導入例付き!「業務の効率化」に役立つ5つのITツール

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 近年、ITツールは導入しやすいものとなっている。前回の記事で見てきたとおり、クラウドサービスのITツールを利用すれば、自社に合ったスケールで導入することが可能である。ツールの種類も豊富なため、自社の課題に合わせて始められるのである。本記事では、クラウドサービスのITツールを「業務の効率化」の観点から紹介する。どのような種類があり、導入すればどのような効果があるのかを確認していく。

連載「中小企業とクラウドサービス」

 1. うちも導入できる?身の丈に応じた、中小企業のデジタル化
 2. 導入例付き!「業務の効率化」に役立つ5つのITツール
 3. 「経営の見える化」を助ける!7種類のITツールと導入効果
 4. 在宅勤務で活用したい!6種の「環境にとらわれない働き方」を支えるITツール
 5. どう定着させる?ITツールの選定・導入のコツとポイント

目次

ITツールが「業務の効率化」でできること

 業務の効率化とは、業務の「ムリ・ムダ・ムラ」を排除することである。非効率な部分を見つけ出して取り去っていけば、業務に投入するリソースを減らすことが可能となる。

 ITツールを導入すれば、煩雑な工程が簡素化され分かりやすくなり(場合によっては工程自体が無くなり)、ミスの予防にも結び付くであろう。業務の属人化を防ぐこともでき、担当者が不在になったとしても業務の停滞を阻止することができる。これらの効果によって、時間的な余裕も創出されるであろう。

 そしてなにより、一部の業務をITツールに任せることで、人が専門的・創造的な仕事に専念できるようになる。ITツールが業務を手伝うことによって、従業員を最適な場所に配置することができるのである。事業の円滑的な運営をサポートしてくれるのがITツールである。

業務を管理するITツール

 クラウドサービスのITツールには、さまざまな種類がある。例えば〈勤怠管理ツール〉ひとつとっても、サービスによって特化している内容は異なる。また、〈勤怠管理ツール〉だけでなく〈給与計算ツール〉など他の業務で使えるツールを1つにまとめているものもある。

 “個別のツール”と複数の機能を1つに“まとめたツール”とでは、それぞれにメリットとデメリットが存在する。“個別のツール”は一部分から導入することが可能なため、スモールスタートに向いている。しかし、“個別のツール”を複数導入すると、ツール間でデータを連携できないことが起こり得る。連携するためにデータ出力を人力で行うという非効率な状況になりかねない。“まとめたツール”では、各業務のデータの連携が取れるため、そのような状況には陥りにくいであろう。しかしながら、できることが多いため“個別のツール”よりも価格が高くなってしまう。クラウドサービスは定期的に支払いが発生するため、導入費だけでなく運用費までもが高くつくこととなる。

 “個別のツール”と“まとめたツール”のどちらが優れているということはない。最終的には会社の状況に合わせた選択が必要となる。以下では“個別のツール”を取り上げ、一般的な特徴と効果を紹介する。

勤怠管理ツール

 リモートワーク時や外出先でもタイムカードの打刻が可能となり、社外の勤務状況をリアルタイムで管理することが可能となる。時刻の記録だけではなく、勤怠データの集計や数値入力作業までもが自動化されるため、勤怠管理業務自体も効率化できる。〈給与計算ツール〉と連携すれば、割増手当の給与計算作業の効率化もあわせて図れる。

効果

・場所にとらわれない

パソコンやスマートフォンで打刻が可能となる。リモートワーク時や外出先でも打刻できるため、管理者は正確な始業終業時刻を把握することが可能となる。指紋・スマホ・ICカード認証やGPS機能などを備えたサービスもあり、本人以外が打刻できないよう設定された不正を防ぐツールもある。

・勤務状況の見える化

勤務時間や残業時間、有給休暇などの情報をリアルタイムに一元管理できるようになる。アラートによって従業員の勤務超過を防ぐ機能を備えたものもあり、労働時間や有給消化に関する法令順守が簡易となる。

・ミスの削減

集計作業や数値入力業務が自動化されるため、ミスが削減される。休暇申請の手続きなども迅速化し、自動的にツールに反映されるため業務担当者の負担も軽減される。

給与計算ツール

 従業員の給与の管理と計算を自動化するツールである。給与計算は手当や税金などを踏まえた煩雑な計算を行わなくてはならないが、それをほぼ自動で行ってくれる。アルバイトやパートといった雇用形態にも対応してくれるため、従業員の負担軽減にもつながる。年末調整や保険関係なども一括で管理可能である。

効果

・ミスの防止

給与計算は各種手当や税金などを踏まえた複雑な計算が多い。また、短期間に業務が集中することもあり、対応の漏れや計算自体にミスが発生することがある。そのような計算業務がほぼ自動化するためミスの予防になる。

・法改正への対応

関連した法令が改正された場合、早急に対応を行わなくてはならない。本来は専門知識が必要であるが、〈給与計算ツール〉はバージョンを新しくするだけで、法改正の内容を踏まえた対応ができるように整えてくれる。

・ペーパーレス化

紙で発行していた給与明細書をデジタル化するなど、ペーパーレスに対応することが可能である。在宅勤務者や外回りの多い人は、受け取りのために出社する必要がなくなる。

労務管理ツール

 内容が多岐にわたる労務管理業務を効率化するツールである。関係書類の作成や関係各所への交付、行政への届け出までをパソコン上で完結できるようにする。また、法令改正などによる変更点も、ツールの更新により反映されるため手間が少ない。ツールの種類によっては勤怠管理や給与計算などの機能を含んだものもある。

効果

・対応スピードの向上

入退社や休暇にまつわる手続きなどの社外にいる人とのやりとりは、従来であれば書類の郵送が必要であった。〈労務管理ツール〉を導入すれば従業員がシステムに入力するだけになるため手続きが早く完了する。ツールによってはパソコンからの電子申請もできるため、申請書類によっては役所へ行く必要すらもなくなる。

・コンプライアンス対策

労働に関する法令はますます厳しくなっている。従来であれば、もし法令改訂がなされれば専門知識に基づいて対応することが求められた。〈労務管理ツール〉であればツール上でワークフローに従って業務を行うだけでよい。故意なき違反というリスクを回避することができる。

・ペーパーレス化

書類の配布がなくなるためペーパーレス化につながる。書類をデータとしてシステム内に保存していけば、参照したいときにすぐに確認できるであろう。

経費精算ツール

 経費精算のフローを簡易化するツールである。経費精算は、立て替え払いを行った従業員・承認をする上席・経理担当者の三者間で行われる業務であるが、そのすべてをツール上で行うことで迅速な手続きを可能とする。ツール上で簡易に行えるため、データ入力などの手間が省け、経費申請が特定日に集中することも防げるであろう。

効果

・場所にとらわれない

PCやスマホで対応できるため、経費精算のために帰社する必要が減る。手軽に対応できるため、領収書を月末までため込んでしまうという事態も少なくなるであろう。また、精算書類や領収書をシステム上で管理するためペーパーレス化にもつながる。

・入力ミスの削減

入力項目から経費を自動算出したり、購入明細データを自動で読み込んだりしてくれる。ツールによっては、紙の領収書を写真撮影することで取り込むものもある。手入力で起きていたような間違いは無くなるであろう。

・内部統制

何を購入し、誰が承認したのかが明確になる。そのため内部統制にもつながる。

さらなる効率化を補助するITツール

RPA

 パソコン上で行っている定型業務をロボットによって自動化するツール。「Robotic Process Automation」(ロボティック・プロセス・オートメーション)という。手順があらかじめ決められた、判断を伴わない単純作業を任せることができる。例えばメール配信、書類作成、データ統合、Webサイト上の情報取得や、他のITツールの操作などが可能である。

 定型業務ならば、上記で紹介したようなITツールの操作だけでなく、ITツールのデータ抽出やデータ統合も可能である。ITツールのデータ統合は、場合によっては複雑で時間も手間もかかる作業であるが、〈RPA〉にあらかじめ指示を出しておけば自動で行ってくれる。各ツールとのデータ連携なども自動化でき、毎日新しい統合データを確認することもできるであろう。

効果

・業務スピードが上がる

人が行っていた作業をより早いスピードで行う。頻繁に行う定型業務を〈RPA〉に任せれば、作業時間を大幅に削減できるであろう。それにより機会損失を防ぐことができ、時間の有効活用が可能である。

・ミスの抑制

人はミスをゼロにすることができないが、〈RPA〉は指示された業務を間違いなくこなすことができる。判断を伴う作業は行えないが、事前に手順を覚えさせておけば複雑な対応も可能である。覚えさせた業務を現場で変更することも可能なため、柔軟性をもって作業を任せることができる。

・労働力不足を補う

〈RPA〉は365日24時間働いてくれるため、その分の人件費削減が可能である。また、定型業務を担当していた人材を人にしかできない創造性の高い業務に配置すれば、生産性の向上にもつながるであろう。

ITツール導入例

勤務時間管理にIT導入、管理業務時間を削減

花の舞酒造株式会社(製造・小売)

  • 課題 営業が直行直帰しにくい 勤務状況を管理しにくい 労務管理に人をとられる
  • 目標 多様な勤務形態への対応 勤務状況を管理しやすい環境の設定 労務管理の簡易化
  • 導入ツール 勤怠管理ツール スマホによる打刻システム
  • 効果 営業が直行直帰しやすい環境 管理者が社員の勤怠状況をタイムリーに把握できる環境 労務管理担当者の他業務との兼任

 花の舞酒造株式会社にはさまざまな業務があり、とくに営業担当者は夜遅くまでの勤務となりがちであった。そのため直行直帰しやすい環境を整えたいと考えていた。また、労務管理は手計算で行っており、専属の担当者1人に任せず手助けをしようとしていた。

 すでに導入している給与計算ツールと連携できる〈勤怠管理ツール〉と、〈スマホによるタイムカード打刻システム〉の導入を行った。それにより営業はスマホから打刻可能となり、管理者はリアルタイムで社員の勤怠状況を把握できるようになった。タイムカードの集計作業が無くなったことで作業時間は8割減となり、労務管理担当者に新しい仕事を任せられるようになった。

定型業務を自動化し、残業時間を削減

協和テクノロジィズ株式会社(情報通信業)

協和テクノロジィズ株式会社(IT導入補助金2021)

出典:https://www.it-hojo.jp/h29/doc/pdf/h29_telecommunications_kyowaTechnologies.pdf

ITツール活用事例(IT導入補助金2021)

出典:https://www.it-hojo.jp/applicant/casestudies.html
  • 課題 事務処理業務の属人化
  • 目標 属人化防止 定型業務の自動化
  • 導入ツール RPAツール
  • 効果 業務プロセスの見える化 属人化防止 業務時間の短縮 ミスの軽減 他業務との兼任 残業時間の削減

 協和テクノロジィズ株式会社では複数のシステムを使っているため事務処理業務が複雑化し、属人化していた。そのため担当者が異動になると引継ぎに多くの時間が必要となり、異動後も業務のサポートに入るという非効率な状況が続いていた。

 業務の属人化防止と定型業務の自動化を目指して、プログラミング未経験でも定型業務を簡単に自動化できる〈RPAツール〉を導入した。すると、業務プロセスが見える化し、属人化を防止できるようになった。また、事務処理業務の時間の短縮だけでなく、ミスの軽減や確認時間も減少され、担当者は他の業務にあたれるようになった。前年度同月残業時間と比較して約25時間/月の残業時間が削減された。

 ITツールは、人がしてしまうような不注意や勘違いを犯すことはない。そのためミスは減り、業務スピードも桁違いに早くなる。頻繁に、もしくは定期的に行っている業務に対してITツールを導入すれば、業務は格段に効率化されるであろう。クラウドサービスのITツールの導入で可能になることは「業務の効率化」だけではない。次回は「経営の見える化」を補助するITツールを確認する。

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