学校を卒業したら勉強は終わり、ではありません。社会人として働いているうちに、新しいスキルが必要だと感じたり、これからのことを考えたりすると、勉強が必要だと痛感することがあるでしょう。
今、社会人の学び直しは「リカレント教育」として注目・推奨されています。しかし、時間やお金などに余裕がなく、つい後回しにしているという人もいるかもしれません。この記事では、社会人の学び直しがどう役に立つのか?や、余裕がないなかでも少しでも学び直しを進められるような方法やサポートを紹介します。
社会人の学び直しとは?
社会人の学び直しは「リカレント教育」と呼ばれています。ここでは、リカレント教育とはどういうものを指すのか、似た言葉との違いとあわせて紹介します。
リカレント教育とは?
「リカレント(recurrent)」とは、「循環する」という意味です。つまり、「リカレント教育」とは、学校を卒業して社会に出た後に、その人が必要だと感じたタイミングで教育を受け、スキルの向上や新しいスキルを習得することで、仕事と教育を繰り返すことを意味します。
現在、世の中はものすごく早いスピードで移り変わっています。技術の進歩によって、当たり前だった方法が通用しなくなること珍しくありません。また、日本では平均寿命が長く、定年退職した後に再び働くことも珍しくなくなってきました。転職をする、子育てをしながら働く、といったことも一般的になっています。
社会に出た後に学び、スキルを身につけることは、働き方や生き方の選択肢を広げる上でとても大切なことなのです。
リスキリングとの違いは?
ちなみに、似た言葉に「リスキリング」があります。リカレント教育の場合、学び直しを主導するのは学ぶ本人(労働者)でした。一方で、リスキリングの場合は、学び直しを主導するのは企業です。
「語学スキルを身につけたい!」と思って、学び直しをするのはリカレント教育です。企業が「語学スキルを持つ人材を強化したい」と思って、従業員に研修などを行う場合はリスキリングにあたります。
生涯学習との違いは?
「リカレント教育は生涯学習と何が違うの?」と思った人もいるかもしれません。生涯学習は、充実した人生を目指した学びです。一方で、リカレント教育は、仕事で求められるスキルの向上を目指す学びです。
生涯学習は、趣味やボランティア、スポーツや文化活動などを通して、健康を維持し、仲間を作り、人生が豊かになるように学びます。リカレント教育は、スキルアップやキャリア形成に関連する学びに限定される点で、生涯学習とは違います。
社会人の学び直しのメリット・デメリット
社会人になって学び直すことに、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?学び直しのメリットは、デメリットよりも大きいと言えるでしょう。
- 仕事に反映できる
- キャリアの選択肢が広がる
- 市場価値が高まる
- 新しい仲間を得て視野が広がる
- 費用と時間がかかる
仕事に反映できる
もしもAIを扱うスキルを学べば、仕事でAIを使うことで、業務効率が改善したり、仕事の質がアップしたりするでしょう。このように、学んだことは今の仕事の効率や質として反映されます。仕事の効率や質が上がれば、事業にも貢献でき、昇進や昇給などにも繋がっていくでしょう。
キャリアの選択肢が広がる
もしもビジネス英語を学んで話せるようになれば、英語を話すクライアントも担当できるようになるでしょう。英語圏への転属の可能性も出てきますし、英語を使った副業を始めるなんてこともできます。より英語を活かして働ける仕事に転職、という道も拓けるかもしれません。
勉強をして知識やスキルを身につけると、できることが増えて、キャリアの選択肢が広がります。もしも今の会社で働けなくなってしまったとしても、選択肢が多ければ、いくらでもステップアップしていけます。逆に、キャリアの選択肢が少ないと、窮地に陥ってしまうこともありえます。そうならないためにも、キャリアの選択肢を広げることは大切です。
市場価値が高まる
例えば、Webマーケティングをやっている人が動画制作もできれば、同じレベルでWebマーケティングをやっている人よりも希少性が出てきます。
今持っているスキルとかけ合わせれば、持っているスキルが一般的だったとしても、市場価値が高まります。その結果、社内での昇進や、良い条件での転職などにも繋がるかもしれません。
新しい仲間を得て視野が広がる
働いていると、学生時代のように新しい仲間を作るのはなかなか難しいものです。しかし、学び直しをすれば、いろんな立場の人と交わることもあります。
なかには、全く違う業界、役職、年齢の人と交わることもあるでしょう。そういった、会社と家を往復するだけでは得られない仲間を得れば、いろんな視点を得て、視野が広げられるでしょう。
お金と時間がかかる
社会人の学び直しにデメリットがあるとするなら、お金と時間がかかることでしょう。学び直しをするなら、今の生活から学習する時間を捻出しないといけません。
とくに大学や大学院などの社会人向けの講座に通う場合、休日や夜間は学びに充てることになるので、仕事を早く切り上げることもあるかもしれません。家庭を持って子育てをしていたりすると、「とてもじゃないけど両立できない」と感じる人も多いでしょう。
学びに専念するとなれば、キャリアは数年ストップしてしまうでしょう。その間、どうやって生活費を捻出するのかという問題もあります。また、受講費も年間で数十万円~数百万円かかります。それらを賄えるだけの蓄えがなければ、学びに専念するのは困難です。
社会人の学び直しの現状
日本は世界と比べると、社会人の学びが遅れていると言えます。経済産業省「イノベーション創出のためのリカレント教育」によると、「アジアの諸外国と比較して、日本では、社会に出て以降、継続的な学習や自己研鑽に対して消極的」と報告されています。
それでは、その理由は何でしょうか?下記の表は、学び直しを実施した労働者に、学習する上で問題があったかどうかを尋ねたものです。実に80%の人が、学び直しをする上で問題があったとしています。
それでは、その問題とはどういうものだったのでしょうか?その内訳が次の表です。学び直しに取り組んだ人たちも、「時間の余裕がない」「費用がかかりすぎる」と思っているようです。
「仕事と生活に忙しくて余裕がない」「費用がかかり過ぎる」といった状況は、社会人の学び直しにおいてネックになっているようです。しかし、「忙しいから・お金がないから、学び直しはしない」としてしまってもいいのでしょうか?
自ら学ばなければ、スキルが身につきません。学ばずに漫然と働いていては、いずれ時代の流れについていけなくなるでしょう。そういった人は、将来的に学ぶことが当たり前になった時に、学び始められるでしょうか?スキルがない・時代についていけない・自ら学べない人として、場合によっては契約解除対象に……なんてことにもなりかねません。
もちろん、会社のサポート体制や学び直しがやすい社会的な仕組み作りは必要でしょう。しかし、それが整うのを待っていては、年をとってしまいます。今、出来る範囲からでも、学んでいくことは大切なのではないでしょうか。
社会人の学び直しをサポートする主な取り組み
仕事や家庭で忙しい。学びに割けるほどのお金がない。そうなると、社会人に学び直しは難しいんじゃないか?と考えた人もいるかもしれません。しかし、そういった人たちを補助するサポートもあります。その1つが国によるサポートです。
これらを利用すれば、お金の負担が軽くなり、学びやすくなると言えるでしょう。ここでは学び直しに使える、お金に関する主な取り組みを紹介します。
教育訓練給付金
「教育訓練給付金」とは、働く人の能力開発とスキルアップを支援する制度です。一定の条件を満たす雇用保険に入っている労働者や求職者が、厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練講座を自己負担で受講したときに、受講費用の20%~70%を給付金として受け取れる制度です。給付限度額は、スキルの内容によって次の3種類に分かれています。
- 一般教育訓練給付金:受講料の最大20%(上限10万円)
- 特定一般教育訓練給付金:受講料の最大40%(上限20万円)
- 専門実践教育訓練給付金:受講料の最大70%(上限56万円)
- 介護福祉士
- 一等無人航空機操縦士
- ITパスポート
- 専門職学位
- インテリアコーディネーター など多数
対象となる講座数は、約16,000。分野も多岐にわたるので、もしも気になる資格・試験があるのなら、対象講座がないかを探してみるといいでしょう。なお、教育訓練給付金を受け取るには、必要書類の提出が「受講を開始する日の原則2週間前まで」に必要なので、計画的に動き出しましょう。
参照:厚生労働省「教育訓練給付金制度」
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」とは、指定の補助事業者から「キャリア相談」「リスキリング講座」「転職支援」の3つのサービスを受けて、一定の条件をクリアすると、受講費用の最大70%(上限56万円)が給付金として受け取れる制度です。
- リスキリング講座の受講を終了した場合:受講料の50%(上限40万円)
- リスキリング講座を経て転職し、転職先で1年間継続的に就業した場合:受講料の20%(上限16万円)
対象者は、企業と雇用契約を結んでいる労働者(正社員・契約社員・アルバイトなど)で、雇用主の変更を伴う転職を目指している人です。スキルを身につけて、将来的に転職しようと考えている人は、利用の検討がおすすめです。
参照:経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」
学び直しにはオンラインスクールがおすすめ
社会人の学び直しには、さまざまな方法があります。
- オンラインスクールに通う
- 大学や大学院に通う
- 学びたいジャンルの本を読む
- 無料動画やアプリを使って学ぶ
- 勉強会やセミナーに参加する
- 資格取得を目指す
もし、時間の余裕やお金が学び直しのネックになっているのならば、オンラインスクールを利用した学び直しから始めてみてはどうでしょうか?
オンラインスクールは「教育訓練給付金」「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」を利用できるところが多く、申請のサポートをしてくれるところもあります。さらに、次のようなポジティブな特徴があるので、忙しい社会人でも、仕事やキャリアのために学びやすいでしょう。
スキマ時間にオンラインで学べるものが多い
オンラインスクールには、決まった時間に授業を行うスタイルだけでなく、動画講義を見て学ぶスタイルのものもあります。後者のスクールを選べば、自分の好きな場所・好きなタイミングで学べます。スクールに通いたいけど近くにない!という人はもちろん、仕事や家事で忙しいという人も、勉強していきやすいでしょう。
動画講義は1本あたり10分~15分にまとめている、というスクールもあります。そういったスクールならば、通勤時間や寝る前などのちょっとしたスキマ時間に少しずつ学んでいきやすいのでおすすめです。
大学の講座と比べると安価に受講できる
大学や大学院の講座を受けようと思うと、受講料として数百万かかることも珍しくありません。一方、民間のオンラインスクールなら、受講料の相場は数万円~数十万円。大学の講座と比べると、安価に知識やスキルを身につけられるでしょう。
自分に合っているかを確かめられるチャンスがある
多くのオンラインスクールでは、無料相談(無料相談会、無料カウンセリングとも呼ばれる)や無料体験を設置しています。スクールに関する相談をしたり、実際に講座の一部を体験したりして、自分にそのスクールが合っているかどうかを確かめられるのです。
なかには「何かを学びたいけど、何を学べばいいのか分からない」「誰かに相談して考えたい」という人もいるでしょう。そういう人にも、オンラインスクールの無料相談や無料体験はおすすめです。スクールのカウンセラーに相談しながら、これからのキャリアについて整理することができますし、無料体験で学習内容に触れることで、「自分に必要な学習か?」「学んでみたいと思えるか?」考えられます。
つまづいても質問・相談できる環境がある
多くのオンラインスクールには、講師に質問・相談できる仕組みがあります。チャットで好きな時間に質問できる、オンラインで講師と話す時間があるなど、スクールによってその方法は様々ですが、1人で疑問や悩みを抱え込むことはありません。
独学で学んでいると、分からない部分があっても誰にも相談できません。「こういうことかな?」と分からないままに勉強を進めてしまい、間違ったことを覚えてしまうこともあります。そうなると、改めて覚え直さなくてはなりません。
「社会人の学び直しの現状」で確認したとおり、「やる気」は勉強を続ける上での課題でもあります。オンラインスクールの中には、「モチベーションをどう保てばいいのか?」「時間を効率的に使って勉強するには、どうすればいいのか?」といったところからサポートしてくれるところもあります。そのような学習サポートがあるスクールを利用すれば、やる気も維持しやすいでしょう。
スクールによっては仲間を得られる
オンラインスクールによっては、一緒に学ぶ仲間が作れます。オンラインで交流する機会があったり、オンライン上の勉強スペースで一緒に学べたり、スタイルはスクールによってさまざまです。
挫けそうになった時、仲間がいれば支えになることもあります。相談し合って困難を解決することもあるかもしれません。それだけでなく、将来活きてくような人脈を作れる可能性もあります。
スクールによってはキャリアサポートもある
オンラインスクールによっては、キャリアサポートを行っているところもあります。これからどのようにキャリアを構築していくのかという相談から、転職・副業・独立のサポートまでしてくれるところもあります。プロと相談しながらキャリア構築について考えたい人やキャリアアップやキャリアチェンジを目指す人は、キャリアサポートがあるスクールを利用すると安心でしょう。
自分に合ったオンラインスクールを探してみよう
目まぐるしい社会変化や働き方の多様化によって、社会人の学び直しが注目されています。今後、社会変化がますます早くなったり、退職後に働くことが今よりも一般的になったりすれば、学び直しは必須のものとなっていくでしょう。
仕事で求められるスキル、目指すキャリア、必要なサポート、ライフスタイルなどは、人によって違います。「これからどうなりたいのか?」「どんなスキルを身につける必要があるか?」「どんなサポートがあれば学べそうか?」「どんなスタイルのスクールなら、無理なく学べるか?」といったことを検討して、自分に合ったスクールを探してみましょう。そして、気になるものがあれば、無料相談や無料体験で積極的に情報収集してみましょう。
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