属人化を改善!「コンタクトセンター」業務マニュアルの改善指針

【コンタクトセンター】マニュアルと属人化改善(業務マニュアル改善ヒントPart4)

 コンタクトセンターでは、新人スタッフがストレスを抱えやすい現場が多くあります。それにより、離職率が高く、業務も属人化しやすいのが現状です。そのような状況を、業務マニュアルから解消するには、どのように作成・改善すれば良いのでしょうか。この記事では、現場で求められる情報や工夫、書き方を紹介します。

【コンタクトセンターのマニュアルを整えるとできること】
 〇 業務の属人化を防止・解消できる
 〇 人材の流出を防ぎ、離職率を下げる
 〇 新人スタッフが安心して働ける環境を整える

連載「職種別で解説!業務マニュアルの改善ヒント」

 1. スムーズな引継ぎでミス予防!「事務職」業務マニュアルの改善指針
 2. 早期離職を予防!「コールセンター」業務マニュアルの改善指針
 3. 業務の品質を統一!「製造業」業務マニュアルの改善指針
 4. 属人化を改善!「コンタクトセンター」業務マニュアルの改善指針
 5. 全体感を把握して一丸で働く!「EC業界」業務マニュアルの改善指針
 6. 現場教育を効率化!「飲食業」業務マニュアルの改善指針
 7. 業務の効率化を進める!「経理部」業務マニュアルの改善指針

目次

コンタクトセンターの実態

 業務マニュアルを用意するのなら、コンタクトセンターにある問題を解決できるものでなくてはなりません。では、コンタクトセンターはどのような問題を抱えているのでしょうか。

コンタクトセンターの特徴と課題

慢性的な人材不足

 インバウンドのクレーム処理やアウトバウンドの新規顧客開拓はとてもストレスの大きな業務で、離職率も高い。新規採用を行っても数か月で退職してしまえば、採用にかけたコストがムダになるでしょう。ノウハウを引き継いで共有できる環境がなければ、カスタマーサポートの品質は低下しかねません。

属人化しやすい

 人手不足の現場では、業務が任せきりになりやすい。その結果、業務が属人化してしまうのです。非常に複雑な業務であっても、担当者は最適な処理方法を構築して、業務を行っていかなくてはなりません。それができる人が担当になると、その業務は担当者に任せきりの状態になりやすいものです。

 コンタクトセンターは、繁忙期・閑散期の業務量に違いが出やすく、タイミングによってはうまく引継ぎが行えないこともある。そうなれば、ノウハウが引き継がれず、コンタクトセンター全体のサービス品質を維持することは難しいという事態にもなりかねません。さらに属人化が進行すれば円滑なコミュニケーションが損なわれ、社内の風通しが悪くなります。

人口知能に頼り切れない

 最近のWebサイトでは人工知能(AI)搭載のチャットボットを導入するようになりました。問い合わせが頻繁な処理は人工知能が対応し、人間の対応が必要なときだけ専任のオペレーターに切り替わるシステムです。一見、人手不足の解消に繋がりそうですが、そう簡単には行きません。

 現在の特化型人工知能(Narrow AI)は与えられた任務を機械的に処理するだけのプログラムです。膨大なデータから分析して最適な回答を行う場合に人工知能は有能ですが、全体を人工知能に頼ることはできず、人間の知恵が必要です。それには、やはり積み重ねられたノウハウが必須なのです。

コンタクトセンターのマニュアルの失敗

 上記のような現場の状況を踏まえ、マニュアルを用意しているというコンタクトセンターも多くあります。しかし、それでも状況が改善できていない現場もあります。ここでは、コンタクトセンターで起こりがちなマニュアルの失敗例を紹介します。

情報が分散してしまう

 コンタクトセンターのマニュアルで使われるマニュアルにはさまざまなものがありますが、一般的にはチャットツールを利用してノウハウを蓄積しています。ノウハウが増えること自体は望ましいのですが、会話式の書き込み情報が散在するようになるため、情報が分散してしまうのです。

 それを防ぐには、管理者が定期的にまとめて投稿を整理し、集約する手間が発生してしまいます。また、情報が特定の場所に集約されていないので、追記や修正が行いにくいものとなっています。

ナレッジを引き出し切れていない

 業務が属人化してしまったコンタクトセンターでは、ナレッジを持った社員が退職・異動する時に、引継ぎ資料としてマニュアルを作成することがあります。

 このとき、社員が協力的ではない場合があります。不当な評価に対する不満や、誰にも自分の仕事は代替できないという考えによって協力を拒むのです。そういった場合、社員からナレッジを引き出すことは難しいものです。後任者は手順しかわからないマニュアルで作業することになり、業務の質が低下してしまうのです。

コンタクトセンターの現場が欲しい情報と工夫

 こうした課題を解決するためには、日頃から社内のナレッジを共有し、徹底した業務マニュアルを整備することが必要である。

 「コンタクトセンター」の独自の問題を解決するために、使われる業務マニュアルにするにはどうすればいいのでしょうか。「コンタクトセンター」の業務マニュアルには、次の項目が必要です。

属人化を予防したい
日々の課題を反映したノウハウ
新人のストレスを減らしたい
実務をこなしながら使える辞書

 ここでは、この2点を達成するためにマニュアルに組み込むべき項目や工夫を紹介します。なお、マニュアルの作成全般について知りたい場合は、次の記事を読んでみてください。

日々の課題を反映したノウハウ

 マニュアルはそれを読めば業務が行えるようになるものです。そのため、手順や社内規約、勤務やコンプライアンスなどのルール、商材や会社に関する情報が掲載されています。もちろん、誰もが必ず確認する必要のあるこれらの情報は必要です。ただ、必要な情報はそのような基本情報だけではありません。

 業務の属人化は長い年月のなかで形成されていきます。それが硬直してしまえば、ノウハウの抽出や引継ぎは困難になります。まず必要なのはそのような個人が持つノウハウを使える形で抽出したものです。トークスクリプト、対応マニュアルなど、手本を載せることは必須ですが、その上で、日々の課題を反映することが大切です。

 ノウハウは日々の業務の中で作り上げられていくものです。そのような日々の課題をノウハウとしてマニュアルに反映できるようにするのです。そのためには、日常的に問題点やアイデアを情報共有できるオープンな風土づくりを行いましょう。

 マニュアルでできる工夫は、ナレッジを個人の財産とせずに、それぞれがマニュアルに書き込むことができる「メモ欄」を作ることです。そしてそれを定期的に共有し、マニュアルに反映していくのです。

項目
・メモ欄
・項目ごとの更新日時
・対応事例
工夫
・定期的に情報共有とマニュアルへの反映を行い、マニュアルを改善するのは私たちだと思ってもらう
・アイデアは個人のものでなく共有するものだという風土を作る
・対応時にどういう点を注意したのかも含めて共有する

 〈マニュアル作成ツール〉であれば、そのような日常的な情報共有・マニュアル更新もスムーズに行えます。

実務をこなしながら使える辞書

 入社から半年ほど経った頃、新人オペレーターが「ずっと分からなかったのですが。CSって何ですか?」と質問しました。カスタマーサポート部門で使用するCSは2つの意味があります。ひとつは業務部門の名称でもある「カスタマーサポート(Customer Support)」、もうひとつは経営用語の「カスタマーサティスファクション(Customer Satisfaction)」です。

 コンタクトセンターで業務に使う用語は多岐に渡ります。問い合わせ処理で取り扱っている商品やサービスの固有名詞、「CB(コールバック)」といったビジネス用語も使われます。また、社内だけで通用する独自の用語も存在します。これらの言葉は、現場で意外と混同しやすいものです。

 さらに技術用語に関していえば、バックエンドの運用管理システムで処理するときに「基本画面」と「初期画面」のような用語が混在していると、まったく違う画面を開いて操作するリスクが高まります。トップの画面ではなく自分の担当処理の頻度が高い画面を「基本画面」と思い込んでいるスタッフがいるため、注意しなければなりません。

 現場で使われている用語を再定義および統一することが、コミュニケーションロスを防ぐためには有効です。そして、新人教育をストレス少なくスムーズに行えるようにもなります。このように勘違いによるミスを防ぐためにも、実務をこなしながら使える辞書的な項目は必要です。

項目
・用語集
・対応事例
・コンプライアンス集
工夫
・操作に関することは、図や画面写真を多く用意して分かりやすくする
・用語集は50音順だけでなく使用場面ごとに探せるようにする

コンタクトセンターのマニュアルの書き方

 「コンタクトセンター」の場合、誰が使っても情報が得やすいマニュアルにすることが大切です。では、そのためにはどのようにマニュアルを書いて行けばよいのでしょうか。

・用語を統一する

✕「スタート画面を開き、ログインを行ってください。ログインに失敗すると、初期画面右下にポップアップが表示されます。」

〇「スタート画面を開き、ログインを行ってください。ログインに失敗すると、スタート画面右下にポップアップが表示されます。」

・同じ種類の文字が続くときは句読点を書く

✕「さようでございますか。それではまたあらためさせていただきます。」

〇「さようでございますか。それではまた、あらためさせていただきます。」

・場合分けを書く

✕「恐れ入ります。
  お世話になっております、株式会社〇△□の〇〇(氏名)です。」

〇「恐れ入ります。(朝10時以前→おはようございます)(20時以降→夜分遅くに恐れ入ります) 
  お世話になっております、株式会社〇△□の〇〇(氏名)です。」

・1文は60字以内

✕「お客様とのやりとりは、お客様の疑問や不満を解消して、商品やサービスに特徴を持ってもらうものでなくてはなりませんが、特にオープニングの部分は対応の成否を分ける重要なポイントだとされていて、お客様に好印象を持ってもらえるように心がけながら対応しましょう。」(125文字)

〇「お客様とのやりとりは、お客様の疑問や不満を解消して、商品やサービスに特徴を持ってもらうものでなくてはなりません。特にオープニングの部分は対応の成否を分ける重要なポイントだとされています。お客様に好印象を持ってもらえるように心がけながら対応しましょう。」(56文字+37文字+32文字)


【コンタクトセンターのマニュアルを整えるポイント】
  日々の課題をマニュアルに反映して、アップデートしていく
  コツやノウハウといった情報をマニュアルに集約するイメージで作る
  現場で使う用語を再定義して、行き違いを無くせるものにする

【コンタクトセンター】マニュアルと属人化改善(業務マニュアル改善ヒントPart4)

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