分かりやすい報告書の書き方~例文と伝え方のテクニックを解説

報告書の書き方

 上司や関係者、客先などと情報を共有する報告書は、作成する場面の多いビジネス文書です。効果のある、分かりやすい報告書を書くポイントは次の3つです。

報告書の目的を意識する

報告書が目指す目的

報告書がどのように使われるのか、何のために書くのかを意識して書く

情報を整える

整理された情報

書く前に情報を整理して、形式に沿って書く

文章表現の工夫をする

文章表現

報告書を読む人の視点に立ち、どんな報告が求められているのかを意識する

 この3つのポイントをふまえて、分かりやすさを意識して書くと、次のような効果があります。

分かりやすさを意識して報告書を書くメリット
  • その場にいなかった人に対して、的確な情報共有ができるようになる
  • 現状をスムーズに伝えられ、スピーディーに対応できるようになる
  • 提出先からの手戻りがなく、書き直しに時間をとられなくなる

 書き方や書くべき内容が分かればスムーズに作成できるようになりますが、慣れないうちは手間取ってしまうかもしれません。この記事では、報告書を書く上でのポイントや形式を解説します。書きあがった時に使える「見直しチェックポイント」もあるので、これから報告書を書くという人はぜひ参考にしてください。

目次

分かりやすい報告書とは、どのようなものか?

報告書を書こうとして悩んでいる人

 分かりやすい報告書とは、どういったものでしょうか。それは次の3点が叶えられている文書でしょう。

内容がすぐに理解できる

理解した人

 ビジネス文書は内容がすぐに理解できるものが好まれます。

 一目見た瞬間に、どういった情報が書かれているのかが分かり、知りたい情報を知るためにはどの部分を読めばいいのかがはっきりしたものが理想です。

 そういった読みやすさは、書類の書き方や題名の付け方ひとつで向上します。

未来について考えられる

未来を考えている人

 報告書は過去にあったことをまとめるだけのものではありません。報告書でまとめた内容を受けて「今後どうしていくのか」を考えるものなのです。

 この報告書を基にして、読んだ人が次にどうするべきなのかを考えられるようなものでなくてはなりません。

 報告書はただあったことをまとめるだけのものでなく、未来を考える建設的なものなのです。

具体的で分かりやすい

報告書をもとに具体的に考えている人

 報告書は報告内容が事実に沿っていることが絶対です。

 レポートのように所感がメインになってしまっているものや、どこまでが事実でどこからが所感なのか分かりにくいものはNGです。

 具体的な事実や経緯を意識して書くことが大切なのです。

 分かりやすい報告書を書くことは、働くうえで必須のビジネススキルです。ポイントをおさえて、分かりやすい報告書が書けるようになりましょう。

 なお、ビジネススキルを磨いていけば、業務がスムーズになるだけでなく、将来的なキャリアアップにも結び付きます。ビジネススキルの詳しい紹介や身につけ方は「」の記事で紹介しています。

分かりやすい報告書を書くポイント

 読みやすく、分かりやすく、建設的な報告書にするためには、どうすれば良いのでしょうか。執筆のポイントは次のとおりです。

報告書作成の目的を明確にする

 一口に報告書と言っても、その用途や読み手はさまざまです。読み手が知りたいことが何なのかを考えた上で、誰が読むのか、何のために報告するのかを意識して書くことが大切です。

業務報告書の例

営業事務の業務報告書例

想定される報告相手社内
報告の目的業務の進捗と成果を共有して、今後の業務や方針検討に役立てる

研修の業務報告書例

想定される報告相手社内
報告の目的研修内容と身につけたスキルを共有して、今後の業務に役立てる

出張の業務報告書例

想定される報告相手社内
報告の目的出張内容と成果を共有して、今後の業務や方針検討に役立てる
経緯報告書の例

備品の紛失報告例

想定される報告相手社内・社外
報告の目的備品の紛失破損の状況と原因を共有して、再発防止に役立てる

クレームの経緯報告書例

想定される報告相手社内・社外
報告の目的クレーム発生の原因と対応を共有して、再発防止に役立てる

システム障害の経緯報告書例

想定される報告相手社内・社外
報告の目的システム障害の経緯と対応を共有して、再発防止に役立てる
社内向けの報告書を基に、これからを検討する人

 提出する相手が社内の場合、読み手は上司・先輩・関係者などです。

 一般的に、A4用紙1枚で要旨をまとめ、必要であれば詳しい内容を別紙につけたり、所感を添えたりします。また、報告書に書かれた内容を基に、これからの方針や対策などを検討するため、読み手が知りたい情報を正確に理解することが求められます。

 もしも読み手が知りたい情報が何なのか分からない場合は、事前に報告書の目的などを確認し、意思疎通を図ることが大切です。

社内向け報告書のポイント
  • これからの方針や対策などの検討に役立てる
  • 要旨をA4用紙1枚でまとめる。必要であれば詳しい内容や所感を添える
  • 読み手が知りたい情報を正確に記す
社外向けの報告書をもとに、より連携を強める人たち

 社外に報告書を提出する場合は、要旨をA4用紙1枚でまとめた上で、詳しい内容を別紙にまとめたものが一般的です。

 社内で使っている専門用語が伝わらない場合もあるため、そういった用語は使用しないように気を付けます。また、所感などは添えずに、事実をしっかりとまとめることが求められます。

 社外に報告書を提出する場合は、何かしらのトラブルが起きている場合がほとんどです。その場合、失礼がないように、あいさつ文に謝罪の気持ちを含める、再発防止策を明示するといった内容は必須です。

社外向け報告書のポイント
  • 情報と対応を共有して今後の対応に役立てる
  • トラブル発生による報告書提出は、謝罪の気持ちを伝える
  • 要旨をA4用紙1枚でまとめて、詳しい内容を別紙にまとめる
  • 読み手に伝わらない用語は使わず、事実を正確に記す

情報を整理して、形式に沿って書く

 形式が整った報告書は、それだけで読みやすい報告書になります。また、どこに何を書くべきかが分かりやすくなるため、書きやすいものにもなります。報告書に書く項目を大まかに分けると、次の7つになります。

報告書の例
研修報告書の例
作成 株式会社デジタルボックス
1.日付

提出する日付

2.宛名

報告書の提出先の名前や役職

3.差出人

報告書の書き手の所属や名前

4.表題

報告書の概要が分かる題名

5.概要

伝えたいことの要旨を書く
お客様に提出する報告書などであれば「あいさつ文」や「お詫び」の言葉なども入れる

6.詳細

伝えるべき内容を、項目ごとに簡潔に書く
意見がある場合や、数値に表せない情報には、「所感」の項目を立てて、報告内容と分けて書く

7.添付資料

報告に必要な付属資料があれば書く

 なお、「6. 詳細」の内容は、報告書を書く目的によって異なってきます。報告書で読み手が知りたい情報は何なのかを「WHAT?」「WHY?」「HOW?」などから考え、それを伝えるために報告すべき項目を決めていきましょう。

研修報告書の考え方ツリー(報告目標から、何を・どうして・どうやってを考える)
「研修報告書」の「概要」を考えるためのロジックツリー例
作成 株式会社デジタルボックス

 このような情報の整理は、文章を書く上では大切な工程です。情報を分解して、書くべき内容を整理する方法については、「」の記事で詳しく解説しているので、あわせて確認してみてください。

分かりやすい報告書を書くテクニック

客観的な事実を書く

次のような工夫をすると、客観的な事実を伝えることができます。

  • 5W2Hを意識して書く

 5W2Hとは、When(いつ)・Where(どこで)・Who(だれが)・What(なにを)・Why(なぜ)・How(どうやって)・How Much(いくらで)のことです。これらがあいまいにならないように気を付けて書くと、正確な事実を伝えられる文章になります。

×「しばらくの後に復旧いたしました。」

〇「10:47に復旧いたしました。」

  • 数値で具体的に

 客観的な事実を書くときには、必ず数値で表しましょう。「大勢」「数件」「たくさん」といった言葉は人によって受け取り方が違うので、客観的な事実の報告にはならないのです。必ず数値を使って根拠のある報告にしていきましょう。

×「多くの企業に興味を持っていただきました。」

〇「25社に興味を持っていただき、7社の新規契約見込みができました。」

  • 主語を「私」でなく「物事」に

 主語を「私」とすると、主観的な報告となってしまいます。客観的事実を書くには、主語を「私」ではなく「物事」にしましょう。

×「私はA案が良いと思います。」

〇「A案が最適であると判明しました。」

  • 強調に注意する

 「絶対」「必ず」「二度と~しない」という言葉は、不当な表現やあいまいさに繋がることもあります。そのような強調表現は安易に使わないようにします。もし使う場合には、本当に必要かどうか慎重に検討してください。

×「必ず今回の研修で学んだことを活かし、完璧なクレーム対応ができるようになります。」

〇「今回の研修で学んだことをもとに、今後のクレーム対応で活かしたいと思います。」

すばやく理解できるように書く

 理解しやすい報告書にするために、次のような工夫ができます。

  • 分かりやすい単語を使う

 報告書は読む人に合わせて専門用語を避けるなどの配慮が必要です。「勘案する」「押下する」といった熟語や動詞を組み合わせた堅い言葉を、「考える」「押す」と言い換えるだけでも、読みやすく理解しやすいものになりますよ。

×「C案は改善が必要と勘案します。」

〇「C案は改善が必要と考えます。」

  • 箇条書きの活用

 複数の項目を伝える場合、箇条書きにするだけで、情報が整理されて伝わりやすくなります。

×「接遇研修では、身だしなみ、お辞儀の方法、感じのよい発声方法、正しい敬語の使い方を教えていただきました。」

〇「接遇研修内容
   ・身だしなみ
   ・お辞儀の方法
   ・感じのよい発声方法
   ・正しい敬語の使い方」

  • 一文は短く60字以内で

 一文が長くなると、それだけで理解しにくい文章になってしまいます。「~ので、」「~し」などの言葉で文章を繋がず、文章を区切りながら書いていきましょう。

×「このアンケートの結果から、商品Cは使いやすさとデザインの改善が必要ということが分かりましたので、商品開発部で商品の使いやすさを追求し、デザインも新しいものを検討し、商品リニューアルを進めていきたいと思います。」(104文字)

〇「このアンケートの結果から、商品Cは使いやすさとデザインの改善が必要ということが分かりました。商品開発部で商品の使いやすさを追求し、デザインも新しいものを検討します。その上で、商品リニューアルを進めていきたいと思います。」(46文字+36文字+27文字)

  • 主題を示す言葉の後ろに「、」を打つ

 句読点の打ち方を変えるだけで、文章はぐっと読みやすくなります。例えば、主題の後ろに「、」を打つと、主題が明確となり、分かりやすい文章になります。

×「今回の接遇研修は電話対応について、より実践的な内容を学ぶ事ができました。」

〇「今回の接遇研修は、電話対応についてより実践的な内容を学ぶ事ができました。」

  • 理由・条件・目的の後に「、」を打つ

 理由・条件・目的などを書いた後に「、」を打つと、文章が「理由・条件・目的」+「、」+「結果」の形になります。「理由・条件・目的」と「結果」が「、」で分けられるだけでも、分かりやすさがグッと上がります。

×「作業が、正常に行われず一時的にタウンしてしまいました。」

〇「作業が正常に行われず、一時的にダウンしてしまいました。」

文章をより良くするためにできること

理想的な報告書を書き上げたうえブラッシュアップしている人

 報告書を書き上げたら、読み手視点で読み直してみましょう。客観的に見返すことで、書いているときには気づかなかった誤字脱字や専門用語の使用、より分かりやすく伝えるために工夫できる箇所にも気付けるでしょう。

 報告書の種類によっては、書く機会の多いものもあるかもしれません。そのようなものは、自分の中で報告書のフォーマットを作っておくのがおすすめです

 「詳細には5W2Hに沿ってこんな項目を作っておこう」「この項目は箇条書きの方がいい」など、分かりやすく伝えるための工夫を反映しておけば、フォーマットに沿って記入するだけで、効率よく報告書が作れるようになります。このように報告書を書く度に確認をし、フォーマットに反映していくことで、報告書はブラッシュアップできるのです。

 また、文章力を磨くことでも、分かりやすい報告書が書けるようになります。ビジネスで求められる文章力の磨き方は「」で詳しく紹介しています。

書き方や伝え方を専門家に学ぶ

 ビジネス文書の書き方や、情報や気持ちの伝え方を、専門家に教えてもらえば、より効率的に伝えたいことが伝えられるようになります。社会人向けオンライン学習動画「」なら、月額980円で8000本以上の多彩なジャンルの授業動画が見放題。業界の最前線で活躍する人の知識が手軽に学べるのでおすすめです。

資料作成の本質を学ぶ

 報告書は数をこなしていくとスムーズに書けるようになっていきます。さらに、伝え方の鉄則を学べば、伝えたいことがより伝えられるようになり、手戻りや修正のない資料が作れるようになります。ビジネス文書を作る上で役立つ資料作りを実践形式で学びたい人は、がおすすめです。

文章を書くノウハウを学ぶ

 文章力はたくさん書くだけでなくノウハウを知ることで磨けます。効率よく文章力を磨くには、専門家のスキルを学ぶのがおすすめです。

 日本語研究の第一人者が書いた『』は、情報を分かりやすく伝える文章が書ける、文章の書き方本。解説も丁寧でわかりやすく、詰まることなく文章力が磨けるでしょう。

 『』は、新聞記者を長年務めた著者による文章術が学べます。事実を論理的に、説得力を持って早く伝えるにはどうすればいいのか。ビジネスシーンで使える、情報を早く正確に伝える型や考え方が学べます。

 部下の文章を10年間添削しつづけた著者による『』は、実践的なビジネス文書の書き方本です。ビジネス文書に特化して力をつけたいという人にはおすすめの本です。

ビジネス文書を別の視点でチェックする

 ビジネス文書を指導し添削する人におすすめなのが、文章作成アドバイスツールの「」です。誤字脱字や日本語の誤用などの間違いチェックや、句読点が上手く使われているか、より伝わりやすい表現に変えられないかといった読みやすさ・わかりやすさのチェックをサポートしてくれるツールです。

 100以上の視点で文章をチェックしてくれるだけでなく、文章表現や言い回しを提案してくれる文章表現サポートなどの機能で、ビジネス文書の指導や添削をするあなたを助けてくれます。チームで使えば、チーム全体の文章力向上にも繋がるでしょう。

報告書にありがちな失敗

報告書の書き方に悩んでいる人

情報が整理されていない報告書の文章

 例えば、次のような研修報告書を共有されたら、どう思いますか。

報告書の例

2023年11月15日に弊社会議室で行われた「ビジネスマナー研修」に参加しました。働く上で欠かせないマナーは多くあります。今回の研修では、そのようなマナーの基礎である身だしなみや名刺交換、電話の応対などを、〇〇部の◇◇さんに教えていただきました。教えていただいた内容を徹底して、早く一人前になれるように励みたいと思います。

 この報告書は、全体が1つの文章として書かれていて、必要な情報が書かれているかどうかが一目で分かりません。「マナー研修でどのような内容を学んだのか?」「誰に学んだのか?」といった細かい情報を知るには、全体を読まなければなりません。この報告書の難点は次の2点です。

  • 報告書の概要がなく、何の報告がされているのか最後まで読まないと分からない
  • 情報が項目ごとに分けられていない

 報告書を分かりやすいものにするには、情報を整理して書くことが大切です。はじめに概要を書き、情報を項目ごとに書くようにしましょう。

分かりやすい報告書に変えるポイント
  • 概要欄を作る
  • 情報を項目ごとに表記する

具体的でない報告書の文章

 それでは、次のような出張報告書が共有されたら、どのような印象を受けますか。

報告書の例

出張目的:経費計算システムABCのプレゼンテーション
訪問先:株式会社〇〇
所感:初めての出張だったので緊張しました。しかし、私が商品についてプレゼンを行ったところ「興味を持った」「検討します」との声をいただき安心しました。

 先ほどの研修報告書と違って、この文章は項目に分けられています。しかし、その内容は具体性に欠けています。この「所感」を読んでも、出張先での行動内容や入手した情報、今後どうしていくかといったことは分かりません。さらに、報告者の「緊張しました」「安心した」という気持ちは、この報告書には不必要なものです。この報告書の難点は、次の2点です。

  • 報告内容が具体的でない
  • 不必要な内容が書いてある

 よりよい報告書にするには、情報を精査して、報告書を書く目的に沿って情報を書きましょう

分かりやすい報告書に変えるポイント
  • 報告書を書く目的から、伝えるべき情報を選ぶ

報告書を書くうえでの注意点

報告書を見直す人たち

「報告書」は「レポート」とは違う

 学生時代に「レポート」を書いた人は多いでしょう。しかし、報告書はレポートではありません。レポートは、どう思ったかという“主張”が重要ですが、報告書は何があったのかという“事実”を伝えることが重要なのです。そのため、レポートと同じように報告書を作成してしまっては、相手の欲しい情報を伝えられない文書となってしまうのです。

 報告書では、何が起きたのか、どうなったのかという「事実」と、それでは今後はどうするのかという「展望」を分けて提示することを意識しましょう。

報告書の見直しチェックポイント

  • 報告書の目的に沿って書かれているか
  • 事実と所感は分かれているか
  • 誤字脱字はないか
  • 宛名・役職に間違いがないか
  • 宛名・役職はフルネーム表記になっているか
  • 「ですます調」「である調」は途中で変わらず、一貫しているか
  • 一文一義になっているか
  • 一文は60字以内になっているか
  • 専門用語を多用せず、読み手に合わせた言葉を使用しているか
  • レイアウトが整っているか
  • 所感が感想文になっていないか
  • 所感に気付き・考え・今度の展望などが記されているか

ビジネス文書の種類ごとの書き方は、次のページで紹介しています。

報告書の書き方

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