を分解したものです。
途切れることなく続く「主活動」(製造、サービスなど)と、それらを支える「支援活動」(人材育成、技術開発など)から成り立っています。これに自社の活動を記していくと、自社の特徴を発見することができます。
コスト削減に使う場合、「主活動」のそれぞれにかかるコストを網羅的に書き出します。すると、どの活動にどれほどのコストがかかっているかが分かりやすくなります。ただし、コストが高い箇所を削ればいいというものではありません。費用がかかるにはそれ相応の理由があるので、自社の活動の強みと弱み、貢献度、費用対効果などを合わせて考えることが大切です。
事業の工程が分析しやすくなる
- 自社の強みと弱みが分析しやすくなり、差別化戦略が立てやすくなる
- 事業の中でボトルネックとなっている部分を見つけやすくする
- コストがかかる理由を記入する枠がないので、コストがかかっている活動が悪目立ちしてしまう
- 問題部分を取り換えた時、連動している業務がどうなるかは、別途検証が必要になる
- 〈バリューチェーン分析〉にはさまざまなフォーマットがあるので、目的にあった型を選ぶようにする
- データにもとづいて検証する
- 問題部分については、自社の強みや費用対効果などと合わせて検討する
- 活動ごとにフォーカスするのでなく、業務全体の流れも意識して分析する
- 問題のある業務を取り換える場合は、そこで取り扱う情報や、働く人の感情に考慮した案を作成する
PERT(パート)図
現状分析 業務改善
〈PERT図〉(Program Evaluation and Review Technique)は、業務が完成するルート・スケジュールを図表化する手法です。これを作れば、ムダのない手順が設定されていないか、問題などに対応する時間的猶予があるかなどが把握できます。「時間の短縮」の方法を考える基盤となる図です。
- 業務工程を書き出す
- 各工程の所要時間を書き出す
- 各工程を順番に番号を振って、線でつなぐ
- 各工程に取りかかれるタイミングを計算して、「最早開始時間」と「最遅完了時間」を記入する
- 「クリティカルパス」(「最早開始時間」と「最遅完了時間」が同じルート)を把握する
同時進行する業務がある場合、上図の1-2-3と4-5と6のように、ルートを枝分かれさせて書きます。
最も早く作業を開始できるタイミング「最早開始時間」には、左から順に時間を足したものを記入します。この時間までに作業を完了させなくてはならないタイミング「最遅完了時間」は、右から順に時間を引いたものを記入します。
例えば、1-4-5-7のルートであれば7の「最早開始時間」は240分となるはずですが、7は1-2-3と4-5と6が完了しなくては始められない業務です。そのため、7の「最早開始時間」はすべての業務が完了する480分となります。
「最早開始時間」と「最遅完了時間」が同じルートを「クリティカルパス」と呼び、上図だと1-2-3-7-8-9にあたります。これは時間的余裕がなく、遅延した場合はスケジュール自体に影響を及ぼす業務です。
業務のつながりが確認でき、手順やタイムスケジュールが客観的に把握できます。
- 複数人が分担して行う業務であっても、業務の工程と所要時間を一目で確認できる
- 業務全体の流れが把握でき、工程ごとの問題点が考えやすくなる
- 所要時間や工程順はこれまでの経験に基づいて入力するしかないため、作成する人によって誤差が生まれやすい。
- 工程ごとの進捗状況を把握することはできない
- 問題が発生した場合に対応できる時間的余裕が設定されているかを確認する
- 前後の業務との関係を意識して繋げる
AIDMA
アイデア出し 業務改善
〈AIDMA〉は顧客が商品購入を決めるまでの段階を考えるフレームワークです。それぞれの段階に必要な情報を分析し、顧客に対するコミュニケーション施策を考えていきます。
商品やブランドの存在を認知してもらう段階
消費者に商品の興味・理解を持ってもらう段階
消費者に行動・購入した時のイメージを持ってもらう段階
欲しいと思う消費者に行動・購入の動機付けを行う段階
消費者にスムーズに行動・購入してもらう段階
- 顧客像(ペルソナ)を設定する
- 購買・行動までに、顧客がどのような状況にあるのかを書き出す
- 最終的にとる行動を「購買・行動」に入れ、それに至るまでの流れを「認知」~「記憶」に入れる
- 各段階で顧客が欲するものを「顧客のニーズ」に入れる
- ③と④に対応する施策を考えて、「コミュニケーション施策の内容」に入れる
上の5つの段階で、顧客はどういう状態でどんなニーズがあるのか、顧客の目線に立って記入していきます。
顧客は購入・行動までにさまざまな心理状態になります。それを段階ごとに分けて、それぞれの状態に適した施策や戦略を考えることができます。
顧客を購入・行動まで導くための効果的な施策を考えるときに使えます。ボトルネックがあれば発見でき、課題を改善する施策を考えるときにも使えます
- 段階ごとの分析ができる
- 改善すべきボトルネックが見えやすい
- 顧客目線に立って考えやすい
- 購入後のネットでの共有、拡散については考えられない
- 顧客がどの段階で壁を感じるかを考える
- 自分だったら何をしてもらうと嬉しいかを考える
- 「購買・行動(Action)」で促したい行動を明確にして考える
フレームワークとは
フレームワークは、思考のテンプレートです。業務改善・問題分析・アイデア出し・戦略立案といった場面での考えるべきポイントが、型に落とし込まれています。そのため、フレームワークを使えば、効率的に理論や経験を踏まえた思考がしやすくなります。
これは〈アンゾフの成長マトリクス〉というフレームワークです。この型に従って記入するだけで、自社事業の戦略を4つの方向から考えることができます。
フレームワークがないままに考えていると、思考が偏るかもしれません。しかし、フレームワークを使っていると、思考に偏りがある場合には型に空白ができます。自然に「この側面からも考えてみよう」と、偏りなく考えられるのです。ときには、漠然と考えていてはひらめかないような方法が思い浮かぶこともあります。
このように、簡単かつ論理的な思考を促してくれる型が、フレームワークです。
考える時間が短くなる
考え事をしていると、思考が回り道をすることがありますが、フレームワークはそのような事態を防いでくれます。そのため、問題の発見や思考にかかる時間を短縮できます。
情報が共有しやすくなる
何を切り口として考えるか、どのような姿を目指すのかなど、同じ話を聞いても人によって認識がズレてしまうことがありあす。ちょっとしたズレが、ときには大きなゆがみとなれば、作業が難航することもあるでしょう。フレームワークは図なので、情報共有も簡単です。メンバー間の認識をそろえる手間が減るだけでなく、チーム外に向けて説明する時にも、説得力をもって伝えることができます。
考えるべき範囲が決まっている
フレームワークには、考えるべきポイントや流れがまとまっています。そのポイントや流れに沿って考えるだけでいいので、考える順序からはずれたり、突飛な論理になることはほぼありません。情報の取捨選択が苦手な人や、順序立てして考えることが苦手な人でも、カンタンに使えます。
考えや情報が客観視しやすい
自分でまとめた情報や考えを客観的に見るというのは、慣れるまでは難しいものです。誰かに話を聞いてもらうのは1つの方法ですが、いつも誰かに聞いてもらわないと客観視できない、というのでは困ります。フレームワークは基本的に論理が図式になっています。情報や考えが図になるので、どこが足りないのか、情報が偏っていないか、客観視して考えやすくなります。
論理的な考え方が身につく
フレームワークは、ビジネスシーンでよくある考えるべきポイントやノウハウを論理的な形にしたものです。そのため、フレームワークを使っていくことはロジカルシンキングの練習にもなります。フレームワークを使いこなせるようになれば、よりスピーディーに合理的な判断ができるようになります。効率的に判断できれば、その分業務の生産性も高くなるでしょう。
関連記事 ロジカルシンキングの身につけ方~4つの論理的思考法を図付きで解説
フレームワークの基本的な考え
フレームワーク活用の基本となる考え方に「“漏れ”なく、“ダブり”なく」というものがあります。
例えば、顧客を分類してみるとします。顧客を「東日本在住」「西日本在住」「北日本在住」「南日本在住」で分けると、それぞれの区分の境目があいまいなので、“漏れ”や“ダブり”が発生しやすい状態と言えます。
「年収1円~300万円未満」「300万円~650万円未満」「650万円~1000万円未満」「1000万円以上」で分けると、「無収入の人」は“漏れて”しまいます。「会社員」「学生」「主婦・主夫」という括りをすると、「会社員」をしながら「学生」や「主婦・主夫」を行う人は“ダブって”しまいます。
「20歳代以下」「30歳代~40歳代」「50歳代~60歳代」「70歳代以上」で分けたなら、“漏れ”も“ダブり”も存在しない状態になります。
もし、“漏れ”がある状態で考えると、情報が不足したまま議論を進めることになります。逆に“ダブり”がある状態だと、必要以上の時間を議論や分析に充てることになり、結果が偏る可能性もあります。いずれにせよ、正しい分析結果は出ません。しっかり分析して施策を作ったとしても、実際の顧客には刺さらない施策となってしまうでしょう。
正しく対象を見るには、この「“漏れ”なく、“ダブり”なく」という考え方が大切なのです。この考え方は、MECE(ミーシー)と呼ばれる論理的思考の基礎です。フレームワークは、このMECEで考えやすくしてくれます。
なお、MECEに考える方法やポイントについては、「論理的な「分析」の方法」で詳しく解説しています。
フレームワークを使う時のポイント
フレームワークを使うときには、次のポイントを押さえておきましょう。
・Why・What・Howを意識する
・複数のフレームワークでアプローチする
・自社の状況や仕事の進め方に合ったものにする
・フレームワークが持つ理論を学ぶ
- Why・What・Howを意識する
フレームワークを使う時は、常に「Why(なぜ)」「What(なに)」「How(どのように)」を意識しましょう。フレームワークを使っていると、一生懸命になり過ぎてしまって、つい本来の目的や更なる課題を見失いがちです。なぜ使うのか、何をするのか、得た情報をどのように使うのかを意識して、俯瞰した視線を持つようにしましょう。
- 複数のフレームワークでアプローチする
フレームワークは必要に応じていくつか使いましょう。フレームワークには、それぞれにメリットとデメリットがあります。複数使えば、それぞれのメリットを生かし、多角的に思考することができます。ただ、フレームワークを埋めるには時間と手間がかかるので、目的に合っているもののみを使いましょう。
- 自社の状況や仕事の進め方に合ったものにする
フレームワークは様々なケースに対応できるよう作られたものです。そのため、汎用性は高いのですが、個別のケースに対応したものではありません。状況や目的によって、最適なフレームワークは違ってきます。使っているフレームワークがリソースに合っているか?といった観点から検討しましょう。また、フレームワークをカスタマイズすると、フレームワークが持つ理論から外れることもあるので、なるべく避けるようにしましょう。
- フレームワークが持つ理論を学ぶ
フレームワークは誰にでも使うことのできる便利なツールです。そのため、このフレームワークがどのような背景と理論によって生み出されたかを知らないまま使うことができます。背景や理論を学ぶことは大変ですが、知っていると応用が利くこともあります。ときには背景や理論を学ぶことも、フレームワークにとらわれないアイデアを生み出すためには大切です。
フレームワークを使う時の注意点
フレームワークを使うときは、次のことに注意しましょう。
・フレームワークは“枠組み”でしかない
・フレームワークの使用が目的になりがち
・フレームワークは“枠組み”でしかない
フレームワークは思考の道筋を整えてはくれますが、正解を与えてくれるものではありません。どこまで分析を深められるか、新たなアイデアをひらめけるかは使用者にかかっています。フレームワークで出た結果を使って議論や分析を行うのは、あくまでも使用者だということを忘れないようにしましょう。
・フレームワークの使用が目的になりがち
使い慣れていない人は、フレームワークを埋めることに一生懸命になってしまいがちです。しかし、フレームワークはあくまでも目的のために使うツールに過ぎません。目的の達成のために行っているはずの思考の整理が、目的にすり替わらないように注意しましょう。