リモートワークの普及で、社内コミュニケーションも文章で行うことが増えました。ただ、それによって、コミュニケーションに時間がかかってしまっている、という人もいるのではないでしょうか。この記事では、ビジネス文書としての社内メールをスムーズに書くための考え方やテクニックを紹介します。
【的確でライトな文章を意識して、社内メールを書くメリット】
〇 すばやく情報のやりとりができ、社内コミュニケーションに時間をとられなくなる
〇 冷たさや硬さがなくなり、気持ちのこもったやりとりができる
〇 メールのくどさが減り、不快に思われることを防げる
社内メールにある失敗
回りくどい社内メール
例えば、次のような社内メールが送られて来たら、どう思うであろうか。
「お疲れ様です。〇〇です。
先日は社内の勉強会にお誘いいただきありがとうございました。その時は出張の日程と重なっていたためにお断りしたのですが、出張の日程が変更になったので、参加できることになりました。今から参加はできますでしょうか。申し込み方法が分からないので、教えていただけますと幸いです。」
よく読めば、このメールは「今からでも勉強会に参加できるか」「参加の申し込み方法は何か」を尋ねるものだと分かる。しかし、自分の気持ちのまま伝えようとするあまりに、教えてほしいという言葉が出てくるまでが長く、何を言っているのかが分かりにくくなってしまっている。このメールの難点は次の3つである。
- 何を言いたいのかが分かりにくく、話が遠回りに見える
- 何の勉強会の件なのか分かりづらい
- 改行がほとんどなく、読みにくい
丁寧すぎる社内メール
また、次のようなメールはどうであろうか。
お疲れさまです。〇〇部の〇〇です。
この度は、新商品に関するアンケートにお答えいただきたく、ご連絡させていただきました。
5月発売予定の「〇〇」につきまして、サンプルができあがりました。
つきましては、サンプルをご使用いただきまして、
ご意見を伺わせていただければ幸いと存じますがいかがでしょうか。
ご協力いただける場合には、サンプルをおまとめしてお送りいたしますので、
〇月〇日までにご返信いただけますと幸いに存じます。
お忙しいところ、大変申し訳ございませんが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
一見すると、とても丁寧に書かれたメールのように見える。しかしながら、相手を気遣うばかりに「いただく」「いかがでしょうか」を連発してしまい、くどくなっている。このような言葉は「卑屈語」と呼ばれ、人によっては不快に思う人もいる。
- 丁寧語・尊敬語・謙譲語が続き、くどくなってしまっている
- シンプルに書けるはずの内容が、長くなってしまっている
社内メールのミスは、意外と気付けない
きれいな文章が書けないからとメールの作成に苦手意識を持つ人は多いであろう。特に、若い人の中には、チャット形式のコミュニケーションなら親しみがあるものの、メールでのコミュニケーション自体に慣れておらず戸惑う人もいるかもしれない。相手の失礼にならないように、より丁寧に書こうとする人もいるであろう。しかし、その丁寧さのために時間がかかり、逆に読みづらさを与えてしまっていることもある。
変換ミスなどであれば、落ち着いて確認すれば見つけられるかもしれない。メールのツールによっては「誤変換?」と表示を出してくれるものもある。しかし、上の例のような、内容の分かりにくいメールや硬いメールは自覚しづらい上、メールのツールも指摘してはくれない。また、メールを受け取った相手も「この人のメールは分かりにくいんだよね」と思っても「分かりにくいので直してください」と伝えることはほぼないであろう。ほとんどの場合はそのまま見過ごされ、本人は気づかないまま繰り返してしまうのである。
理想の社内メールとは、どんなものか?
それでは、ビジネス文書としての社内メールにはなにが求められるであろうか。それは次の2つが達成されているメールであろう。
的確なコミュニケーション
メールのやりとりの理想は「1往復半」と言われている。「何をしてほしいか」を発信し、相手にそれをしてもらう。それのお礼を返信して、やりとりが完了することが望ましい。
そのようなコンパクトなやりとりにするために必要なのは、なにを伝えたいのか、何をしてほしいのかを明確にしたメールである。メールをもらった相手が「結局何をすればいいのか?」と悩んでしまうようなメールでは「1往復半」のやりとりにはならない。
丁寧さに時間をかけない
社内メールは、コミュニケーションの1つであるため、失礼がないように丁寧に対応したいと考える人も多いであろう。しかし、丁寧に対応するために時間をかける必要はない。なぜなら情報をいち早く伝えることの方が大切だからである。時間をかけるのであれば、「丁寧なコミュニケーション」にかけるのではなく、情報を齟齬なく伝えるためにかけることが大切である。
理想の社内メールを書くポイント
時間をかけずに的確な情報を伝えられるような社内メールを書くには、どうすれば良いのであろうか。ポイントは次の3つである。
なぜメールをするのか、相手にどうしてほしいのかを考える
何もないのに社内メールを送ることはない。相手に何か伝えたいことやしてほしいことがあるからメールを書くのである。まずは社内メールを書く前に「なぜそのメールを送るのか」「メールを受け取った人に何をしてほしいか」を考えてみよう。そうすれば、メールの「何を伝えるのか」というテーマが明確になる。このテーマが伝わるように、社内メールを書くのである。
思いつくままに書き散らさずに、コンパクトにまとめる
社内メールは、思ったままに書くものではない。「なにを伝えるのか」というテーマが明確になったら、次はビジネス文書として情報を整理して的確に伝える。
社内メールはコミュニケーションの1つであるので、整理した情報を伝えるだけでは足りないこともある。情報を伝えつつも、冷たく堅い文章にならないようにするためには、それなりのテクニックが必要である。
形式面を気にしすぎず、ライトに情報共有する
繰り返しになるが、社内メールで重要なことは丁寧さよりも的確さである。そのため、メール特有の挨拶や形式を気にせずに、ライトな伝え方で構わない。ただし、ライト過ぎて情報が散漫になったり、相手が不快になってしまうことがないように、それなりのテクニックを踏まえる必要がある。
理想の社内メールを作るテクニック
情報を伝える型を作る
社内メールは、主に「タイトル、挨拶、本文、署名」の4つで構成されている。挨拶、署名はある程度固定されるが、タイトルや本文はメールによって異なる。とくに本文は自由度が高く、図やリンクを貼ることもできれば、だらだらと長文を書き続けることもできる。このタイトルと本文に、型を作ることが大切である。そうすれば、時間をかけずに対応していくことができるようになる。
・タイトル
タイトルだけで何のメールか分かるようにすることが大切である。「会議の件」だけでは、何の会議のことなのか、会議の何に関することなのか分からない。「第〇回」「〇月〇日」といった「いつ」「何」といった情報を入れるようにする。また、注目してほしい情報がある場合に「【】」で目立たせるとよい。
×「会議の件」
〇「【提出期限:3/9 17:00】3/10会議の場所変更の件」
・PREP型
正しい文章といえば「起承転結」を思い浮かべる人は多いであろう。しかし、それを社内メールでやってしまっては、重要な部分が最後に書かれることになる。一番読んでほしい部分を読み飛ばす人もいるかもしれない。社内メールは、「起承転結」でなく「PREP型」で書くとよい。
情報の背景まで伝える
社内メールは、基本的に個人対個人のやりとりである。同じ会社内の相手であることから、詳しく書かなくても分かっていると思って書きがちである。しかし、営業とエンジニアでは同じことを伝えようとしても把握している情報や使用する言葉が違う。CCに入っている人を含めて、相手が分かるように考えた上で書かなくてはならない。
・キーワードを入れ込む
メールの内容を分かりやすく書くためには、「〇〇のお願い」「〇〇のお詫び」といったキーワードを入れると良い。タイトルに書いたからと省略しがちであるが、文中にも書くとより分かりやすいメールとなる。
コミュニケーションの型を持っておく
メールは相手とのコミュニケーションである。相手に失礼がないよう気遣うあまりに、堅い文章や丁寧すぎる文章となってしまいがちである。それを避けるために、コミュニケーションの型を自分の中で用意しておくとよい。
・クッション言葉
クッション言葉を使うだけで、文章もやわらかくなり、相手に気持ちを伝えやすくなる。ストレートに伝えるときつくなりそうな場合に、一言置いてみるとよい。
使う場面 | 例 |
---|---|
依頼する | 恐れ入りますが お手数おかけしますが |
断る | せっかくですが 心苦しいのですが |
援助を申し出る | もしよろしければ 力になれることがあれば |
作成 株式会社デジタルボックス
・気持ちの言葉
何かのお礼や気遣いを伝える時には、自分がどう思ったかが添えてあると、気持ちのこもったメールになる。ただし、気持ちを長々と述べてしまってはくどい印象となる。気持ちを伝えるのがメールのテーマでないならば、1~2文程度に収めるのがよい。
「昨日の勉強会ではありがとうございました。〇〇さんのお話が大変興味深く、〇〇の姿勢を学ばなくてはならないと、襟を正す思いです。さて、〇〇の件ですが~」
・話し言葉で書いてみる
社内メールの言葉遣いは「ですます調」で十分である。文章が硬くなってしまうようであれば、まずは丁寧は話す感覚で書いてみるとよい。
×「ご意見を伺わせていただければ幸いと存じますがいかがでしょうか。」
〇「〇〇さんの意見を聞きたいと思っています。」
読みやすい配置にする
メールのやりとりは基本的には一時的な情報のやりとりである。誰もが見る可能性があり、一度読めば伝わるものにしなくてはならない。それには視覚的にも工夫が大切である。
・20~30字で改行する
メールは長文になるほど読みにくくなる。文章の途中であっても、改行して読みやすさを優先することは一般的である。
×「e-ラーニングの受講期限が迫っています。3/31 17:00までに受講を完了し、社内アンケートを提出していただきますようお願いします。」
×「e-ラーニングの受講期限が迫っています。
3/31 17:00までに受講を完了し、社内アンケート
を提出していただきますようお願いします。」
〇「e-ラーニングの受講期限が迫っています。
3/31 17:00までに受講を完了し、
社内アンケートを提出していただきますようお願いします。」
・空白の行を入れ込む
行数が多いメールでは、話の内容に一区切りつくところで空白を入れ込む。そうすれば、視覚的にも情報が変わるところで空白を入れ込むと伝わりやすくなる。
×「〇〇の件、ご対応いただきありがとうございました。さて、お問い合わせの件ですが、~」
〇「〇〇の件、ご対応いただきありがとうございました。
さて、お問い合わせの件ですが、~」
・箇条書きできるところは箇条書きに
複数の情報を伝える場合、並列で書くよりも、箇条書きで書いた方が分かりやすい。もし、箇条書きで書ける部分があれば、書き方を検討するとよい。
×「社員番号、所属、氏名、社用携帯番号、申し込み日時を書いて、本メールに返信してください。」
〇「次の情報を書いて、本メールに返信してください。
・社員番号
・所属
・氏名
・社用携帯番号
・申し込み日時」
社内メールをブラッシュアップするために
社内メールを学ぶには、社内を見る
社内メールには、企業ごとによって文化がある。企業によっては、「お疲れ様です。」を書くことを煩わしいとみなすところもあれば、宛名を「〇〇さん」でなく「〇〇様」と書かれていなければならないと考えるところもある。そのため、社内メールをさらによくするには、他の人がどういったメールが出しているかを見て、倣うのが一番である。
見直しチェックポイント
- 件名を見ただけで、メールの内容が分かるか
- 件名や本文に、「お詫び」「ご報告」などのキーワードが入っているか
- メールの要件が、本文の前半に書かれているか
- 読んだ人に何をしてほしいかが明確になっているか
- 「~させていただく」「いかがでしょうか」が頻発していないか
- 箇条書きで整理できる箇所はないか
- 改行や空白の行で、読みやすくできないか
- 誤字、変換ミスがないか
【情報・気持ちが伝わる社内メールを書くポイント】
〇 このメールで相手にどうしてほしいのかを意識する
〇 思いつくままに書かず、情報を整理して書く
〇 文章を丁寧にするための時間を書けない
〇 良いと思った表現をまねて、文章の型を自分の中にストックする