求職者は企業の何を見て判断した?応募の背中を押したのは「従業員の声」

 採用は、企業が求職者を選ぶと同時に、求職者に選ばれる場でもある。求人票や面接をより魅力的にし、求職者に「ここで働きたい」と思ってもらうには、求職者目線で考えることが何より大切である。以前、「求職者が求めている情報は何か」という視点で考えたが、今回は、実際に中小企業に入社した人の事例から考えてみたい。

 実際に中小企業に転職した人は、どうやって求人票を見つけ、どのような判断からたった1社を選んだのであろうか。企業によって細かい採用方法が異なるように、求職者によっても考え方や視点は異なるであろう。しかし、それを粒さに見ることで新たな教訓が見つかるかもしれない。今回は、弊社へ転職した人物に、求人票や面接での行動や判断、決め手などを聞いてみた。

目次

研究の世界からのキャリアチェンジを目指す

転職前:大学院で文学研究をしながら派遣社員(事務職)
現在:株式会社デジタルボックスのテクニカルライター(オウンドメディア・SNS運用)

・性別:女性
・転職時の年齢:35歳
・最終学歴:青山学院大学大学院 文学研究科 博士課程中退
・パーソナリティ:資料調査のために、よく身一つで日本中のあちこちに行っていました。「せっかく各地に行くのだから、
その場所にしかないものを蒐集してみよう」と思い立って以来、ご当地の本屋さんのブックカバーを集めています。ITサービスを扱う弊社の”紙もの”好き社員です。

――今日はどうぞよろしくお願いします。早速ですが、転職の経緯を教えてください。

 大学で研究活動をしながらアルバイトなどで生計を立てていました。とてもやりがいのある活動だったのですが、一点を深掘りするという特性から、特に人間関係が閉鎖的になりがちでした。日に日に「いろんな人と携わりながら、何かを作り上げることをしたい」「何かを良くする仕事をしたい」という思いが強くなって、キャリアチェンジを決意しました。私の場合は、まずは派遣社員として事務職に就いて基本的なことを学び、それから正社員を目指して転職活動をしました。

検索でヒットした求人は、全部目を通した

――まずは、どのように転職活動を始めたのでしょうか?

 進学時に「働き口があったとしても教職」と言われていた通り、先輩のほぼ全員が教職に就いていました。転職した友人もいましたが、研究の世界にいた私とは状況が違う気がしました。なので誰かに相談するよりも、自分で調べていくしかないなと思ってインターネットで調べながら転職活動をスタートさせました。ただ、理系院生と違って文系院生の就活情報は調べてもなかなか出てこない。なのでキャリアチェンジも手探りでした。

――そんな中で、どのように求人を探したのでしょうか?

 日中は忙しくしていたので、帰りの電車内や寝る前の時間などを転職活動に充てました。当時は、仕事の探し方にもいろんな方法があると分かっておらず、とりあえず転職サイトで。確か4社のサイトで、毎日「職種」「勤務地」「キーワード」などで検索していました。

――どのような「キーワード」で検索したのでしょうか?

 まずは自分の気になる仕事の名前で検索しました。私の場合は「ライター」「編集」などで検索しました。いろんな求人票がヒットするのですが、思ってもみなかった求人票もヒットするんです。例えば、歓迎条件に「ライター経験がある人」と書いてある求人票とか。ちなみに弊社の求人情報は、まさにそれで出会いました。

――そこで今働いてるってすごいですね。

 全くかけ離れた仕事というわけではなかったですし、なにより求人票や面接で興味を持ちました。検索でヒットした求人票はとりあえず全部眺めていたんですよ。そして気になった求人票があればストックして、優先順位をつけながら応募しました。それと同時に自己分析などを行いつつ、方向を絞って……弊社のキャリアコーディネーターが聞いたら、真っ青になるかもしれない。

――ちなみに、他にも入力した「キーワード」はありますか?「未経験」とか。

 他には「資格や経験を活かして働くとしたら、どういった仕事があるのかな」と思って、資格名などでも検索しました。資格やスキルを活かしたい人は、それを入力して探すのかもしれませんね。考えてみると、私の場合は「未経験」では検索しませんでした。サイト内に「未経験歓迎」のボタンがあって、それにチェックを入れておけばいいだろうと考えていました。もしかしたら、求人票の中に「未経験歓迎」と書いてあっても、サイト内のボタンに反映されてないものは見落としていたのかもしれない。

――検索でひっかからないものは、気づかないままですよね。

将来の自分の声が書いてあると思った

――ストックした求人票に優先順位を付けて応募したということですが、どうやって優先順位をつけたのですか?

 ストックした求人票は、読んで興味を持ったもので、かつ自分の中の条件に合ったものです。自分の中で決めていた条件から、少し外れているものは優先順位が低くなりました。例えば「通勤時間が希望より長い」とか。それでも、絶対譲れない条件が合っていれば、ストックして応募していました。

――逆に優先順位が高い求人票はどんなものだったのでしょうか。

 業務内容や企業情報を読んで、興味がわいたものです。どういうツールを使って仕事をします、一日の業務の流れはこれです、といった情報だけだとピンと来ないけど、その仕事が全体にどんな風に繋がっているのか、何を良くしていくのか、ということが書いてあると想像しやすくて興味がわきました。「やりがいがありそうだな」と思えたんです。

――そういった求人票に共通することはありましたか?

 共通することは思い浮かばないけれど、さまざまな工夫がされていて見ていて面白かったです。例えば、働いている様子を写真で紹介しているところや、社内制度の利用例が書かれているところなどは「自分が働いたときにどうか」が想像できました。例えば「半年に1回、フランクな意見交換を行っている」という言葉と共に、ビールを飲みながら話し合う写真があれば、社内の雰囲気や文化も垣間見える。自分と合っているかどうかが判断できる材料が多い求人票は、読んでいてありがたかったです。

――ということは、弊社の求人票も「判断できる求人票」だった?

 そうですね。弊社の求人票には、社内の写真や制度の利用例はなかったけれど「私でもできるのかな」と思えたことが大きかった。そこが応募の決め手でした。私の場合は、ずっと大学内で過ごしてきたので、「やってやるぞ」という気持ちもありつつ、「果たしてうまくやっていけるのか?」という不安もありました。だから「私でもできるかもしれない」と思える求人票は大きかった。

――「私でもできるのかな」と思わせる求人票には、どんなことが書いてあったのでしょう?

 まず、業務の内容がかみ砕いて説明されていました。しかも企業ではなくて求職者目線で説明されていて、何をするのかが明確だったんです。それで、きっと「やりがいのある仕事」だろうと思えました。

「クライアント先の各部署や個人の現状の仕事を知るために、「どんな仕事を、どのくらいの時間で、どんなフローで進めているか」などをヒアリングし、ライター経験を活かしながら分かりやすくまとめてください。」

「あなたがまとめた情報を用いて、コンサルタントが(コンサルティングにより)クライアントの業務効率化を促すことができ、多くの人の働き方を変えることが可能です。」

当時の求人票に書かれた業務内容

――何をして、何が変わるのかが、明確だったわけですね。

 そうです。あと、印象的だったのが、従業員の声が書かれていたこと。これは厳密に言うと求人票の中ではなくて、求人票の下についていたリンク先にあったものですが。中途採用で入社して、働いている人の声がしっかりと書かれていて、これがとても参考になりました。

「職場の環境でいうとすぐに相談できる環境があるので、これから入ってくるメンバーもチャレンジがしやすい職場だと思います。的確なアドバイスがもらえるので迷うことも少なく、日々成長を実感できています。」

「会社独自の福利厚生など、これから増えていくメンバーがさらに働きやすいと思える環境を作っていくことが会社全体の課題だと考えています」

当時の「従業員の声」に書かれていた内容

 中途採用で入社した人の声は、将来の自分の声と近いと思うので、背中を押された気さえしました。弊社の従業員は、いいところだけじゃなくて、会社の課題を書いていて「意見がはっきりと出せる、風通しがいい企業なんだろうな」と思いました。

――それはコーポレーションサイトに掲載されていたんですか?

 転職サイト内の別ページでした。大手企業だと、これから入社する人向けのページを大々的に用意していることが多いという印象ですが、中小企業の場合は決して多くはない気がします。ただ、とても参考になるので、従業員の声のページだけでも用意してあると嬉しい

――逆に、応募しなかった求人票の共通点はありましたか?

 仕事や業務に関する情報や、求める人物像が見えにくいものは、応募しませんでした。例えば、仕事内容が1行2行しかないとても簡潔なものは、企業や業務内容を想像できなかった。「条件には合っているし、決して悪くなさそうな企業だけれども」と思っていても、ピンと来なくて応募を見送りました。「求める人物像」に「気を使える人」とあるような求人票もありました。求める人物像に自分が該当しているのかあまりに判断できないものも、応募していいものか迷いますね。自分と企業がマッチしているのか判断できる情報が欲しいなと思った覚えがあります。業務や職場を想像できる求人がたくさんあるので、そちらの方がどうしても魅力的に見えました。

企業に会って実情を確かめる

どういった企業なのかを知りたくてコーポレーションサイトへ

――企業のホームページは見ましたか?

 もちろん見に行きました。パソコンや携帯電話を使って仕事を探していたので、自然な流れで確認しました。どういったことを行う企業なのか、どういったサービスを取り扱っているのか、経営理念はどういったものか、どんな活動を行っているのか、そういったどんな企業なのかを知りたいと思って見ました。求人内容をより詳しく知ることができた企業も多かったです。

――企業のホームページを見に行って、「やっぱりやめた」ということはありましたか?

 私の場合はありませんでした。求人票に書いてある内容とかけ離れていたり、信用できない企業だなと思う要素があれば、応募をやめることもあったかもしれませんね。

――他に見た情報はありますか?

 企業が運営するSNSを見てみました。業務や人となりがより深く見えるのではないかと思ったからです。でも、SNSを運営しているところ自体少なかったかな。なので、私の場合はそこで得られた情報が特にありませんでした。今、弊社のSNS担当として、いろんな企業の方をフォローしているんですけど、各社のさまざまな文化が垣間見られて面白いですね。企業のSNSだけでなく、採用のアカウントや人事のアカウントなど、もっと調べてみてもよかったなと思いました。

少しでも職場のことを知りたい

――面接に臨むわけですが、面接にあたって聞きたいと思っていたことはありますか?

 企業についてはインターネットで調べられるだけ調べてみたので、その上で分からないことを聞きたいと思っていました。また、認識と違うところがあるのなら教えてもらおうと思っていました。なので、基本的な情報の確認はもちろんですが、どんな風に働いているのか、未経験から働くとしたらどういったことを行えばいいのか、ここで長く働き続けられそうか、などを確認したいと思っていました。

――弊社の面接に限らず、これは嬉しかったということはありますか?

 自分の上司となる人と話ができたことでしょうか。採用は担当の人が面接対応して、場合によっては採用担当と経営者とは話をしたけれど、実際に一緒に働く人とは顔も合わせたことがない、ということも起こりますよね。でも、入社した後でしっかりと関わることになる人と直接会ってお話できたことはありがたかった。業務内容や働く環境、チームの雰囲気などについて詳しい話が聞けるという点が大きいです。

 求人票の時と同じなのですが、課題点も正直に言ってくれる企業はありがたかった。隠さずに伝えてくれている気がしたのと、マイナス部分も「△△は課題だと思っていて、〇〇によって改善に取り組んでいる」と言われたら、改善しようと動く企業なんだとプラスに見えました。また、こちらからは聞きづらい、給与や福利厚生などの話を進んでしてくれるところはありがたかったです。

 他にも、社内見学を合わせてやってもらったことは嬉しかったです。労働環境や雰囲気を実際に知ることができる貴重な機会なので。中には、従業員のお昼の過ごし方まで教えてくれた企業もありました。そういった情報も、どんな風に一日を過ごすのかが想像できてありがたかったです。最近は、感染症が流行しているので難しいかもしれませんが。

――今だからこその社内見学のポイントがありそうですね。

 私は対面での面接でしたが、その中でも一時的にリモートワークを敷いている企業はいくつかありました。そういった企業は社内見学させていただくと、社内設備は分かるけれども働いている雰囲気は想像するしかない。そういう時に、従業員人数やオフィスでの過ごし方などを詳しく説明してもらえると嬉しかったです。「広々と働けるんだな」「活発でにぎやかなオフィスなんだろうな」と想像できましたから。

 なかなか難しいかもしれないけれど、今はどんな風に仕事を進めているのか、感染症が明けたらどんな風に働く予定なのかも聞けたら嬉しいですね。逆にオンライン面接だったら、できることの幅が広がりそうですね。例えば、配属先の人たち複数人と通信を繋いで、雰囲気を知ってもらうとか。これも難しいかもしれませんが。

――逆に面接で困ったことはありましたか?

 全然関係ない話をされ続けた時が1度ありました。私の人となりを見るためだったのかもしれませんが、真意がいまだに分からない。ある意味インパクトはありましたが、企業としての印象が全然残っていません。そういう面接をする企業はめったにないと思いますが、求人票や企業HPで見たような企業アピールが続く企業など、一方的だと感じる面接は他にもありました。

 あとは、業務について質問したら、おそらく、が多くて少し不安になった面接もありました。こうやって考えてみると、どれも担当者と合わなかったという感じかもしれません。担当者との不一致だけで企業を判断してはいけないとは思いつつも、懸念点があると不安にはなります。

――面接で1社を選んだ決め手は?

 自分の中の希望、私の場合だと「何かを良くする仕事をしたい」ですが、それを一番「やりがいを持ってできそう」な気がしたのが決め手です。

 面接でいいなと思った企業はいずれも、求職者を吟味しているというよりも対話をしてくれた気がしました。特に弊社の場合は、どういったキャリアパスがあるのかを簡単に説明した上で、現段階ではどういうことに興味があるのかを聞いてくれました。また、未経験から始めている人が、どのように働いているのかという例を出して、私の希望を確認してもらえました。そんな風に入社後に私自身がどうなれるのかという話をしっかりとしてもらったことで、ここならばしっかりと働けて成長していけそうだと感じました。

――入社までの期間で不安になったりしませんでしたか?

 入社に関する説明として一度だけ出社した時に、働いている方の紹介してもらいました。入社前にどういった人と一緒に働けるのかを知れるのは嬉しかったですし、その時点で人間関係に悩まなくてよさそうだぞと思えて不安は消えました。また、その時に改めてキャリアパスについて話をしてもらえて、入社したらどういう方向で進めるかを確認できたことも嬉しかったです。さらに、質問があればいつでもどうぞと言ってもらえたのも安心でした。それで実際に働き始めて、今に至るという感じです。

――では最後に。もしあなたが採用担当になったとして、何をして求職者に「応募してみよう」「働きたい」と思わせますか?

 どういう場所で働くのか、どんな人と働けるのか、どんな文化で働くのか、そして自分自身がどうなっていけるのか、という情報がほしかったので、そういう情報をしっかり発信したいなと思います。私の場合は、先輩の中途採用者の言葉に背中を押されたので、それは絶対設置したいですね。採用担当の人は日々そのための挑戦していらっしゃるんだと思うと頭が下がります。

連載「求職者目線で考える採用」

 1.求職者が求める情報とは?求人票・面接を魅力的にするアイデア
 2.求職者は企業の何を見て判断した?応募の背中を押したのは「従業員の声」
 3.転職がオンラインで完結する時代!求職者が欲しいのは「入社後のイメージ」

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