データから見えた中国企業の現状~7つのポイントと中小微企業

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 前回の記事では中国企業のコロナ禍後の状況をデータで分析した。企業の状況は規模や業界、デジタル化レベルなどさまざまな要素で影響されていることがわかった。本記事では、そのデータに潜んでいる普遍的な状況をまとめる。また、中小微企業のみのデータから中小微企業特有の現状を発見することに注力する。

連載「中国のデジタル化」

 1. 中国のデジタル化政策「上雲用数賦智」が目指す方向性と取り組み
 2. 中国が目指す中小微企業のデジタル化~課題と取り組み
 3. データから見る中国の中小微企業の実態~デジタル化政策とコロナ禍を経て
 4. データから見えた中国企業の現状~7つのポイントと中小微企業
 5. 日本のデジタル化は、中国と何が違うのか?それぞれの特徴と課題

目次

データから見えた7つの現状

大部分は復工したが、未来予測は普遍的にネガティブ

 復工とは、復工復産の略である。復工復産とは、職場復帰・生産再開を意味する中国政府のスローガンである。

 大部分の企業が復工したが、2割の企業の復工状況が好ましくない。全体的に未来予測がネガティブである。7割の企業は年間業績が下がると予測している。6割の企業はこの打撃が半年以上続くと考えている。特に旅行業、宿泊業と飲食業である。

企業経営に3つの問題点がある

 コロナ禍後、企業経営は資金、需要と経営場所の停工(停工とは、休業や工場閉鎖など、業務が停止することである)という3つの問題点に直面している。これは、オフラインで経営している企業が多くて、コロナ禍による物理的市場の縮小と一時的中断が経営難を起こしたと考えられる。「このままだと従来の市場が狭くなりつつ、やがて完全に消滅する」という恐れが3つの問題点に潜んでいるのではないか。

デジタル化に3つの問題点がある

 資金、人材、ビジネスモデルがデジタル化の三大問題点である。中小企業の資金調達問題が目立ち、大企業の戦略と上流設計のビジネスモデル不足問題が目立つ。デジタル化の発展により、企業の資金不足がある程度緩和できることが分かる。

企業の規模、デジタル化レベル、経営モデルにより回復状況が変わる

 大企業、デジタル化が進んでいる企業、オンライン経営にシフトしやすい企業及びBtoB企業の回復状況が比較的好ましい。これらの企業は柔軟にトラブルに対応でき、物理的衝撃への耐性が比較的強い。したがって、デジタル化レベルが低いBtoC中小企業を重点的に支援すべきである。

2種類のサービス製品、3つの経営活動、4つのIT技術が注目されている

 2種類のサービス製品:営業販売系と業務オンライン化ソリューション系がもっとも人気である。営業販売系は、オウンドメディア、オンライン支払やライブコマースなどがあり、特にBtoC企業にはライブコマースの人気が一番高い。業務オンライン化ソリューション系は、企業Wechat、ビデオ会議アプリなどがある。BtoB・BtoG企業は業務オンライン化ソリューション系の製品を特に重視し、データセキュリティへの意識が高い。

 3つの経営活動:営業販売、サービス提供、コミュニケーション・会議の3つの活動におけるデジタル化が企業の主な関心である。それぞれ58.2%、54%、39.4%の割合を占めている。これは需給連携の回復が企業の当面の急務だと示している。特に景気不況、需要縮小の状況で、デジタル化で「売れる」を促すことが、多くの企業にとって非常に大事である。ただし、「売る」ことの反面である内部生産関連の経営活動のデジタル化への関心が全体的に低いということがわかるであろう。

 4つのIT技術:ビッグデータ、IoTクラウドコンピューティング及び5Gがもっとも人気なIT技術である。そのうち、54.8%の企業はビッグデータをもっと有効に利用すると述べた。4割以上の企業はデータに関連するプラットフォーム構築に注力すると述べた。また、ビッグデータAI分析技術の注目度も上がっている。「上雲用数賦智」の発展にクラウドデータの有効利用が企業のコンセンサスになっている。

 「上雲用数賦智」とは、2020年4月中国政府がデジタル化を推進するために発表した政策である。詳しくは下記関連記事を参照してほしい。

IT製品導入に5つの考慮するポイントがある

 企業はIT製品を導入する際、考慮するポイントが5つある。それぞれ製品体験、技術性能、協力モデル、アフターサービス及び顧客接点である。企業の発展段階により、それぞれのフォーカスポイントが異なってくる。全体からみると、デジタル化レベルが高い企業は、技術性能とそのセキュリティへの関心が高くなり、製品料金と顧客接点に対する関心が低い。また、大企業はエコシステム構築に関連する点に注意を払っている。中企業(100~200人)はサービスに、小企業は協力モデルに一番関心を持っている。

支援政策が中小微企業に浸透できていない

 8割の企業は補助金などの支援政策が分からない。特に中小微企業である。せっかくの支援政策が活用できていない。政府はデジタル化の支援とともに、中小微企業向けに重点的に政策を打ち出し、確実に実行させる必要がある。

中小企業デジタル化のまとめ

全体的に手探り状態にある

 中国電子技術標準化研究院の研究データ(以下、研究データ)はデジタル化を「探索の段階、実行の段階、進化の段階」に分けた。今の中国の中小企業のデジタル化が全体的に探索の段階に位置することが判明された。研究データによると、89%の中小企業が探索の段階で、8%の中小企業が実行の段階に入り、わずか3%の中小企業が進化の段階にたどり着いた。

 探索の段階では、企業はデジタル化に対する初期的な認識を持ち、ぼんやりした計画を立てて、設計、生産、物流、販売及びアフターサービスなどのコア業務のデジタル化ビジネス設計を取り組み始める。

 企業はコア設備や業務活動のデジタル化を実行し、生産製造全業務のデータの収集、分析と可視化を実現することで、実行の段階に入ったことになる。企業はインターネットやビッグデータ、AIなど新世代のIT技術と生産経営マネジメント活動と融合し、デジタルデータ分析とモデル駆動により、効率的かつ科学的に経営計画や経営戦略を策定することで、進化の段階に入ったことになる。

業界間デジタル化レベルの相違

 研究データによると、自動車や電子製造業、運輸設備、医薬関連などの業界のデジタル化が上位にある。これらの業界は、エンドユーザと直接連携し、カスタマイズ需要が活発的で、モデルチェンジの周期が短いとの特徴がある。ゆえに、これらの業界は設備、技術とシステムのデジタル化への意欲が強く、デジタルラインとデジタルファクトリーの整備が進んで、全体的にデジタル化レベルが高い。金属加工業、繊維工業、服装業などのデジタル化レベルが下位にある。

生産製造モデルチェンジが重要

 研究データによると、中小企業の生産製造のデジタル化が企業全体のデジタル化に直接大きく影響している。中小企業は現在、生産製造モデルチェンジにもっとも注力している。モデルチェンジにより、業務効率化工場と製品の品質向上の効果が期待される。

 中国の企業は復工がある程度できているが、未来予測が全体的にネガティブである。企業経営とデジタル化に問題点があり、政府がそれ相応の政策を打ち出しているが、必要としている中小微企業にまだまだ浸透できていないのが現状である。中小微企業のデジタル化が全体的に初期段階である。政府は、デジタル化を推進する政策を打ち出すだけではなく、中小微企業の現状をよく考慮し、政策内容と実行手法を決めなければならない。必要なものを作り、それを必要なところに届けないともったいない。

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