求職者が求める情報とは?求人票・面接を魅力的にするアイデア

求職者が求める情報とは(求職者目線で考える採用Part1)アイキャッチ

 「応募が集まらず、採用が思うようにいかない」「採用できたけどすぐに退職してしまった。何が悪かったのだろう」人材の採用や定着に悩む中小企業は多い。求職者に応募してもらうためには、面接を経て内定を受諾してもらうためには、入社して早期退職とならないためには、何を行えばいいのであろうか。今一度、求職者目線で考え、採用のために企業が改善できることは何かを探っていく。

目次

求職者に発信する情報

 株式会社マイナビによると、利用者の多い求人媒体は転職サイトであり、その次に転職エージェントやハローワークが続く。依然として、求職者が求人票を探して企業がマッチするかを確認した上で応募、面接を経て入社する流れが一般的である。

株式会社マイナビ「転職動向調査2020年版(2019年)」

https://www.mynavi.jp/wp-content/uploads/2020/04/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%93-%E8%BB%A2%E8%81%B7%E5%8B%95%E5%90%91%E8%AA%BF%E6%9F%BB2020%E5%B9%B4%E7%89%88_200422.pdf

 しかし一方で、ソーシャルリクルーティングやミートアップ、ダイレクトリクルーティングなどを行う企業も増えてきている。これらは求人票からでは知りえない情報を発信することで、自社がどのような企業かを知ってもらう取り組みである。従来の求人媒体・採用方法では伝えきれていない情報があったという発見と反省に基づくものであろう。

発信され始めた「職場情報」

 例えば、ソーシャルリクルーティングのメリットとして挙げられるのが「会社の雰囲気を伝えられる」ことである。堅苦しいイメージのある採用であるが、SNSを通して情報を発信することで、どのような人がどのように働いているのかという生き生きとした職場の情報が伝えられる。ミートアップも、カジュアルなスタイルで、会社の直接的な雰囲気や価値観、働き方といった「会社そのものが伝えられる」ことがメリットとされている。

 従来の求人では、給与や待遇、業務内容がしっかり書かれていることが重要視されていた。もちろん、それらは明確に書かれなくてはならない項目である。しかし、働くということは企業情報や業務内容だけで判断できるものではない。「どのような場所で働くのか」「どんな人達と働くのか」「どんな理念を持つ会社なのか」「どんな文化が根付いているのか」という「職場情報」を伝えることが求められているのである。

求人票で「職場情報」を伝えるには

 「職場情報」を求人票や面接などで伝えるにはどうすれば良いであろうか。それを考える前に、まずは書かなくてはならない項目について確認しておこう。職業安定法が定める、求職者に伝えるべき情報は次のとおりである。

・業務内容
・契約期間
・試用期間
・就業場所
・労働時間(休日)
・賃金
・加入保険
・募集者の氏名又は名称
・雇用形態

厚生労働省・都道府県労働局「労働者を募集する企業の皆様へ」

 これらは過不足なく間違いなく書かなくてはならない。しかし、これだけでは「職場情報」が伝えられていなかったことは確認したとおりである。これらの項目の他に、次の項目を入れ込むと「職場情報」が分かりやすくなり、より魅力的な求人票となるのではないであろうか。

  • 企業の理念
  • 社内の制度
  • キャリアパス
  • 業務のやりがい
  • 職場の雰囲気
  • 求人の背景

 例えば、「職場の雰囲気」に「風通しの良い職場です」と書いてあるところは多い。しかし、それだけでは根拠に欠け、そこで働く人にとって本当に風通しがいい職場なのかは分からない。「毎週1on1を行っている」「フランクな意見交換の場を月1で設けている」など、根拠となる制度や仕組みについて触れることで、「職場情報」として伝えることができるであろう。

伝え方の注意点

転職資料作成する人

 求人票の限られた文字数の中で、上記の項目を分かりやすく伝えるためにはどうすれば良いのであろうか。そのためには次の項目に注意すると良い。

具体的に書く

 「在庫の管理」と書いてあるだけでは、どのような業務を行うのかを想像することは難しい。他社でも募集されるような業務であればなおさらである。「破損や劣化などにより、部品の取り換えが必要になることがあります。このような事態にすぐ対応できるよう、各種部品の在庫を自社システムを用いて管理します。」のように、何を管理するのか、どういったツールを使うのか、誰に何をするのかなどを書くと、他社とは違う自社の業務を説明できるであろう。細かい業務内容と全体的な業務の繋がりを書くことが大切である。

分かるように書く

 求職者は多数の求人を目にする。もし求人票を読んでもよく分からないのでは、応募しようとは思わないであろう。とくに、未経験可としている場合、業務内容を想像することは難しく、専門用語があれば理解できずに応募を見送ってしまうであろう。専門用語や社内だけで使われる用語が混じっていないかを確認することが大切である。

コンセプトを決める

 アピールポイントがたくさんある企業の場合、その全てを求人票に詰め込みたくなるかもしれない。しかし、全て詰め込むと訴求点がぼやけてしまう。効果的な求人にするためには、ターゲットが気になる点を考え、アピールする点を絞ることも大切である。

書いてはいけないことは書かない

 当たり前のことではあるが、書いてはならない項目を表記した求人票が出てしまっているのも事実である。下記は書いてはならない項目である。念のため確認をした上で掲示することが望ましい。

書いてはならないこと具体例
性によって差別する表現「ウェイター」「女性秘書」「募集人数2人(男性1人、女性1人)」
年齢によって差別する表現「20歳~35歳」「20代の方は適正検査実施」
特定の人を優遇・差別する表現 「〇〇県にお住まいの方」
労働基準法に違反すること最低賃金を下回っている、法定労働時間を越えている
実態と異なること有給消化できていない人がいるにも関わらず「有給消化100%」
求人票に書いてはならないことの例
作成 株式会社デジタルボックス

タイトルも重要な情報

 上記のことは求人票のタイトルについても言えることである。弊社は、求人サイトに「未経験・ブランク可」の求人を出したが、当初は応募が少なかった。その時のタイトルが下記の1である。

1.「リサーチャー/職種未経験・ブランクOK/駅徒歩1分/土日祝日休み」
2.「マニュアル作成スタッフ/職種未経験・ブランクOK/駅徒歩1分/前職給与保証」

 しかし、どういった業務なのかをイメージできるよう、具体的なタイトル(上記の2)に変えたところ、多くの応募に結び付いた。タイトルは求人票をクリックしてもらう上で重要な部分であるが、字数制限などのために、開かないと詳細が分からない形式になっているものもある。求職者がこれを見てどう思うかを考えながら書くことが大切である。

面接で伝える「職場情報」と「入社後のイメージ」

 求人票はあくまでも文字・画像の情報に過ぎない。実際にそこで働く人と話すことのできる面接は、求職者にとっても得られる情報の多い重要な場である。ここでも「職場情報」は重要であろう。ただ、面接に関するアンケートを見ると、他にも重要な項目が発見できる。

面接は入社後をイメージする場所

 株式会社リクルートキャリアによると、転職先を選ぶ際に決め手となった上位3項目は「経験やスキルが活かせる」(66.3%)、「やりがいのある仕事に携われる」(57.6%)、「新しいキャリアを身につけられる、成長が期待できる」(46.2%)であるという。

株式会社リクルートキャリア「「キャリアや成⻑への期待」を重視する傾向に」

https://www.recruit.co.jp/newsroom/recruitcareer/news/20171122.pdf

 ここから分かることは、入社後にどのように役立てるのか、そして求職者自身がどうなるのか、という点を求職者が重要視しているということである。企業のアピールだけでなく、求職者の目線からみて、企業とともにどのように進化していけるのかを情報として求めていると言える。

面接を受ける人

 また、「ここなら進化できるかもしれない」と思って応募したにも関わらず、面接によって「入社しなくない」と思う人もいることは事実である。エン・ジャパン株式会社によると、面接によって「入社したい」と思ったことのある人は71.7%、「入社したくない」と思ったことのある人は85.2%にのぼるという。


 「入社したくない」と思った理由を見てみると、「面接官の不快な態度・言動」(74.8%)や「求人情報と面接の話が違った」(34.0%)など、根本的に改善しなくてはならないものも多い。しかしながら、それらに混じって「入社後のイメージができなかった」(23.0%)「会社の良い点しか、聞くことができなかった」(10.4%)があることを見逃してはならない。

 一方、「入社したい」と思った理由には、「面接官の人柄・印象が良かった」(85.9%)、「面接官が話しやすい雰囲気を作ってくれた」(70.1%)という、面接官の好印象によるものが多い。しかし他にも「仕事への興味がより深まった」(48.6%)、「入社後の働く姿がイメージできた」(39.4%)、「「一緒に働きたい」という熱意を感じた」(29.5%)、「会社の良い点だけでなく、課題点も正直に聞くことができた」(26.6%)といった理由もある。

 このアンケートからわかることは、「入社後どうなれるのか」という情報を「イメージできるように」伝えることが重要ということである。面接官の印象を良くする、面接のミスを無くすといった改善だけでは「入社後のイメージ」は伝えられないであろう。入社後をイメージする手助けになるものは「職場情報」であろう。それを、より具体的にイメージしてもらうためには、取り繕った情報でなく「正直な」情報が必要である。

「入社後をイメージ」してもらうには

 「職場情報」という、外からでは分かりづらい情報が求められていることは確認した通りである。ただ、それだけでなく、企業や業務に関する「正直な」説明、そして自分が入社することでどうなっていけるのかという「これから」そして「私だからこそ」という情報が求められているのではないであろうか。

面接官から見た「職場情報」

 面接とは実際にその企業で働いている人と話すことのできる貴重な時間である。その人から見た業務や職場の具体的かつ正直な説明は、求職者にとって有益である。「〇〇の操作は難しいけれど、しっかりと教えてもらえる」「ポジティブな人が多くて、意見交換が活発」といった面接官目線の「正直な」意見は、求人票に書ききれなかった「職場情報」を伝えられるである。実際に職場の中を見て知ってもらうというのも1つの方法である。言葉を尽くすよりも一目で伝わるものもある。

求職者の成長可能性

 「入社後のイメージ」が入社を決める上で重要な要素であることは確認した通りである。そのためには、どういった業務を行うのかという日々の動き方だけでなく、何ができるようになるのか、何に挑戦できるのかといった、ここで働くことで求職者自身がどうなっていけるのかという、未来を含めた説明が重要であろう。資格の取得ができる、出産後も働き続けられるといった、福利厚生の説明でも有用である。

会いたいと思った理由

 重要であるにもかかわらず意外と忘れられる項目はこれではないであろうか。求職者が求める情報は「入社後、企業と共にどのようになっていけるのか」である。それは求人票に書いてあるような誰にでもあてはまる説明ではなく、「私だからこそ」という情報である。

 面接を行うということは、スキルや経験など書類に書かれている情報を踏まえて良いと思ったからであろう。どういった点が企業にマッチすると思ったのかを伝えることで、求職者が「自分のスキルがどう生かせるのか」「どのように役立てるのか」を確認することができる。また、同時に「共に働きたい」という熱意も伝えられるであろう。

オンライン面接でできる工夫

オンライン面接を受ける人

 感染症の流行により、オンラインでの面接を始めた企業も多いであろう。画面越しに会話をするため、対面の面接よりも情報は伝わりにくい。それを乗り越える工夫として「通信状態の確認をする」「しっかりと相槌を打つ」「分かりにくい箇所がないか確認しながら進める」「目線をカメラに向ける」などが言われている。しかし、せっかくのオンライン面接だからこそ取れる手段もあるのではないか。

画面背景をオフィスや工場内の画像にする

 対面の面接では企業に招くことが多く、どういった場所で働くのかをなんとなく知ることができる。しかし、社内の見学などを行わなければ見られない場所もあり、詳しく知ることは難しいであろう。背景画面を実際に働く場所がどんな場所なのか、どんな雰囲気で働けるのかが分かるようなものであれば、対面の面接以上に職場の魅力をアピールできるかもしれない。

情報をスライドや動画で共有する

 対面の面接では、ただ話し合うだけの場合が多く、資料を見ながら確認するといったことは少ないであろう。リンクの送付や画面共有機能などで、企業情報に関するスライドや動画を流せば、情報の行き違いや勘違いを防ぐことができる。さらに、効果的に企業の魅力をアピールすることもできるであろう。

堅苦しくない面接にする

 面接では緊張して本来の力を発揮できない人や自分をよく見せようとして準備してきた部分しか見せないようにする人もいる。対面の面接では、取り繕っていることはなんとなく伝わるものである。また、緊張などを和らげるために面接場所まで話をしながら案内するといった手段も取れるが、オンライン面接ではそうもいかない。アイスブレイクを長めにとって緊張を和らげてもいいであろう。求職者のほとんどはプライベートの空間から繋いでいることがほとんどであることを利用して、最初から堅苦しくなく気軽に参加してもらった方が、本音を引き出せるのではないであろうか。

それでも採用に結び付かないとき

 それでも採用に結び付かないときにはどうすればいいのであろうか。ここでは3つの観点で考える。

求人が見つけられていない

 採用には何かとコストがかかり、できる限り費用を抑えたいと考える企業も多いであろう。しかし、費用を抑えたがために求職者に見つけてもらえないのであれば本末転倒である。

 一時的に費用をかけて最適な人材を得た方が、結果的にコスト削減になることもある。優秀な人材を必要とするのであれば、それに見合ったコストをかける判断も大切である。

採用対象範囲が小さい

 求職者がどんなに仕事を求めていたとしても、何らかの制限によって対象外であれば応募はできない。転職サイトに掲載している場合は、条件で絞り込んで検索するため、そもそも検索にひっかからずに求人票を見つけてもらえないであろう。必要な制限であれば仕方がないが、現在の制限は本当に必要なのか、すでにある対象者の枠が採用の可能性を狭めていないかを今一度考えてみることは大切である。

 「うちの仕事は専門的すぎるから」と、対象者を広げることが難しいと考える企業もあるかもしれない。その場合、そもそもの仕事の割り振りなどを変えてしまうのも1つの方法である。それによって幅広く採用できる環境を整えた例もある。

 近年、ICT技術の発展により、遠方と気軽にやりとりできるようになった。オンライン面接・リモートワークなどを利用すれば、近隣住民だけでなく遠い世界から応募が来る可能性もある。応募の母数が大きくなれば、その中から適切な人材を選ぶことができるであろう。

アピール項目が的確でない

 「大手企業と比べて、中小企業は福利厚生を充実させられないから採用に結び付かない」という意見を見かけることがある。もちろん、福利厚生は充実していた方が良い。しかしながら、求職者は福利厚生のみで企業を判断するわけではない。企業が持っている魅力は他にもあるはずである。

 実際に働いている従業員に意見を聞くと、いくつかの魅力が発見できるかもしれない。また、下記の観点から探すこともできるであろう。なお、ここに書いてある全てを高める必要はない。社風や業務内容などによって、高められるものが異なるからである。募集する職種、ターゲット、他社との比較などを考慮して、特徴を出したり打ち出し方を変えたりするのも1つの方法である。

魅力の方向性具体例
企業・経営者が魅力的
・安定した経営基盤
・成長性がある
・老舗
仕事内容・お客様との距離が近い
・人のためになる
・環境のためになる
・ノウハウが学べる
教育・研修制度が充実している
・平等な評価制度がある
・独立のノウハウが学べる
キャリア・昇給が早い
・幹部候補を目指せる
待遇・土日が休み
・交通費全額支給
・給与水準が高い
風土・経営者との距離が近い
・既婚者が多く活躍
・社員の結束力が強い
アピールポイントの観点
作成 株式会社デジタルボックス

 求職者にとって転職は一大事である。彼らはさまざまな企業を見比べながら、そして今後の人生を考えながら選択を行っていく。企業は、そのような求職者を選ぶ側ではあるが、選ばれる側でもあることを忘れてはならない。そして、彼らに知ってもらうためには、求職者の未来が想像できるように情報を伝えることが大切である。それらの情報を適切に提供できたならば、ミスマッチによる早期離職の発生も抑えられるであろう。

 次回からは、中小企業に転職した求職者の実例をもとに採用について考えていく。

求職者が求める情報とは(求職者目線で考える採用Part1)アイキャッチ

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