履歴書や職務経歴書などの応募書類が用意できたら企業に送りましょう。郵送の場合は、送付状を添える必要があります。送付状や封筒のあて名書きにも書き方があり、それに沿っていなければマナーのない人と見なされてしまいます。この記事では、転職活動時の送付状および封書の書き方といった、応募書類を郵送・手渡しする時のポイントを紹介します。
【ポイントを押さえて送付状を書くメリット】
〇 採用担当者にマナーがある人だと思ってもらえる
〇 送った資料を見落とされることを防止する
〇 採用担当者に意欲や誠意をより伝えることができる
送付に必要なもの
そもそもどのように書類をまとめて送ればよいのでしょうか。まずは、目指すべき送付のありかたをを確認しましょう。
送付状とはなにか
送付状(添え状・カバーレター)とは「誰から誰に」「何のために」「何をどのくらい」送ったのかを伝える書類です。同時に、相手への挨拶も込められており、これがなければ挨拶なしに書類を送りつけた状態とも言えます。書類を送る時には、ビジネスマナーとしてきちんと添えたいものです。
ポイントは、形式に沿った「礼儀正しさ」
送付状も封筒の宛名書きも、形式がある程度決まっています。その形式から外れたものを送ってしまえば「常識のない人なのだな」と判断されてしまうでしょう。特に、応募書類の送付は、企業とのファーストコンタクトの場合もあります。採用担当者に対して、用意した履歴書や職務経歴書をマイナスの印象を持たれずに読んでもらうためにも、「形式に沿った」「礼儀正しい」ものに仕上げるよう気を付けましょう。
応募資料の送付の準備方法
それでは、送付状や封筒の宛名はどのように書いていけば良いのでしょうか。具体例を見ながら確認していきましょう。
「送付状」の書き方と具体例
一般的に、送付状はパソコンで作られます。その場合は、横書きでA4書類1枚に収めます。手書きで作成しても構いませんが、その場合には黒ボールペンで記入し、鉛筆やフリクションペンなど、消えてしまう筆記用具は使いません。なお、ミスした場合は修正液や二重線などで修正せずに書き直すようにします。そのため手書きよりもパソコンで作成した方が、手間も少なく短時間で仕上げられるでしょう。
送付状の基本的な構成は次のとおりです。「主文」の「応募の経緯」「自己PR」を書かない人もいるが、アピールになる部分ではあります。もしも送付する書類が企業へのファーストコンタクトになるのであれば、どういった人物なのかという自己紹介としてあった方が相手にも理解されやすいでしょう。
1. 送付情報
・日付
企業へ提出する日付を記載します。古い日付になっていると、使いまわししていると思われて印象は悪くなるので注意しましょう。また、記入日を書かないように気を付けます。なお、西暦・和暦のどちらを使うかについては、履歴書や職務経歴書と統一します。
・郵送する場合:ポストへ投函する日
・持参する場合:企業へ訪問する日
・メールで送付する場合:メールで送信する日
・宛名
宛名は応募企業名、採用担当者の所属・名前を省略せずに書きます。採用担当者の所属や名前が分からない場合は、空欄にせず「採用担当者様」や「人事部御中」と書きましょう。
・採用担当者宛ての場合:「様」を付ける
・部署宛ての場合:「御中」を付ける
・差出人
差出人の情報には、次の項目を記入します。どの項目も省略せず正しい情報を書いていきます。電話番号やメールアドレスに連絡が入る可能性もあるため、日中に連絡がつきやすいものを書くようにしましょう。
・郵便番号
・住所
・名前
・電話番号
・メールアドレス
・送付状タイトル
送付状のタイトルは、行の中心に配置し、太字・フォントも大きめにして目立たせます。この送付状は、封筒から書類を出した時に最初に目にするものです。採用担当者が一目見ただけで、何に関する送付なのか分かるように、簡潔なものにしましょう。複数の職種を応募している可能性もあるため、タイトルに何の職に対する応募なのかが分かるように書きます。
・〇〇職の応募書類の送付につきまして
・〇〇職への応募書類の件
2. 前文
・頭語
頭語とは、手紙の「こんにちは」にあたる言葉で、「さようなら」にあたる結語とセットで使います。どの頭語を使うかによって、結語に来る言葉が決まります。さまざまな種類がありますが、転職・採用の応募書類を送る場合には、次を使いましょう。
・頭語:拝啓
・結語:敬具
・あいさつ文
頭語の後には、1文字分のスペースを空けて、「時候のあいさつ」と「発展を喜ぶ言葉」を書きます。これらは一般的な手紙の形式なので、省略をせずに書いていきます。
「時候のあいさつ」とは季節を表す言葉であり、手紙を出す季節によって使う言葉が変わってきます。下記の例を参考に、送付状を書く季節に合わせて選んでください。
1月 |
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厳寒の候(1月全般)、初春の候(1月上旬)、寒風の候(1月下旬) |
2月 |
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向春の候(2月全般)、春寒の候(2月上旬)、雨水の候(2月下旬) |
3月 |
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早春の候(3月全般)、浅春の候(3月上旬)、春風の候(3月下旬) |
4月 |
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陽春の候(4月全般)、桜端の候(4月上旬)、惜春の候(4月下旬) |
5月 |
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薫風の候(5月全般)、軽暑の候(5月上旬)、向暑の候(5月下旬) |
6月 |
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新緑の候(6月全般)、薄暑の候(6月上旬)、黄梅の候(6月下旬) |
7月 |
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盛夏の候(7月全般)、小暑の候(7月上旬)、酷暑の候(7月下旬) |
8月 |
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盛暑の候(8月上旬)、残暑の候(8月中旬)、秋暑の候(8月下旬) |
9月 |
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野分の候(9月全般)、新秋の候(9月上旬)、秋晴の候(9月下旬) |
10月 |
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清秋の候(10月全般)、秋冷の候(10月上旬)、紅葉の候(10月下旬) |
11月 |
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深秋の候(11月全般)、夜寒の候(11月上旬)、初雪の候(11月下旬) |
12月 |
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師走の候(12月全般)、短日の候(12月上旬)、歳末の候(12月下旬) |
「発展を喜ぶ言葉」もさまざまな種類がありますが、転職・採用の応募書類を送る場合には、下記のものから選んで使いましょう。
・貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます
・貴社におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます
3. 主文
・求人に応募する旨
どういう経緯で求人に応募しているのかを説明します。こことで具体的に書くことは次の3点です。
・募集を見た媒体名
・応募する職種名
・経験者採用の応募であること
・自己PR
他の応募者との差が出やすい部分です。ただし、送付状とはあくまで誰が何を送っているかを伝えるものです。また、志望動機・自己PRは履歴書や職務経歴書にも同様のことを書いているはずです。そのため、ここでは端的に3~4行程度にまとめ、長々と書かないようにします。次の2点を、1~2行ずつ順に書きます。
・自己紹介:どんな経験を重ねてきたのか、何を思って転職・経験者採用に応募したのか
・意気込み:応募先の業務内容や事業内容にからめる
4. 末文
・締め
書類選考や面接を希望していることを伝えます。最後に「何卒よろしくお願い申し上げます。」の一言を添えて締めます。
・結語
手紙を書き終わった後には、頭語とセットで使う結語を書きます。今回の場合、頭語に「拝啓」と書いているので、ここでは「敬具」と書きます。位置は必ず右寄せにします。
5. 送付内容
・記書き
「記書き」とは、「記」と書いた下に、伝えることを箇条書きにする書式。ここでは、末文の下に一行開けて「記」の文字を書きます。「記」の位置は行の中心に据えます。「記」の下にも行間を1行開け、その下に必要事項(送付内容)を書きます。全て書いたら、最終行に「以上」と右寄せで書きます。
・送付内容
送付内容は箇条書きで書きます。資料の種類だけでなく、種類ごとに何部入っているのかも忘れずに添えましょう。職務経歴書は人によって枚数が異なるため、何枚入っているのかについても添えると丁寧です。
「封筒」の書き方
送付状を書き終えたら、送付の準備に取り掛かりましょう。その時に気を付けたいのが、封筒の大きさと宛名書きです。
封筒の種類
応募資料を送る時に使う封筒は、白または薄茶色のものを用意しましょう。サイズは、角型A4号(角A4)、角型2号(角2)のものが理想です。
履歴書を購入したときに、長形3型の封筒が付属していることもありますが、これを使用することはあまりオススメできません。書類を三つ折りにすれば封筒に入りますが、枚数が多いとごわつく上、折れて読みにくくなることもあります。二つ折りで入れられる角型A4号・角型2号であれば、クリアファイルを同封することで、雨に濡れて読めなくなる心配も防げます。できる限り角型A4号・角型2号で送るようにしましょう。
なお、封筒には黒の油性ペンで書きます。水性インクのものは水に弱く、雨などでにじんでしまうこともあります。そうならないように必ず油性を選びましょう。
宛名書きの具体例
・住所
郵送する場合のみ記入します(手渡しの時には不要)。都道府県から、正確に記入していきます。
・宛名
社名や名前などを省略せず、正確に書いていきます。採用担当者名が分かっている場合は名前を書きます。分からない場合は「採用担当者様」「〇〇部 採用担当者様」と書くか、「〇〇部御中」と採用担当部署に宛てましょう。
なお、人に対して送る場合は「様」を付け、部署や企業に送る場合は「御中」を付けます。「御中様」は誤りです。
・採用担当者宛ての場合:「様」を付ける
・部署宛ての場合:「御中」を付ける
・注意書き
入っている書類が重要なものであると示すために、赤の油性ペンで「応募書類在中」「〇〇職応募書類在中」と書き、文字の周りを囲みます。採用担当者の手元に届くまでには、社内外の多くの人の手を渡ります。途中で粗末に扱われて、ボロボロの状態で届いてしまわないためにも書いておくのです。
・日付
郵送の場合は発送日を、手渡しの場合は渡す日付を書きます。記入する日ではないので、間違えないように気を付けましょう。
・署名
誰から送られた書類なのかが分かるように、差出人の住所と氏名を省略せずに書きます。
応募書類を送る方法
送付状と宛名を書き終えたら、送付の準備に取り掛かりましょう。郵送する場合と、手渡しの場合では、準備内容に違いがあります。自分がどちらで応募書類を渡すのかを意識して、確認してください。
用意する物
応募書類を送るには、次のものを準備します。
・応募書類
・クリアファイル
・封筒
・送付状(手渡しの場合は不要)
・切手(手渡しの場合は不要)
なお、履歴書・職務経歴書などの応募書類は、送る前に印刷などしてコピーを手元に置いておくのがおすすめです。採用担当者は応募書類に基づいて選考・面接するため、面接対策に使えます。
封筒への入れ方
応募資料は、上の順番で重ねてクリアファイルに入れます。そうすることで、雨に濡れたり折曲がったりすることから防げます。
郵送方法
郵送の場合、封筒に送る書類を全て入れたら、糊で封をしたあとで「〆印」をつけます。誤って「×印」を書いてしまわないよう気を付けましょう。
角形A4号・角形2号の封筒は「定形外郵便物(規格内)」に分類されます。履歴書・職務経歴書・送付状・クリアファイル・封筒の全てを足した重さは、だいたい70~80gです。A4のコピー用紙1枚が4~5gなので、140円切手を貼ればちょうどいいでしょう。他にも同封物があり、重さが分からない場合は、郵便局の窓口で量ってもらいましょう。
なお、2022年現在の「定形外郵便物(規格内)」の郵送料は、次の通りです。
50g以内 |
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送料:120円 |
100g以内 |
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送料:140円 |
150g以内 |
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送料:210円 |
250g以内 |
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送料:250円 |
500g以内 |
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送料:390円 |
1kg以内 |
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送料:580円 |
郵送時に気を付けるべきことは、いくつかあるので確認しておきましょう。
・期限内に届くように
締切に間に合わなければ、どんなに良い応募資料を送ったとしてもマイナス評価です。
必ず期限内に届くように投函しましょう。
・書留では送らない
「書留」は基本的に対面受け取りのため、受け取る側に負担をかけてしまいます。
転職時の応募書類を郵送する時には使わないようにしましょう。
・メール便で送らない
「履歴書」は「信書」に分類され、法律上、メール便で送ることができません。
非常識と思われるだけでなく法律違反にもなるため、日本郵便を利用して送るようにしましょう。
手渡しの場合
手渡しの場合は、郵送と以下が違います。
・送付状は不要
・切手も不要
・宛先住所も不要
・封をしない
・封筒に宛名と署名を書いておく
封筒には「宛名」「注意書き」「日付」「署名」のみ記入しておけば構いません。
受付で渡すときは、封筒に入れたまま渡します。採用担当者や面接官に直接手渡すときは、封筒から出してクリアファイルに入れたまま渡します。その時にもたつかないためにも封はせず、「〆印」も書きません。
送付状・封筒記入のポイント
見てきたように、送付状や封筒の宛名は、型に沿って礼儀正しく書いていくことが大切です。ここでは役立つ文章の書き方と気を付けるべきポイントを紹介します。
礼儀正しい文章にするライティングテクニック
資料を礼儀正しくするには、形式に沿う以外にも方法があります。送付状を書く上で、次の書き方に注意するのもひとつの方法です。
敬語を過剰に使わない
× ぜひご検討いただき、面接の機会をいただきますようお願いいたします。
〇 ぜひご検討のうえ、面接の機会をいただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
「、」を多く使いすぎず、「。」で文を区切る
× 私は5年間にわたり、不動産営業の職務に従事し、在職中には、宅地建物取引士と、マンション管理士の資格を取得しています。
〇 私は5年間にわたり、不動産営業の職務に従事してまいりました。在職中には、宅地建物取引士とマンション管理士の資格を取得しています。
接続詞は必要な時にのみ使う
× 私はアパレルブランドの販売職に従事してまいりました。さらに、色彩検定だけでなく繊維製品品質管理士の資格を取得し、それによって売上の拡大と顧客の獲得に務めています。
〇 私はアパレルブランドの販売職に従事してまいりました。色彩検定や繊維製品品質管理士の資格を取得し、売上の拡大と顧客の獲得に務めています。
見直しチェックリスト
- 誤字脱字はないか
- 日付は古くないか
- 面接準備のために応募書類のコピーを取ったか、もしくはデータを保存しているか
- 社名などは省略せず正式名称で書いているか
- 西暦、和暦は統一されているか
- 送付状の文体は「です・ます調」か
- 漢数字とアラビア数字のどちらかに統一されているか
- 手書きの場合は黒ボールペンで書かれているか
- 間違いを修正液や二重線で訂正していないか
- 楷書で丁寧に書かれているか
- 送付内容や部数に誤りはないか
- 送付物はクリアファイルに入れているか
- 送付物は「送付状」「履歴書」「職務経歴書」の順で入っているか
- 時候の挨拶の季節は合っているか
- 記書き(要説明)がされているか
- 頭語と結語があるか
- 部署宛ての場合は「御中」、担当者宛ての場合は「様」と宛名に記入しているか
- 「応募書類在中」と記入があるか
- 郵送する場合、切手の金額は合っているか
- 手渡しの場合、封筒に宛名と署名が書かれているか
【好印象な送付状にするポイント】
〇 マナーや一般常識に沿ったものにする
〇 採用選考に関わらないからと気を抜かず、時間に余裕をもって作成する
〇 作成した後は見直しをして、誤字脱字がないようにチェックする