ロジカルシンキングの身につけ方~4つの論理的思考法を図付きで解説

ロジカルシンキングの身につけ方~4つの論理的思考法を図付きで解説

 「ロジカルシンキング」という言葉を聞いたことがありますか?ロジカルシンキングは、ビジネスシーンで求められることの多いスキルです。これを身につければ、分析力・問題解決力・アイデア発想力・提案力がグッと上がります。この記事では、基本的な考え方をシーン別に解説し、身につけるポイントなどもあわせて紹介します。

目次

ロジカルシンキングとは?

 「ロジカルシンキング」は、日本語にすると「論理的思考法」と訳されます。物事を直感や感覚で捉えるのではなく、情報を整理し、筋道立てて結論を導く思考法のことです。今やビジネスシーンにおいて身につけておきたいスキルの1つとなっています。

論理的に考えられないと起こる失敗

 ロジカルシンキングを身につけていると、何が変わるのでしょうか。例えば、こういった経験はありませんか?

Case1・説得力を持って説明できない

 オフィスのレイアウトのせいで作業効率が落ちていると感じた。オフィスのレイアウトの改善を提案したが「なぜ変更が必要なのかわからない」と言われてしまった。

 直感に沿って思ったことを話すだけでは、相手を説得することはできません。

 事情を分かってもらおうとして、手元にある情報を全て伝えようとしてしまったり、直接関係のない情報を伝えてしまったりするでしょう。そんな状態では、「レイアウトのせいじゃなくて、身体の動かし方のせいじゃない?」などと質問をされても、すぐに返答することができないかもしれません。

主張「オフィスのレイアウト改善が必要」 根拠「オフィスの道幅が狭く1日10分のロス」「大きな荷物があると建物外の迂回が発生」

 説得力をもって説明するには、ロジカルシンキングによって情報を整理し、主張・根拠を分類して伝えることが重要です。

 「オフィスの道幅がせまく、人とすれ違えないので時間がかかるから非効率的です」「1日あたり10分をすれ違いの待ち時間に費やしています。改善すれば月に3時間20分の削減になります」と理由や根拠を伝えられるだけで、説明の説得力は増します。ロジカルシンキングを身につけていると、説明が得意になるのです。

Case2・根本的な課題を発見できない

 完成した商品の中に、不良品が混じるミスがあった。今後はそのようなミスが起きないように、今まで以上に完成品チェックに時間を充てるようにしよう。

 「今まで以上にチェックに時間を充てる」という対策は、果たして適切でしょうか?

 起きてしまったミスの根本的な原因を特定しなければ、ミスは繰り返されてしまうでしょう。チェックの時間が足りなかったことが根本的な原因でないならば、本質的な問題は見過ごされたまま、ただ作業の時間だけが増えただけになります。

「不良品が混じっていた」→Why?→「チェックが足りなかった?」「古い手順で作業する人がいるから」→Why?→「マニュアルの更新が止まっているから」「現在の手順を確認する機会がないから」

 「チェックが足りなかったことが問題なのか?」「ミスが起きてしまった原因は何なのか?」根本的な課題を発見するには、筋道立てて考える必要があります。

 「古い手順で作業している人がいたから」という原因を見つけられたならば、マニュアルを更新して、現在の手順を共有する、という具体的な解決策が取れるでしょう。ロジカルシンキングを身につけていると、根本的な課題を見つけることができ、適切に改善できるようになるのです。

ロジカルシンキングの5つの効果

 ロジカルシンキングができるようになると、どのような効果があるのでしょうか。

説得力が身につく

 ロジカルシンキングを身につけると、自分の主張や理由、根拠、事実などを順序立てて、矛盾なく話せるようになります。筋道の通った話ができるようになれば、プレゼンテーションや商談、文書作成などの場面で大いに役立つでしょう。

分析力がアップする

 ロジカルシンキングができるようになれば、情報を整理して、それぞれにどういった因果関係があり、どこに問題があるのかを見抜けるようになります。表に現れていないニーズや課題を見つけられるようになれば、課題をしっかりと把握して考えることができるようになるでしょう。

問題解決力がアップする

 ロジカルシンキングができれば根本的な問題を突き止められるようになります。その上で、直感で決めた解決策ではなく、筋道の通った適切な対応ができるようになり、業務の改善や生産性の向上にも繋げられるようになるでしょう。

コミュニケーション能力がアップする

 ロジカルシンキングで自分の意見を論理的に話せるようになるだけでなく、相手の意見を分類して考えることができるようにもなります。「どういう考えで言っているのか」など、相手の気持ちや考えを正確に読み解く力もアップするのです。そうすれば、建設的な話し合いができるようになるでしょう。

先入観にとらわれずにフラットに考えられる

 ロジカルシンキングを身につけると、なにが事実でどれが先入観なのか、情報に偏りがないかなどを意識することができます。情報の全体感をつかむ力が向上すれば、先行するイメージにひっぱられずに、物事を考えられるようになります。問題解決の場面やアイデア出しの場面で役立つでしょう。

ロジカルシンキングを身につける9つのポイント

 ロジカルシンキングを身につけるには、どうすれば良いのでしょうか。それには、日ごろから意識して論理的に考える練習をすることが大切です。ロジカルシンキングを身につけるために、まずは次の9つを意識してみましょう。

直感や感覚でなく、根拠を以て考える

まずは直感で物事を考えるのでなく、「なぜそう思ったのか」「その根拠は何なのか」を意識するところから始めてみましょう。

ロジカルシンキングが苦手な人は、根拠をすっとばしてしまいがちです。「なぜ?」を繰り返し、根拠となる理由や背景を考えることは、矛盾や飛躍のない、筋道を立てて考える練習になります。

細かく分解して考える

物事を細かく分解してみましょう。例えば「多くの人に読んでもらえるブログ記事を書きましょう」と言われたとします。この場合、「いつまでに書く?」「どんな人に読んでもらう?」「多くの人って何人?」などの問いに落とし込めるでしょう。情報を分解することは、原因や解決策を掘り下げる訓練になります。

常に目的を意識して考える

常に最終的な目的を意識する訓練をしましょう。ロジカルシンキングが苦手な人は、作業に集中して最終的な目的から離れてしまいがちです。「何のためにこれを行っているのか」を常に意識する練習をすることで、目的から離れずに筋道を立てて行動できるように訓練するのです。

それが難しいのであれば、まずは見えるところに目的を書いておき、いつでも確認できるようにすると良いです。

事実に基づいて考える

何かを考えるとき、先入観を持っていませんか?自分の考えと事実は全くの別物です。まずは「事実が何なのか」「それに対する自分の考えはどうなのか」を分けて考えるように意識してみましょう。

事実と自分の考えを分けるように練習をすれば、考えに偏りを無くせるようになり、偏りがあったとしても気づけるようになります。

順序立てをしてから話す

話す時にも少し意識をしてみましょう。話し相手に伝えたい結論と理由は用意できていますか?そしてそれが矛盾や飛躍なく繋がっていますか?

もちろん、情報交換や雑談などであれば、相手に伝えたい結論がない会話もあるでしょう。でも、説明や報告、提案などには必ず論点となる結論があるはずです。なんとなく話始めるのではなく、まずは自分の中で情報を整えるようにしてみましょう。

情報の取捨選択をする

手元にある情報を全て話していては、それがどんなに正しい情報であっても、伝えたいことが伝わらなくなってしまいます。

「伝えたい内容が何なのか」「そのために必要な情報は何で、伝えなくてもよい情報はどれか」情報のポイントを意識しながら、手元にある情報の取捨選択を意識して行えば、論理的に情報を組み立てる訓練になります。

言葉を具体的にする

普段の会話にも意識してみましょう。「早めに対応します」「やるべきことを頑張ります」といった、あいまいな言葉を使っていないでしょうか?

こういった言葉を具体的なものにしようと意識するのも、ロジカルシンキングを鍛える1つの方法です。あいまいな言葉では相手に伝わっていないだけでなく、自分でも意識できていない場合もあります。いつまでに対応するのか、行動として何を行うのか、しっかりと具体的な言葉に落とし込むようにしましょう。

書いたり話したりして客観的に考える

自分の思考を客観的に考えるように意識してみましょう。自分の考察を俯瞰して見ると、意外と抜けや漏れ、偏りがあるかもしれません。また、論理的に考えたつもりでも、飛躍しているところや、感覚的な部分もあるかもしれません。

客観的に見るのが難しいという人は、誰かに話を聞いてもらったり、紙に書いてみたりしましょう。自分の思考が論理的になっているかが確認しやすくなります。

フレームワークを使う

フレームワークを使ってみましょう。フレームワークとは、ロジカルシンキングの論理が形になったもの。記入欄を埋めていけば、スムーズにロジカルシンキングができるテンプレートです。まずは、フレームワークを使って論理的思考を行う回数を重ねましょう。

論理的な「分析」の方法

 しっかり分析したはずなのに「分析対象に漏れがあった!」「同じ項目を重複して分析していた」ということはありませんか?そうならないためにも、ロジカルシンキングの考え方を身につけることが大切です。

 何かか物事について考える時、そのままでは分かりにくいものです。必ず、対象を小さく分解して、関係性や場合ごとに分けながら「分析」することになります。この時、ロジカルシンキングを身につけていると、どのように役立つのでしょうか。

論理的でないと起こりうる「分析」の失敗

 例えば、学習塾の顧客である「生徒」を、次のように分解したとします。

・小学生
・中学生
・高校生
・予備校生
・浪人生

 この区分に従って分析してしまうと、正しい分析結果は出ません。なぜならば、「予備校生」でもあり「浪人生」でもある人がいるからです。また、「専門学校生」「高専生」「大学生」などが含まれていません。このように、「生徒」を構成する要素を論理的に導けなければ、正しい分析結果も出てきません。

ポイントは「目的に沿った分解」

 分析に必要なのは「目的に沿って分解すること」です。

 分析をすると言って、データを集計してまとめることに一生懸命になってしまうことがあります。でも、それは分析とは言えません。適切な行動を取れるように、データを収集し、要素や関係性ごとに整理し、その全容を調べることが分析です。

 先ほどの顧客を「男性」と「女性」という区分で分解することもできます。LGBTへ配慮して誰もが通いやすい学習塾にしたいとの考えなら、分解方法も変わってくるかもしれません。目的によっては、そもそもその分類を行う必要がないかもしれませんし、学習塾でなく外科を運営するのであれば、生物学上の分類が必要になるかもしれません。

 分析をする時は、目的に沿った切り口で捉えていくことが大切なのです。

「MECE」で漏れなく、ダブりなく考える

 物事を論理的に捉えるために、分解する――そのときに重要な理論が「MECE(ミーシー)」です。

 Mutually(互いに)
 Exclusive(重複せず)
 Collectively(全体的に)
 Exhaustive(漏れがない)

 「MECE」とは、「漏れなく、ダブりなく」ということ。「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字を取って、そう呼ばれています。

MECEのイメージ図
「MECE」の例
作成 株式会社デジタルボックス

 この「MECE」は、ロジカルシンキングの基本となる考え方です。目指すべきは「漏れなし、ダブりなし」の状態です。例えば、顧客を「15歳未満」「15歳以上」に分ければ、漏れもダブりもないでしょう。

一方で、「東京都在住」と「大阪府在住」に分けると、他の地域に住む人が漏れてしまいます。「学生」と「社会人」で分けると、働きながら学校に通う人がダブってしまうでしょう。

 漏れや重複があると、正しい分析ができず、やりなおしをするはめにもなります。「MECE」を意識して「漏れなく、ダブりなく」分類するように心がければ、目的に沿ってアプローチできるようになります。

MECEで漏れなく、ダブりなく考える方法

 MECEに考えていくには、この手順で進めていきましょう。

  1. 目的を決める
  2. 要素を洗い出す
  3. 要素の優先順位を決める

 分析をしていると、細かいところにこだわりすぎて、全体を見通せなくなりがちです。そうならないように、必ず「何のために分析するのか」という目的を設定します。

 その上で、要素を洗い出し、その優先順位を決めます。物事を分解するときの切り口は、無数にあります。目的のためには、どの切り口で情報を分解すればいいのかという軸を考えてから、分解していくのです。

 MECEで分解していくには、次の2通りのアプローチがあります。

  • トップダウンアプローチ

 まずは全体像をつかんで、細かく分類していく方法です。基本的にMECEで考える時は、この方法で考えていきます。全体像から細かく分類し、落としこんでいくことで、体系的にとらえやすいというメリットがあります。

 しかし、全体像が見えていない場合には、この方法はあまり向いていません。無理に全体像を設定して分類してしまうと、漏れやダブりが生じてしまうでしょう。一般的・普遍的な前提から分解するなど、情報の全体像がわかっている時に使う手法です。

全体像から詳細に分解して考える
トップダウンアプローチの考え方
作成 株式会社デジタルボックス
メリット
・体系的に物事をとらえられる
・ゴールを意識しやすい
デメリット
・全体像に誤りがあると、漏れやダブりに結び付く
  • ボトムアップアプローチ

 詳細を集めて、グループごとに分けながら分類方法を決め、全体像をつかむ方法です。トップダウンアプローチとは逆で、細かいところから全体感をつかんでいきます。全体像がつかみにくい未知の分野であれば、この方法を使うと良いでしょう。

 ただし、詳細を集めきれなければ、全体感をMECEの状態でつかむことができません。漏れやダブりがないか、注意しながら組み立てる必要があります。ある程度進めたら、トップダウンアプローチで考えてみましょう。そうすれば、漏れている部分にも気づけます。

ボトムアップアプローチの考え方
作成 株式会社デジタルボックス
メリット
・全体像が不明確でも考えられる
・新しいアイデアが出やすい
デメリット
・詳細を集めきれなければ、抜けや漏れが生じる
・漏れや重複があっても気づきにくい

MECEに分解するポイント

 物事をMECEでとらえるには、どんなポイントがあるのでしょうか。

  • 分解の5つの考え方

 思いつくものを手あたり次第に並べるのではなく、まずはこの5つのポイントで考えてみましょう。漏れやダブりが少なく、要素を見つけやすくなります。さらに、分解した要素を合計すると、全体と一致するかを確認してみると、より漏れやダブりが避けられます。

類似性
「紙パック/瓶/ペットボトル」のように、似た物で分解する
時系列・ステップ
「流通/販売」のように、時系列や段階ごとに分解する
対称
「質と量」「メリットとデメリット」のように、対称のもので分解する
原因・結果
「使用量/残量」のように、原因と結果で分類する
因数分解
「顧客単価=商品単価×一人当たりの購入数」のように、計算式として成立するもので分解する
  • 分解の切り口は1種類

 漏れやダブりを避けるもう一つのポイントは、違う切り口を混在させないことがポイントです。

 例えば、飲み物をMECEに分解するとします。この時、「紙パック」と「ペットボトル」と「瓶」と容器の種類ごとに分けるのは良い例です。しかし、「紙パック」と「コーヒー」と「牛乳」と分けてしまっては、MECEになりません。「紙パック」という容器の種類と、「コーヒー」「牛乳」という中身の種類の、2種類の切り口が混在しているからです。

「飲み物」を「紙パック」「瓶」「ペットボトル」という容器の種類で分類するのはOK
情報を分解するポイント
作成 株式会社デジタルボックス

 分解するときは、切り口を1つに絞ることがポイントです。容器の種類だけでなく、中身の種類でも分解が必要なのであれば、容器の種類で分解した上で、さらに中身の種類で分解するようにしましょう。

MECEの注意点

 全ての項目がきれいに分解できるというわけではありません。例えば、トマトは日本では一般的に野菜として流通しています。しかし、花が咲いた後になる実なので、生物学的には果実です。フランスなどフルーツとして捉えている国もあるそうです。

 つまり、人によってトマトは野菜にもフルーツにも分類されます。このように、分解をしていると「どっちに入れるんだ?」というあいまいなものが出てきます。そして、それをどう分類するかは、分解を行うその人の考え方によります。

 そういったものに行き当たったときは、思い込みで分類せずに、必ず「何のために分類しているのか?」という目的を意識してください。目的を意識しても、上手く分解できない時は、分類の種類が足りていないか、そもそもしなくてもいい分類かもしれません。

  • 目的に沿って分解しているか
  • その分解はそもそも必要か

 すべてのものがMECEに分解できるものではありませんし、そもそも全てを分解する必要はありません。無理に分解した結果、間違った結論になることもあります。必ず目的を意識して、何を重要視するのかを決めた上で分解することが大切です。

論理的な「問題解決」の方法

 問題を解決したい時、どこにその原因があるかどうか、そのままでは分かりにくいものです。その原因を解決すれば問題が解消されるのか、関係を確認しながら解決することになります。問題解決には、問題・要因・課題が矛盾なく繋がっているかを確認する力が欠かせません。この時、ロジカルシンキングを身につけていると、どのように役立つのでしょうか。

論理的でないと起こる「問題解決」の失敗

問題:ダイレクトメールを送っているけれど、返信率が低い

 例えば、ダイレクトメールの業務について、こんな問題があったとします。この問題を解決するには、何をすればいいでしょうか。

ダイレクトメールの送信数を上げれば、その分返信が来るんじゃないか?

問題解決のために行う課題:ダイレクトメールを送る件数を増やしてみる

 ダイレクトメールのレスポンス率が低いから送る件数を増やす。送る量を増やした分、レスポンス数は増えるかもしれません。しかし、レスポンス率は変わらないのではないでしょうか。これでは問題の解決にはなっていません。

 目の前の事象だけで判断してしまっては、根本的な原因を見逃してしまいます。「ダイレクトメールのレスポンス率が低いのは、なぜなのか」その根本的な原因を解決しなければ、ダイレクトメールのレスポンス率は低いままでしょう。

 問題解決で大切なのは「因果関係になっている問題と課題」を見つけて考えることです。解決したい問題と「因果関係」で繋がっている課題を見つけられれば、あとはその課題を行うだけです。

ポイントは「疑問を持つこと」

 「因果関係となっている問題を課題」を見つけるのに大切なのは「疑問を持つこと」です。

 ダイレクトメールへのレスポンスが悪いなら「なぜ悪いのだろう?」と考えてみましょう。「欲しい情報がないんだろうか」「そもそも開封されているのか?」なぜを問うだけでも、さまざまな疑問や課題が浮かぶかもしれません。

 この「疑問を持つこと」ができないと、「とりあえず送る件数を増やそう」といった、関係でないものを変えようとしてしまいます。それでは意味がありません。

 問題の解決策をただ考えてみても、意外と表層的な部分しか考えられず、根本的な原因に行き当たれないことがあります。改善すべき原因を見つけるには、問題に対して疑問を浮かべることが重要なのです。

「So What? / Why So?」で問題と課題を考える

 問題に対して疑問を持ち、「因果関係となっている問題と課題」を見つけるーーその時に使えるのが「So What? / Why So?」です。

 So What?(だから何?)
 Why So?(それはなぜ?)

 「So What? / Why So?」とは「だから何? / それはなぜ?」という意味です。問題と課題について「だから何?」「それはなぜ?」と問うことで、因果関係があるかどうかを確認していきます。

「問題:ダイレクトメールの返信率が低い」→Why So?→「課題:返信するとポイントアップ、と分かりやすく書く」→So What?→「問題:ダイレクトメールの返信率が低い」
「So What? / Why So?」の例
作成 株式会社デジタルボックス

 「だから何?」「それはなぜ?」が矛盾なく成り立つ時、問題と課題は「因果関係」で結ばれているーーつまり、その課題を解決すれば問題が解消されると言えます。

 一方、先ほどのダイレクトメールの例を図式化したのが次の画像です。これは「だから何?」「それはなぜ?」の関係が成り立っているとは言えません。

「問題:ダイレクトメールの返信率が低い」→Why So?→「課題:ダイレクトメールの送信件数を増やす」→So What?→「問題:ダイレクトメールの返信率が低い」
「So What? / Why So?」のNG例
作成 株式会社デジタルボックス

 「ダイレクトメールの返信数が少ない」「ダイレクトメールの送信数を増やす」この2つは、「So What? / Why So?」ではうまくつながりません。関係しているように見えるけれども、原因と結果の関係ではないのです。

 このように、「だから何?」「それはなぜ?」を問うことで、因果関係があるかどうかを考える「So What? / Why So?」は、ロジカルシンキングの基本の考え方です。

So What? / Why So?に考える方法

 「問題解決」のためには、問題を具体的にして、その要因を分析し、どうすれば解決できるのかという課題を明確にしなければなりません。

問題
「不良品数が多い」などの、解決するべき事象のこと
要因
「古い作業手順を行う人がいる」などの、問題の原因となっていること
課題
業務マニュアルを導入して、作業手順を一律化する」などの、問題を解決するために行うアクションのこと

 「So What? / Why So?」を使えば、この3つの要素をブレることなく明らかにできます。問題から要因を考え、要因から課題を考えることで、問題解決のための具体的な行動を明確にするのです。

「問題」に「Why So?」を問うと「要因」に、「要因」に「So What?」を問うと「問題」になる。「要因」に「Why So?」を問うと「課題」に、「課題」に「So What?」を問うと「要因」になる。
「So What? / Why So?」の図式
作成 株式会社デジタルボックス

 「So What? / Why So?」を行うには、この手順で進めていきましょう。

  1. 【問題】を「Why So?」で深堀りして、【要因】を出す
  2. 【要因】を「So What?」で考えて、【問題】と因果関係にあるか確認する
  3. 【要因】を解決するための【課題】を「Why So?」で考える
  4. 【課題】を「So What?」で考えて、【要因】と因果関係があるか確認する
  • 1.【問題】を「Why So?」で深堀りして、【要因】を出す
「問題」に「Why So?」を問うと「要因」が出る

 まずは、【問題】を深堀りします。なぜ【問題】が起きているのか、「Why So?」(それはなぜ?)と問いかけて、【要因】を思いつくかぎり書き出してみましょう。

問題:ダイレクトメールの返信率が低い

それは、なぜ?

要因:ダイレクトメールを読んでも、次のアクションが分かりにくいから

 【問題】に対して、【要因】は複数あるはずです。例えば「ダイレクトメールを送っているけれど、返信率が低い」という問題があった時、「ダイレクトメールを読んでも、次のアクションが分かりにくい」「文章が広告っぽい」というように、いくつかの【要因】が浮かぶでしょう。

  • 2.【要因】を「So What?」で考えて、【問題】と因果関係にあるか確認する
「要因」に「So What?」を問うと「問題」が出る。

 1で考えた【要因】に「So What?」(だから何?すると、どうなる?)と問います。この答えが【問題】になれば、この【要因】と【問題】は因果関係がある――つまり、この【要因】を改善すれば【問題】が改善されることになります。

要因:ダイレクトメールを読んでも、次のアクションが分かりにくい

だから何?(すると、どうなる?)

問題:ダイレクトメールの返信率が低い

 【要因】に「So What?」と問いかけても、答えが【問題】にならないことがあります。その場合は、【問題】と【要因】に因果関係がないーーつまり、その【要因】を改善しても【問題】が改善されないということになります。

  • 3.【要因】を解決するには?【課題】を「Why So?」で考える

 1で出した【要因】に「Why So?」(それはなぜ?)と問いかけて、どうすれば解決できるのかを考えます。【要因】が複数ある場合は、それぞれに対してできることを考えます。

要因:ダイレクトメールを読んでも、次のアクションが分かりにくい

それは、なぜ?

課題:「返信してね」の文字が目立たないから

 例えば「次のアクションが分かりにくい」には、「「返信してね」の文字を目立たせる」や「読んだ後の手順を書く」といったアクションが取れるでしょう。【要因】に対してできるアクションが【課題】です。この【課題】は、【要因】に対して1個~複数個出てきます。

  • 4.【課題】を「So What?」で考えて、【要因】と因果関係にあるか確認する
「課題」に「So What?」を問うと「要因」になる。

 3で考えた【課題】に「So What?」(だから何?)と問います。この答えが1と2で考えた【要因】であれば、この【課題】と【要因】は因果関係にある――つまり、この【課題】を行えば、【要因】が解決できるということになります。そして同時に、この【課題】で【問題】が改善することにもなります。

課題:ダイレクトメールの「返信してね」を目立たせよう

だから何?(すると、どうなる?)

要因:読んだ後にするアクションが分かりやすくなる

So What? / Why So?のポイント

 「So What? / Why So?」をうまく使うには、どんなポイントがあるのでしょうか。

  • MECEを意識する
「要因」や「課題」が複数出るときは、「要因」同士、「課題」同士がMECEになる
「So What? / Why So?」で意識する「MECE」の位置
作成 株式会社デジタルボックス

 問題から要因を、要因から課題を複数出す時、意識したいのがMECEです。MECEを意識すれば「漏れなく、ダブりなく」要因・課題を出すことができます。

 出した要因や課題に漏れやダブりがないか、横軸を「MECE」で確かめます。一方で、問題と課題にズレが無いか、縦軸を確かめるのが「So What? / Why So?」です。

  • 普段から疑問に思う訓練をする

 普段から疑問に思う訓練をしていないと、どういう時にどんな疑問を持てばいいのか分からないものです。

 「So What? / Why So?」に慣れるためにも、日ごろから「So What? / Why So?」と考えてみるクセを付けましょう。例えば、ニュースを見ながら「□□になった原因は何だろう?」「〇〇が流行っているのはなぜだろう?」と仮説を立てながら考えてみるのもいいですね。

So What? / Why So?の注意点

 問題があいまいでは「So What? / Why So?」ができません。具体的な問題が設定できないと、要因や課題に落とし込むことができないのです。問題が「場合によっては言える」「数値が低いこともある」のようにあいまいな場合は、さらなる深掘りをして、どういうときにそうなるのか具体的にしましょう。

「時間がかかることもある」
    ↓
「雨の日は時間がかかる」

 また、課題があいまいなときは「So What? / Why So?」がしっかりできていないサインです。出した課題が「担当者は頑張る」では、何をすればいいのかが分からず、何も改善しないでしょう。かならず課題は「どんな行動をするのか」を具体的に書くことが大切です。

 :担当者が頑張る
 :マニュアルに基づいて行動する

論理的な「アイデア発想」の方法

 アイデアを出したいとき、ただ漠然と考えていても、新しく斬新な考えは浮かびにくいものです。今までにはない視点から、目的を達成するアイデアを出すには、ひらめきを待つしかないのでしょうか。この時、役立つのがロジカルシンキングです。それでは、ロジカルシンキングを身につけていると、どのように役立つのでしょうか。

論理的でないと起こりがちな「アイデア出し」の失敗

テーマ:全く新しい鍋料理を考える

 例えば、あなたはお店の新規メニューについて考えることになったとします。「全く新しい」と言うからには、ただレシピをリニューアルをするだけでなく、場合によっては今までにない発想が求められます。

鍋料理ということは、温かいと美味しい具材を入れよう

冬に食べるから身体が暖まる味付けがいいだろう、辛い味付けが喜ばれるのでは

〈今までと似たアイデア〉
  全く新しい鍋料理のアイデア:辛くて暖まる!唐辛子たっぷり鍋

 鍋料理と言えば温かいもの。冬に食べるものだから、身体が暖まる味付けが喜ばれるだろう。そういった一般的なイメージの上にアイデアを出そうとしたのでは、新しいアイデアは生まれないでしょう。誰しも過去の経験や思い込みから考えてしまいがちです。しかしそれでは、以前のものを修正しただけになってしまうでしょう。

デザートで食べる鍋があってもいいんじゃないか?

冷たい鍋なんでどうだろうか?

〈全く新しいアイデア〉
  新しい鍋料理のアイデア:食事の〆に食べる!アイスクリーム鍋

 変化が激しい現代では、数年前の当たり前が通用しないということもよくあります。目的に合った新しい考えが必要になる場面が、以前とくらべると多くなっているのです。

ポイントは「質より量」そして「常識にとらわれない」

 アイデア出しに必要なものの1つ目は「アイデアを数多く出すこと」です。一旦、質のことは考えずに、数を多く出していくのです。アイデアを形にするまでには段階があります。アイデアを出す段階と、選定する段階です。出たアイデアから実行に移すものを選定するには、まず多くのアイデアを出さないとならないのです。

 アイデア出しに必要な2つ目は「常識にとらわれないこと」です。

 図書館は静かなもの、使われる施設は人通りの多い場所、そういった固定観念にとらわれていては、新しい発想はできません。世間一般的な常識だけでなく、自分の中にある固定概念を自覚して、それにとらわれずに考えることが重要なのです。

「ゼロベース思考」で常識にとらわれないで考える

 常識にとらわれないアイデアを数多く出す――そのときに重要な思考法が「ゼロベース思考」です。

 「ゼロベース思考」とは、過去の経験や常識、思い込み、価値観などの枠組みにとらわれずに考えることです。人は積み重ねてきた経験や知識から答えを得ようとしがちです。それをグッとこらえ、全く違う方法をゼロから考えるのです。そうすることで、今まであった何かを改良したものではなく、全く新しい発想を行います。

 例えば「鍋料理は温かいもの」「冬に食べる料理」といった固定概念があれば、「温かい料理」「冬に食べて身体を温める」という枠の中でしか、アイデアを考えられなくなってしまいます。

 固定概念の枠を取り除けば、より広い視野で物事を考えられるようになります。それによって「デザートで食べる鍋」「冷たい鍋」といった奇抜な発想ができるようになるのです。

ゼロベース思考の方法

 それでは、ゼロベース思考はどのように行えばよいのでしょうか。

  • これまでの慣習や常識を疑ってみる
  • 目的を確認して、ゴールから考えてみる
  • 別の視点から考えてみる

・これまでの慣習や常識を疑う

 テーマについて考える前に、まずは自分の中にある慣習や常識を疑ってみましょう。人は経験や知識に基づいて考えたくなるものです。そういったものは自由な発想を邪魔します。

 鍋料理の例で言えば「鍋料理は温かいもの」「冬に食べる料理」がこれにあたります。これらを紙に書き出してみて、無意識の内に出来上がった先入観を自覚しましょう。

・目的を確認して、ゴールから考えてみる

  これまでの慣習や常識を自覚したら、もう一度テーマについてよく考えてみましょう。

テーマ:人手不足を解消する

 例えば、上のテーマを解決するには「採用をして人手を増やせばいい」といった施策が考えられます。しかしテーマの本質はそこにあるでしょうか。最終的なゴールは「人手不足によってお客様を待たせていることを解消する」かもしれません。

 「現状をどう変えたいのか」「よりよくするにはどうしたらいいのか?」目的や論点を意識することが大切です。そうすれば「人手不足を解消するアイデア」が必要なのではなく、「人手が少なくてもお客さまを待たせないようにするアイデアが必要」と、本当に必要なアイデアの切り口が浮かんできます。

別の視点から考えてみる

 アイデアを考えていると、自分の視点で考えていきがちです。「自社の強みはこれだから、ここをもっとプッシュしていこう」といった自分都合の考え方ではなく「顧客は本当にこれを求めているのか?」「顧客が求めているのは、もっと別のことではないか?」と、別の視点で考えてみましょう。

 ビジネスであれば、顧客の目線や社員の目線で考えることは必須です。それにより、自分の立場で考えるだけでは浮かばなかった発想ができるようになり、アイデアの幅を広げることができます。

ゼロベース思考のポイント

 「ゼロベース思考」をうまく使うには、どのようなポイントがあるのでしょうか。

・「できない」と思う理由を意識する

 自分の中にある慣習や常識を自覚することが難しいという人もいるかもしれません。そういう人は、まずはテーマについてできそうなことを考えてみてください。中には、「難しそうだ」「できないかもしれない」と感じることもあるかもしれません。この「できない」と思う理由を書き出してみましょう。これが自分の中にある慣習や常識です。

 この「できない」と思うことを取り除き、フラットに考えるのが「ゼロベース思考」の一歩です。「できない」を無くしたらどうなるのか、思いついたままに書いて行きましょう。

・日頃から疑問に思う練習をする

 ゼロから考えることは、慣れていないと意外と難しいものです。「ゼロベース思考」を行うには、当たり前のことを当たり前とせず、日ごろから疑問に思う練習が大切です。

 「なぜこの商品は価格が高いものしかないのだろう」「この指示が来たのは何故だろう」当たり前のことに対して、シンプルな疑問を投げかける習慣を意識して持ってみましょう。そうすると、自分が当たり前と思っていることは、本当に当たり前なのか?先入観を持ってないか?を意識して考えられるようになります。

ゼロベース思考の注意点

 「ゼロベース思考」を行う時に気を付けたいのは、次の2点です。

・現実を持ち込まない
・出たアイデアを批判しない

 まず、「ゼロベース思考」を行う時は「でも、これは無理だからな」と思わないことが大切です。できる・できないを考えるのは、実行に移すアイデアを選定する時です。アイデアを出すタイミングでは、取捨選択をする必要はありません。現実を持ち込まず、自由に考えるように心がけましょう。

 ときには、複数人で「ゼロベース思考」を行ってアイデアを出すこともあるでしょう。その際は必ず「出たアイデアに対して批判しない」ようにします。アイデア出しは、自由な発想が大切です。一度批判をしてしまうと「〇〇について気を付けて考えなくては」といった意識が生まれ、自由な発想を妨げてしまうからです。

論理的な「提案」の方法

 何かを提案する時や報告する時、相手に必要とされない内容であれば意味がありません。また、内容は良くても伝え方が悪くて、相手に納得してもらえないこともあります。提案では必ず相手にとって必要なことは何かを考えて実行しなければならないのです。この時、ロジカルシンキングを身につけていると、どのように役立つのでしょうか。

論理的でないと起こる「提案」の失敗

 例えば、自社の事業について、次のように提案したとします。

提案内容:自社はドローン教室事業に参入するべきです
根拠:ドローンが流行っているので、人が来るはずです

 提案したい内容は伝わったかもしれません。しかし、これでは当たり前ですが「検討してみよう」とはならないでしょう。しっかりとした根拠がなければ、どういう考えや思いで提案したのかまでは伝わりません。そうなれば、主張の説得力が欠け、相手を説得することはできません。

ポイントは「客観的に裏付けられた根拠」

 提案に必要なのは「客観的に裏付けられた根拠」です。

 「なぜそれを提案するのか」という根拠は必要です。しかし、その根拠が「流行っている」というようなあいまいなものだったり、提案者が感じた主観的なものだったりしては、提案というよりただの意見になってしまうでしょう。

 数字や事例などの具体的なデータが、複数の視点から検討された上で提案しているのだと分かれば、相手も「この提案は正しい」「だから実行した方がいいんだ」と思うことができます。相手を納得させる提案には、客観的で矛盾なく裏付けられた根拠が必要なのです。

「ピラミッドストラクチャー」で結論と根拠を考える

 説得力を持って提案する――そのために使えるのが「ピラミッドストラクチャー」です。

「結論」の下に「理由」の枠が2つ並んでいる
「ピラミッドストラクチャー」の例
作成 株式会社デジタルボックス

 「ピラミッドストラクチャー」は「ピラミッド構造」とも呼ばれます。その名前のとおり、「結論」と「根拠」をピラミッド状につないで考える、ロジカルシンキングの思考法の1つです。

 1つの「結論」を頂点に置き、そこに複数の「根拠」を結びつけます。説得力を出せる「根拠」は何か、「結論」と「根拠」が矛盾なく繋がっているかを確認し、「客観的に裏付けられた根拠」を考えていきます。

 なお、似たフレームワークに〈ロジックツリー〉があります。

「ECサイトの売上数が減っている」→Why?→「客数が減っている」「客単価が減っている」→Why?→「ライバル店がEC店舗を立ち上げた」「クーポンを利用する人が増えた」
〈ロジックツリー〉の例
作成 株式会社デジタルボックス

 〈ロジックツリー〉は、左端から「Why?」や「How?」といった疑問詞で分解しながら、問題を整理して全体像をつかむフレームワークです。ピラミッドストラクチャーと似たピラミッド状をしていますが、こちらは問題の原因追及や問題解決のアイデア出しなどで使うものです。左端のテーマを細かく分解したものが、右側に連なっています。

ピラミッドストラクチャーの方法

 「ピラミッドストラクチャー」を行うには、この手順で進めていきましょう。

  1. テーマに対して結論を決める
  2. 結論を言うための理由を考える
  3. 理由を導くために必要な根拠を集める
  4. 「So What? / Why So?」で矛盾がないか確かめる
  • 1. テーマに対して結論を決める
テーマ「ドローン教室事業に参入すべきか?」 結論「ドローン教室事業に参入すべき」

 まずは、どういった主張を行うのかを決めていきます。例えば「ドローン教室事業に参入するべきか」というテーマがあった時、「ドローン教室事業に参入すべきだ」「ドローン教室事業に参入すべきでない」の2つの主張が行えるでしょう。どちらの結論にするのかを考えます。

 なお、ここで「ドローンの貸し出しをすべき」という結論を出してしまっては、テーマと噛み合いません。極端な例に思えるかもしれませんが、良い結論にすることに一生懸命になりすぎて、繋がらない結論を立ててしまっていることがあります。主張がテーマから外れていると、説得できる提案になりません。そうならないように、必ずテーマと直結する主張を考えるよう意識しましょう。

  • 2. 結論を言うための理由を考える
テーマ「ドローン教室事業に参入すべきか?」 結論「ドローン教室事業に参入すべき」 理由「市場の成長率は高い」「有力な競合はいない」「当社の強みを活用できる」 結論の下に理由が3つ並んでいる

 1で決めた「結論」を言うために、どのようなことが言えればいいのでしょうか?「結論」を決めたら、次は「理由」を考えます。例えば、上の例では、市場・競合・自社の切り口で考えています。

・市場は成長率が高いか?
・有力な競合がいないか?
・当社の強みを活用できるか?

 もし「理由」が1つしかない場合は、漏れがある可能性があります。漏れや重複がないように、〈3C分析〉などのフレームワークを使いながら「理由」を考えてみましょう。

  • 3. 理由を導くために必要な根拠を集める

 2の「理由」を導くために、どのような情報が必要でしょうか。例えば、「市場の成長率は高いか?」に対しては、市場データの収集が必要になります。同様に「有力な競合がいないか?」「当社の強みを活用できるか?」に対して、競合企業や自社の強みやリソースといった情報が必要でしょう。

 2の「理由」を言うために必要な情報は何かを洗い出し、「根拠」になり得る客観的なデータを集めます。

  • 4.「So What? / Why So?」で矛盾がないか確かめる

 「ピラミッドストラクチャー」を作ったら、「結論」「理由」「根拠」が矛盾なく繋がっているかを確かめなくてはなりません。その時に必要な観点の1つが「So What? / Why So?」です。

 「結論」「理由」「根拠」が矛盾なく結びつくには、「だから何?」「それはなぜ?」が成立していなければなりません。それを確かめるために、「So What?(だから何)」「Why So?(それはなぜ?)」の観点から、ピラミッドストラクチャーを確認してみましょう。

 まず、ピラミッドストラクチャーの下から上に「So What?(だから何)」と問いかけてみましょう。問いかけた時、違和感があるところは、うまく繋がっていない箇所になります。そういったものは「結論」の「理由」や「理由」の「根拠」に成り得ないものです。

So What?(だから何?)
「理由」→「結論」
「根拠」→「理由」

結論:「ドローン教室事業に参入すべきです」

 ↑ So What?(だから何?)

理由:「当社の強みを活用できる」

 ↑ So What?(だから何?)

根拠:「映像制作事業で蓄積してきたノウハウがあるから」

 また、ピラミッドストラクチャーの上から下に「Why So?(それはなぜ?)」を問いかけます。「So What?(だから何)」と「Why So?(それはなぜ?)」の両方が成立していれば、「結論」「理由」「根拠」が矛盾なく繋がっていることになります。

Why So?(それはなぜ?)
「結論」→「理由」
「理由」→「根拠」

結論:「ドローン教室事業に参入すべきです」

 ↓ Why So?(それはなぜ?)

理由:「当社の強みを活用できる」

 ↓ Why So?(それはなぜ?)

根拠:「映像制作事業で蓄積してきたノウハウがあるから」

ピラミッドストラクチャーのポイント

 「ピラミッドストラクチャー」をうまく使うには、どのようなポイントを押さえればよいのでしょうか。

MECEになっているか意識する

 「ピラミッドストラクチャー」を作るときは、「理由」や「根拠」が「MECE」になっているかどうかを意識しましょう。

 もし、「ピラミッドストラクチャー」の中に重複や漏れがあると、どうなるでしょうか。考えるべき要素が漏れていれば、提案は不十分だと思われてしまうでしょう。もし重複があれば、提案する時に何度も同じ話が出てきてしまうでしょう。そういった不十分やムダを無くすためにも、「MECE」を意識するようにしましょう。

・反論の視点からも考えてみる

 「ピラミッドストラクチャー」を使うような時、テーマに対して「結論」が1種類ということはないはずです。おそらく意見が分かれていて、それぞれの意見を戦わせることもあるでしょう。

 提案でスムーズに説得させることを目指すなら、あらかじめ反論意見からも考えておくと良いでしょう。つまり、反対意見をピラミッドストラクチャーで考えておくのです。そうすれば、出される反論意見も予測が立ちます。その反対意見に対する意見を考えておけば、自分の主張をより強固にすることも、説得力を増すこともできるでしょう。

 反論の視点から考えておけば、そのような準備もできるのです。

ピラミッドストラクチャーの注意点

 もしかすると「え?先に「結論」を決めちゃうの?」と違和感を覚えた人もいるかもしれません。全ての情報を収集してから、徹底的に分析をしてから「結論」を考えるべきだという人もいるかもしれません。

 ただ、それではなかなか「結論」を出すことができません。なぜならば、どの範囲で情報を収集すればいいかが分からないからです。

 そうなれば広い範囲でまんべんなく情報収集をすることになり、いたずらに時間や手間がかかってしまうでしょう。情報が出そろった頃には、状況が大きく変わっている可能性も十分にあり得ます。それではいつまで経っても「結論」を決めることができないでしょう。

 むしろ、先に仮設を立てて実際にやってみる、間違いがわかったらすぐに軌道修正する、という方がスピーディーに検証することができるのです。「ピラミッドストラクチャー」の考え方は、こういった態度の上に成り立っています。なお、こういった思考態度のことを「仮説思考」といいます。

ロジカルシンキングの身につけ方~4つの論理的思考法を図付きで解説

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