コールセンターのほとんどで、マニュアルが活用されているでしょう。しかし、そのマニュアルは本当に現場にとって最適な形をしているでしょうか。コールセンターで活用されるマニュアルは、「すぐに欲しい情報にたどりつけるマニュアル」です。この記事では、現場で求められる情報や工夫、書き方を紹介します。
【コールセンターのマニュアルを整えるとできること】
〇 対応の質の向上
〇 スムーズな新人教育
〇 離職率の低下
連載「職種別で解説!業務マニュアルの改善ヒント」
1. スムーズな引継ぎでミス予防!「事務職」業務マニュアルの改善指針
2. 早期離職を予防!「コールセンター」業務マニュアルの改善指針
3. 業務の品質を統一!「製造業」業務マニュアルの改善指針
4. 属人化を改善!「コンタクトセンター」業務マニュアルの改善指針
5. 全体感を把握して一丸で働く!「EC業界」業務マニュアルの改善指針
6. 現場教育を効率化!「飲食業」業務マニュアルの改善指針
7. 業務の効率化を進める!「経理部」業務マニュアルの改善指針
コールセンターの実態
業務マニュアルは、現場にある課題を解決できるものでなくてはなりません。「コールセンター」にはどのような特徴があり、どのような課題を抱えているのでしょうか。
コールセンターの特徴と課題
扱うデータが膨大
コールセンターで扱うデータは膨大です。提供サービスごとのサービス詳細や対応方法といった、基本的な情報だけではありません。その時だけの最新キャンペーンもすぐに案内できなくてはなりません。しかし、そのすべて把握できるオペレーターはめったにいないのが現状です。
すぐに対応しなくてはならない
コールセンターでは、お客様をお待たせするわけにはいきません。電話口でお客様を待たせるのは長くても30秒以内とするコールセンターもあります。折り返しの連絡にしたとしても、その時間は後処理時間としてカウントされ、給与に直結し成績にも影響します。そのため、オペレーターはすぐに正確な案内をしなくてはなりません。
しかし業務の全てを把握しているオペレーターがめったにいない現場では、管理者を呼んで「複数人が何度も同じ質問をする」という事態が起きています。
新人教育が難しい
扱うデータが多いせいで、業務全体を把握することすら難しいコールセンターでは、仕事を覚えること自体が難関です。特にインバウンド業務において、IVRで簡単な案件のみを新人オペレーターへ割り振るのは困難です。新人でありながらクレーム対応をしなければならない状況が生じます。
そういった現場で新人教育をどのようにわかりやすく行うのかは大きな課題です。ときには、指導するベテランによって教育内容がばらつきが発生することもあります。
離職率が高い
労働人口が減少している中、高い応答率を維持するために求められる人数を確保するだけでも困難になってきています。さらに業務を覚えることが困難なコールセンターでは離職率が高くなります。
労力と資金をつぎ込んだ新人がすぐに辞めてしまっては、大きな損失となってしまいます。さらに新人教育に時間を取られるでしょう。離職をいかに防止するかが、「センター運営の命運を分ける」といっても過言ではありません。
コールセンターのマニュアルの失敗
コールセンターには、日々の業務を行う上で必要なマニュアルが必ずあります。しかし、導入していても解決できない課題もあります。ここでは、実際にコールセンターの現場で起こりがちなマニュアルの失敗例を紹介します。
業務全体の把握が難しい
扱うデータが多いせいで、業務全体の把握が難しいコールセンターでは、業務全体を把握するのは難しいことです。入電内容にバラつきがあるため、業務マニュアルを使った新人研修を経て、独り立ちをしても、未だに対応したことのない案件が存在することすらあります。
管理者に聞いた方がはやい
コールセンターでは、オペレーターがマニュアルで問題を解決できない場合、手を上げるなどして管理者を呼んで質問します。実際にはマニュアルに書いてあるのに、オペレーターが必要な情報を探しきれないために、管理者を呼ぶことも多くあります。これでは、管理者の通常業務にも支障が出てしまいます。
コールセンターの現場が欲しい情報と工夫
「コールセンター」独自の課題を解決し、使われる業務マニュアルにするためにはどうすればよいのでしょうか。「コールセンター」の業務マニュアルには次の項目が必要です。
新入社員が仕事を把握できるようにして、早期離職を予防したい |
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系統的にまとめられた情報 |
いち早く顧客対応できるようにしたい |
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精度の高い検索機能 |
業務の品質を統一したい |
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現場の声が反映された最新情報 |
なお、業務マニュアルの構成については、下記の記事で詳しく紹介しています。あわせて読んでみてください。
系統的にまとめられた業務情報
コールセンターの課題を解決するには、必要な情報を簡潔にまとめたり、分かりやすいマニュアルを作成したりするのはもちろんです。それが系統的にまとめられていれば、業務全体を把握しやすくなり、より使いやすくなるでしょう。
コールセンターには膨大な量の情報があるため、カテゴリー別の階層分けは必須です。そうでなければ、マニュアルは作成順か名前順でずらりと並んでいて、迷路のように見えるでしょう。
新人が膨大なマニュアルに圧倒され、離職に繋がる場合がある。研修の初期段階でこの問題を解決しておくことは重要である。情報が系統的にまとめられていれば、仕事内容を早い段階で把握でき、仕事に早く慣れる事が期待できます。新人の負担を軽くし「ついていけないのではないか」という不安を解消すれば、離職防止も期待できます。
項目 |
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・目次 ・カテゴリーごとのグループ分け ・よくある質問 |
工夫 |
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・カテゴリーごとに階層を分ける ・作成順や名前順で並べない |
精度の高い検索機能
系統的にまとめられた情報だけでなく、その情報にたどりつくための道が必要です。検索機能の精度が良ければ、目的地へスムーズに案内してくれるカーナビゲーションのように、必要な情報にいち早く導いてくれます。
話を聞きながら判断をできるような機能だけでなく、「よくある質問」の一覧を作成できる機能があると、検索速度が速くなるであろう。問い合わせ内容を分析して、特に問い合わせが多い項目や、探すのが難しいと思われる内容を、「よくある質問」の一覧にまとめておけば、まずマニュアルを確認してから手上げをしてくれるようになるはずです。
項目 |
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・YES NOチャート ・索引 ・よくある質問 |
工夫 |
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・まとめるべき情報をベテランに聞く ・クレームに繋がりやすい項目をまとめる |
現場の声が反映された最新情報
実際に新人オペレーターが独り立ちした後にも、徐々に明るみに出てくるのが講師陣の認識の相違です。「Aさんからはこう教わったけど、Bさんには別のことを教えられたのですが、どうすればいいですか?」と尋ねられる事がある。ベテランオペレーターであっても、古い情報に惑わされていて、新人の方が新しい情報に精通しているということさえあります。
きちんと教わった通りにやっているのに、講師の認識が違うと、「やり方が違う」と言われてしまうのは理不尽です。そのような認識の相違を生まないためにも、情報を随時更新していくことが大切です。
実際に現場でマニュアルを使用して業務にあたっていると、情報の更新の必要性や、誤解を生むような曖昧な表現に気付く事があります。季節ごとに変わるキャンペーン情報だけでなく、そういった現場の声をタイムリーにマニュアルへ反映させることは必須です。
項目 |
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・用語集 ・情報の更新日 ・更新履歴 |
工夫 |
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・更新情報を把握できるようにする ・似た用語と混同しないように注をつけたり色を変えたりする |
コールセンターのマニュアルの書き方
「コールセンター」の場合、マニュアルの閲覧者のほとんどはオペレーターで、限られた時間の中で急いで情報を確認している場合が多いでしょう。的確な情報にすぐたどり着くためには、構成や検索の工夫の他にも、ライティングの面からサポートすることができます。それでは、どのようにマニュアルを書いていけば良いのでしょうか。
・平易な言葉で書く
✕「ボタンを押下します」
〇「ボタンを押します」
・場合分けを書く
✕「恐れ入ります。
お世話になっております、株式会社〇△□の〇〇(氏名)です。」
〇「恐れ入ります。(朝10時以前→おはようございます)(20時以降→夜分遅くに恐れ入ります)
お世話になっております、株式会社〇△□の〇〇(氏名)です。」
・敬語にもNG例を書く
✕「ご覧になりましたか」
〇「ご覧になりましたか(NG例:拝見されましたか)」
・項目を太字やアンダーバーなどで目立たせる
✕「・WEBを希望
「当日はTeamsを利用しますがよろしいですか?」
・対面を希望
「お伺いする住所は、ご登録の〇〇〇でよろしいですか?」」
〇「・WEBを希望
「当日はTeamsを利用しますがよろしいですか?」
・対面を希望
「お伺いする住所は、ご登録の〇〇〇でよろしいですか?」
・肯定文で書く
✕「席を立つときは、電源を付けたままにしないでください。」
〇「席を立つときは、電源を落としてください。」
【コールセンターのマニュアルを整えるポイント】
〇 知識がある前提で書かず、誰が読んでも理解できるマニュアルにする
〇 膨大な情報量に圧倒されないように、マニュアル内で業務の全体感を整える
〇 ほしい情報にすぐたどり着けるか、テスト使用しながら確認する